******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第3話】

 

さてさて、船乗りをクビになってしまった「くまった」

仕事を紹介してくれたミミズクを頼って、またミミズク仕事紹介所へ

やって来ました。

 

コン、コン

 

くまった「ミミズクさん、ミミズクさん、いませんか?」

ミミズク「なんだ。くまったじゃないか?

     出航前の買い出しかい?」

くまった「お使いの仕事があればまだいいんです。

     クビになりました」

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

ミミズク「そうかあ、船長のやつ、相変わらず融通がきかないな」

くまった「鯨の来る町には行けそうにもありません」

ミミズク「それは困ったなあ」

くまった「はい。何とかして鯨の来る町へいかないと」

ミミズク「そうだな。おまえさんひとりの問題じゃないし。金は持っていないのか?」

くまった「森のみんなから預かったお金がありますが、これは使えません」

ミミズク「うんうん」

くまった「やはり、くまったにはこの役目は無理なんじゃないでしょうか?」

ミミズク「弱気になるな。

     よし、もう一度船長にかけあってやる」

くまった「よろしくお願いします、、、、、

     何か外が騒がしいですね」

ミミズク「何だ?

     おっ、消火隊が出動していく。

     ・・・・・・ひやー油井(ゆせい)の火事だ!」

くまった「火事?」

ミミズク「石油を掘り出す井戸が燃えているんだ。まいったな」

くまった「向こうの方に黒い煙が上がっていますね?」

ミミズク「よし、見に行くぞ」

くまった「うわー」

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++

 

火事場にやってきたくまったたち

 

くまった「井戸というから地下にあるのかと思ったら、矢倉のようですね」

ミミズク「矢倉の中に管があってそこに石油が流れているのさ」

くまった「へえー。

     それにしても黒い煙だらけですね。どうやって火事を消すのですか?

     水をかけても消えそうにありませんが?」

ミミズク「確かに水じゃ消えないかもな。

     そういう時は燃えている井戸のてっぺんを液体窒素で冷やす。

     と同時に縦の管に別の管、横向きの管だが、それをつないで、

     石油を別の方向に流すのさ」

くまった「そうすれば、火のないところへ石油を逃がせますね」

ミミズク「そうだ」

くまった「でもそんな危険な作業は誰がやるんですか?」

ミミズク「命知らずの消火隊の連中さ。

     多くは専門家集団だが、給料がいいもんだから、たまに流れ者なんかも

     まじっているな」

くまった「流れ者?」

ミミズク「ほら、塔の西側で待機している奴さ。

     森を飛び出して来てフラフラしていた奴さ」

くまった「ありゃ、ウサギ族のクロじゃないか。

     森を出て行っちゃったと思ったらこんな所にいたなんて。

     危なそうな仕事」

ミミズク「ちょっとだけな」

くまった「あそこの高いところから、いろいろ命令を出しているのが隊長ですね」

ミミズク「スピーカーと無線で指示を出しているのさ」

 

消火隊隊長「よーし、炎の勢いが弱くなったぞ。東側の第1班、横向きの管をつなげー」

隊員1 「了解。ただいま油井に接近中」

隊長  「よーし、その調子だ。気を付けろよ」

隊員1 「油井につきました。今から穴を開けます、、、、うわー、炎がー」

隊長  「風向きが変わったぞ、退避! 退避!」

隊員1 「ひえー」

隊長  「退避! 退避! 

     東側はダメだー。

     よし、西側で待機中の第2班。この隙に行けー!」

 

くまった「ひえー、クロの方に仕事がまわってきた」

ミミズク「腕の見せ所だ」

くまった「気を付けろよ」

 

隊員2 「第2班、油井につけました。今から穴をあけます」

隊長  「風向きが不安定だ。注意しろ!」

隊員2 「はい。ただいま穴あけ中、あと少しです」

隊長  「炎が西に回り始めたぞー! 退避、退避!」

隊員2 「総員退避!」

クロ  「待って、待って、もうちょっとー」

隊長  「そこの黒いの、そんなことしていないで、早く逃げろー!」

クロ  「よし、開いたー!」

隊長  「バカ! 早く逃げろー」

クロ  「うわー。 煙が来るー」

隊長  「左へ逃げろ、左へ!」

クロ  「左は煙がー」

隊長  「反対側だ!」

クロ  「ひえー」

 

隊員1 「隊長、炎が弱まりつつあります。作戦成功です」

隊長  「よし!

     黒い奴はどうした?」

隊員2 「何とか助かりました。でも煤(すす)で真っ黒です」

隊長  「よし、今行く」

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

隊長  「黒いの。大丈夫か?」

クロ  「なんとか」

隊長  「わざわざ煙の方に逃げる奴がいるか!?」

クロ  「でも、隊長は左に逃げろって」

隊長  「ああ、オレの方から見ての左に逃げろと言ったんだ。

     おまえさんの方から見ると右だがな」

クロ  「そんなあ」

隊長  「まあ、とにかくよくやった。

     でも、ちょっとやり方が危険すぎるな。われわれは安全第一だ」

クロ  「はい」

隊長  「それにしても煤で真っ黒だな」

クロ  「黒さが2倍くらいになりましたか?」

隊長  「そうだな。よし、黒さが2倍だし、今日からおまえはクロクロだ」

クロ  「ひえー」

隊長  「ボーナスくれてやるし、黒さが元に戻るまで休暇をとっていいぞ」

クロ  「はい」

 

つづく

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


つづきへ  ひとつ前の話しに戻る 

-------------------------------------------------------------------

きら星★目次へ