******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第3部 第2話】

 

親愛なる森のみんな:

毎日手紙を出すことはできないけれど、日々起こったことは、こうやって書き留めて、

みんなに報告するようにします。

今日は船長さんに会いました。船長さんも仕事を紹介してくれたミミズクさんも

冗談はきついし、何を考えているのかまったくわかりません。

町には泥棒や殺し合いもあると聞きます。そんな中で暮らしていると、心もくまったたち

森の動物とは違ったものになってしまうのかもしれません。

なにはともあれ、明日からは船乗りとしてがんばって働くことにします。

ではまた。

               船乗りになったくまったより

 

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くまった「船長、甲板(かんぱん)の掃除終わりました」

船長  「よし。

     いつまでも掃除じゃ、つまらないだろう。

     何か別のことでもしてみるか?」

くまった「はい」

船長  「ミミズクの話しによると、おまえさんは船の扱いにかけては

     森一番ということだが、、、

     何せ10人も欠員が出た後だ。何でも好きなことができるぞ。

     操舵(そうだ)、機関、通信とあるが何をしたい?」

くまった「ソウダ? 何ですか? それらのものは?」

船長  「操舵だ。操舵。船の舵を操ることに決まっているだろう?

     知らないのか?」

くまった「はい。何せ船に乗るのは初めてなもので」

船長  「げっ。(ミミズクのやつ、またいいかげんな奴を連れてきたな)

     じゃあ、エンジンとか通信機とかは扱ったことないのか?」

くまった「それらのことは、からっきしで、特にできることはありません」

船長  「それじゃあ、何ができるんだ?」

くまった「はい。

     おなかがすいた時にはご飯を食べることができますし、

     眠くなった時は眠ることができます」

船長  「そうかあ! それはすごいな。

     おなかがすいた時にはご飯を食べることができるし、

     眠くなった時は眠ることができるか、、、

     そりゃまたたいしたもんだ」

くまった「いやあ、それほどでも、、」

船長  「よーし、おまえはクビだ」

くまった「へっ?」

船長  「クビだ。クビ。

     何もできない奴を雇っておくわけにはいかないだろう」

くまった「でも、10名も足らないんなら、何か手伝いくらいなら、、、」

船長  「でももストライキもない。

     だいたい、テレビが壊れたからといって、ラジオを10台買ってきたとしても、

     ラジオでテレビの絵を写すことはできないだろう。船員の補充には船員が

     必要だ」

くまった「そうですかあ」

船長  「まあ、出航前でよかったな。出航後だと陸(おか)に帰るのが

     一苦労だからな」

くまった「・・・・」

 

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さて、船から降ろされてしまった くまった。

 

くまった「あーあ、がっかりだな。

     せっかく海まで行かれると思ったのにな。

     やっぱり、くまったには無理なのかなあ。鯨の来る町まで行くなんて。

     何もできないしな。

     あーあ。

     町になんか出て来なければよかったんだ。

     もう森に帰りたい」

 

トボトボトボ

 

つづく

 

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