******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第4話】

 

さてさて、消火隊の一員として活躍しボーナスをもらったクロクロ。

なにやら独り言をブツブツと言っているようです。

 

クロクロ「うーん。クロクロみたいな英雄はどこへ行っても英雄的な働きを

     してしまうなあ。

     こう、野次馬連中を見わたしてみると、英雄と野次馬の違いという

     ものがつくづくわかるというものさ。

     あー、あそこにも野次馬のミミズクさんがいる。ん? 隣りにいるのは

     森一番のさえないやつ、くまったじゃないか。

     こんなところで何をしているんだ?

     おーい、ミミズクさーん」

くまった「ミミズクさん、クロがこちらに気づいてやってきますよ」

ミミズク「ほんとだ。

     おーい、クロ!」

クロクロ「ミミズクさん、英雄クロクロの活躍を見てくれましたか?」

ミミズク「ああ。すごいじゃないか」

クロクロ「活躍したのはいいけど、黒さが2倍になってしまって、今日から

     名前がクロクロになりました」

ミミズク「そうかい」

クロクロ「ときに、こんなところで『くまった』に会うとは、まったくの驚きだ」

くまった「うん」

クロクロ「くまったも、とうとう森の決まりきった生活に飽きて町に出てきたのかい?

     わかるよ、その気持ち。森では毎日同じ事の繰り返し。

     何の楽しみもない。

     おまけに住んでいる奴等はみんな地味なさえないやつばっかりさ。

     それにしても、まさか、一番さえない『くまった』が一旗揚げようと町に

     出てくるとは思わなかったな」

くまった「別に一旗揚げようと思って町に出てきたわけじゃないよ」

クロクロ「そうかい。

     そうだよな。別にデカいヤマを当てる必要はないさ。何はともあれ

     町で、こう血が騒ぐような仕事に挑戦してみようという気もちが大切さ。

     クロクロもくまったも森では生きていけない者同士。

     町でわからないことがあれば相談にのるよ」

くまった「くまったは森でも十分に暮らして行けるさ。森の生活は最高さ」

クロクロ「ほう。

     あんな暮らしのどこがいいんだ?」

くまった「森の暮らしは確かに単調かもしれないさ。でも仲間もいるし、木の実

     のような食べ物もその辺にころがっている。

     今日何をすればイイか、明日何をすればいいかも、いつもちゃんとわかる。

     一方、森の外は危ないヤツはいっぱいいるし、食べ物もその辺に

     転がっているわけじゃない。

     食べ物のためにはクロクロのように危ないおもいをして働かなければ

     ならないじゃないか。それに、明日どうなってしまうかわからない

     暮らしじゃ、恐くてゆっくり寝ることもできないよ」

クロクロ「そんな事を言っているからいつまでたっても『さえない奴』って

     言われちゃうんだよ。

     つまらない暮らしをするくらいだったら死んだ方がましさ」

ミミズク「まあまあふたりともモメないで。

     クロクロ。実のところ、くまったは働くために町に出てきたんではないんだ。

     これから『くじらの来る町』へ行くところなのさ」

クロクロ「何しに行くんだい?」

くまった「薬を買いに行くんだ」

クロクロ「薬? 何の?」

くまった「実は、そのー、あのー、、、」

ミミズク「森では奇妙な病気が流行っているだよ」

くまった「実はそうなんだ」

クロクロ「ありゃま。

     どんな病気?」

くまった「動物ごとに違うんだけど、たとえば馬ならば『足音が消えてしまう』んだ」

クロクロ「パカパカという音がしなくなるのかい?」

くまった「うん」

クロクロ「そりゃまた、ずいぶんと変わった病気だね。

     そんな病気は聞いたことがないや」

くまった「うん。変わった病気なんで、森では治しかたがわからないんだ。

     でも、くじらの来る町にはいろいろな人がいるだろ。だから

     『くじらの来る町』へ行けば治す方法がわかるんじゃないかと思って」

クロクロ「そうだね。それでくまったが『みんなを助けよう』と立ち上がったわけだね」

くまった「いや。くじ引きで負けてくまったが行くことになったんだ」

クロクロ「くじ引き?」

くまった「旅は危険が付き物だし、みんなあんまり行きたくないんだ。

     だから、くじ引きでだれが町へでかけるを決めたんだ」

クロクロ「ひえー。

     よりによって、一番むいてなさそうな『くまった』にあたるとは。

     くじ引きの神様もいじわるだよな」

ミミズク「まあ、世の中そういうものかもしれないな」

くまった「あー」

 

つづく

 

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