******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第5話】

 

さてさて、「くじらの来る町」へ病気の治療法を探りに向かう「くまった」。

ひょんなことから「石油の出る町」で知り合いのクロクロに会いました。

 

クロクロ「で、くまったと一緒にくじらの来る町へ行く奴はだれだい?」

くまった「だれもいないよ」

クロクロ「だれもいない、って、ひとりで行くのかい?」

くまった「うん、そうだよ」

クロクロ「えっ!? こんな大事な旅なのに、くまったを一人で送り出すとは

     森の連中もひどいな」

ミミズク「森のみんなも、どうしたらイイのか、わからなかったんじゃないかな」

くまった「普段起こらないことは苦手なんだ」

クロクロ「うーん」

くまった「くまったも、どうしたらイイかよくわからないし」

ミミズク「どうだろう。くまったも一人じゃ心細いだろうし、クロクロが一緒に

     くじらの来る町までついていってあげるいうのは?」

クロクロ「うーん」

くまった「そうだよ。一緒に行ってくれると心強いよ。

     クロクロ、くじらの来る町へ行こうよ」

クロクロ「やなこった。

     だいたい、なんでクロクロが森のみんなのために苦労しなきゃいけなんだ」

くまった「だって、森の仲間じゃないか」

クロクロ「みんなはクロクロのことを良く思っていないさ。

     そんな連中のために何かをするというのはゴメンだね」

くまった「クロクロがいつも『森の生活はつまらない』とは『森のみんなはサエない奴

     ばっかり』とか言っていたからだよ。そんなことばっかり言っていたから、

     みんなから冷たくされちゃうんだよ。

     みんなが悪いわけじゃないよ」

クロクロ「冷たくする奴のことなんか知ーらない」

くまった「そうだよね。やっぱり、くまった一人で行くことにするよ」

クロクロ「ああ、そうしてくれ」

ミミズク「せっかくイイ案だと思ったのにな。まあクロクロの都合もあるからな」

クロクロ「そうそう」

ミミズク「じゃあ、くまった。船長のところに行こう」

くまった「はい。

     クロクロ。じゃあくまったは行くから。気が向いたら森を訪ねて見ておくれ」

クロクロ「ああ」

 

そんなわけで、ミミズクとくまったの2名は再び船長のところへと向かうのでした。

 

ミミズク「おい、くまった。後ろからクロクロがついてくるぞ」

くまった「偶然ですね。行く方向が同じだったんだ」

ミミズク「バカ! くまったのことが気になってついてきているんだ。

     クロクロだってほんとうは森のみんなのことが心配なのさ」

くまった「えっ? 全然気がつかなかった」

ミミズク「こりゃ、ますます『くまった』一人で行かせるわけにはいかないな」

くまった「おーい、クロクロ」

クロクロ「なんだい?」

くまった「やっぱり、一緒に来てくれるんだね」

クロクロ「ちがうよ。歩いていく方向が偶然同じだけさ」

くまった「やっぱりそうかい」

クロクロ「ああ」

くまった「ミミズクさん、やっぱり行く方向が同じなだけみたいですよ」

ミミズク「まったく素直じゃないな、クロクロは」

 

そうこうしているうちに船着き場に着いたミミズクとくまった。

 

ミミズク「おーい。船長!」

船長  「おっ、代わりの船員が来たな」

くまった「よろしく」

船長  「おいおい。さっきクビにしたくま公じゃないか」

ミミズク「さっきのくま公の双子の兄弟さ。こいつ方は船に乗ったことが

     あるんだ」

船長  「うそつくな。

     ちゃんとした船員を連れて来い!」

ミミズク「今は休みの季節。この時期にちゃんとした船員を集めることは

     不可能さ。どうだろうこの『くまった』で急場をしのげないだろうか?」

船長  「ダメダメ。素人はダメだ。

     だいたい、テレビが壊れたからといって、ラジオを10台買ってきたとしても、

     ラジオでテレビの絵を写すことはできないだろう。船員の補充には船員が

     必要だ」

ミミズク「うーん、確かにラジオでテレビの絵を写すことはできないだろう。

     でも、みんなは何のためにテレビを見るのかな?」

船長  「ニュースとかスポーツとか娯楽だな」

ミミズク「ニュースやスポーツか。

     それなら、こう考えたらどうだろう。

     テレビがなくてもラジオがあれば、明日の天気予報を知ることができるし、

     サッカーの試合の結果もわかる。どの芸能人が離婚したかもわかるぞ。

     つまり、ラジオでもニュースを聞き、スポーツや娯楽を楽しめるということさ。

     要はテレビもラジオも使う側の使い方しだいだと思うが、どうだろうか?」

船長  「わかった、わかった。ミミズクがそこまで言うんならイイだろう。

     おい、くまった。乗船を許可する」

くまった「えっ、ほうとうにいいんですか?」

船長  「つべこべ言うな。さっきクビにしたのは、

     おまえさんが本当に船に乗りたいのかどうか試しただけさ。

     悪く思うなよ」

くまった「わー、そうだったんですね」

ミミズク「まけおしみ、まけおしみ。本気にするな、くまった」

くまった「???」

ミミズク「さて、もう一仕事」

くまった「えっ?」

ミミズク「ほら、クロクロがあそこで見ているぞ。次の標的はあいつだ」

くまった「クロクロの行き先も船着き場だったんだ」

ミミズク「クロクロの行き先はおまえさんさ、くまった。

     おーい、クロクロ!」

クロクロ「ミミズクさん、くまった。ふたりでくじらの来る町へ行くのかい?」

ミミズク「あー、ふたりだ。でも顔ぶれがちょっとちがう」

クロクロ「だれとだれですか?」

ミミズク「さあー?

     ときにクロクロ、ボーナスと休暇をもらったんだよな」

クロクロ「はい」

ミミズク「どうだい、この船に乗ってくじらの来る町へ行き、休暇を

     過ごすというのは?」

クロクロ「なかなか面白そうですね」

ミミズク「じゃあ決まりだ。

     船長! 乗客ひとり追加だ。あそこの黒い奴」

船長  「この船は空(カラ)でくじらの来る町へ行くことになっている」

ミミズク「じゃあ、ラジオ2号として乗せろ」

船長  「もう好きなようにしろ」

ミミズク「クロクロ、早く船に乗れ!」

クロクロ「あいよ」

ミミズク「じゃあ、くまった、クロクロ。しっかりやれよ」

くまった「ミミズクさん、いろいろとありがとうございました」

ミミズク「帰りには寄れよ」

クロクロ「はい。では行ってきます」

 

つづく

 

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