******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第2部 第17話】

 

なにやら自殺してしまいそうな社長さんに出会った、うささぎとクロクロ。

寅さんシリーズに出てくるタコ社長みたいな社長さん、自殺してしまうのでしょうか?

 

うささぎ「社長さん、ひょっとして自殺しようとしているんですか?」

社長  「自殺? しないよ」

うささぎ「そうですか」

社長  「君達ももう心配しなくていいから、今日は帰って休みなさい。

     もう、お墓の番も必要ないだろう」

クロクロ「そうですね。それでは失礼します。

     うささぎ、行こう」

うささぎ「そうだね。

     じゃあ、社長さん、おやすみなさい」

社長  「おやすみ」

 

そんなわけで、社長さんのもとから離れたうささぎたちですが、、、、

 

クロクロ「うささぎ、社長さん『自殺しない』なんて言っていたけど、

     やっぱり怪しいよね。自殺しちゃいそうだよね」

うささぎ「うん、うん、うささぎたちを追い返そうとするしね。

     うささぎたちが帰った後に自殺しようしているんじゃないかな」

クロクロ「だね。

     こっそり、社長さんの所に戻って様子をみよう」

うささぎ「それがいいね」

 

ってなわけで、墓石の陰に隠れながら、社長さんの近くまで戻って来たうささぎたち。

 

うささぎ「クロクロ、そんなに速く行かないでくれよ。

     クロクロは黒くて目立ちにくいからいいけど、うささぎは

     見つかりやすいんだ」

クロクロ「ごめん、ごめん」

うささぎ「あれっ、社長さん、いなくなっちゃった」

クロクロ「いるよ。ほら、向こうの桜の木の下」

うささぎ「ありゃー、いよいよ危ないね。

     首を吊るつもりだ」

クロクロ「もっと近づいてみよう」

 

あらあら、社長さんは紐(ひも)みたいなものを取り出して桜の枝にかけ始めました。

 

うささぎ「たいへんだ。

     社長さん!」

社長  「なんだ、帰らなかったのかい」

うささぎ「はい。社長さん、首を吊るんですか?」

社長  「ああ、、、止めないでくれ」

クロクロ「ひえー。

     うささぎ、どうしよう」

うささぎ「和尚様に電話だ。

    『葬式一件、請け負いました。至急準備してください』って」

クロクロ「電話、電話、っと」

 

ルルル、ルルル

 

クロクロ「今度は電話にでてくれよ」

正覚和尚「はい」

クロクロ「こちらクロクロ。和尚様応答願います」

正覚和尚「クロクロさん、どうかしましたか?」

クロクロ「はい。葬式の予約を受け付けました。

     至急準備をお願いします」

正覚和尚「えっ、だれが死んだんですか?」

クロクロ「これから社長さんが首を吊って死ぬところです」

正覚和尚「ちょっと!

     言っていることがよくわかりません」

クロクロ「社長さん、工場が倒産するので自殺するそうです」

正覚和尚「クロクロさん、今いったいどこにいるのですか?」

クロクロ「お墓の桜の木のそばです。社長さんもここにいます」

正覚和尚「クロクロさん、よく聞きなさい。

     今からそちらに行きます。

     私が到着するまで、社長さんが自殺しないよう引き止めておきなさい。

     いいですか!」

クロクロ「でも、本人の希望は『自殺したい』ということですが」

正覚和尚「ほんとうに自殺したいと思っている人は、自分から『自殺する』なんて

     言いません。

     なんとしても引き止めておきなさい」

クロクロ「はーい」

 

クロクロ「うささぎ、和尚様が今こっちへ来るって。

     和尚様が来るまでは、社長さんが自殺しないよう引き止めておけ、だって」

うささぎ「そうかい。そうだよね。葬式の準備ができる前に死なれて、万が一

     他のお寺に大事なお客さんを取られたら大変だからね。

     時間稼ぎをしよう」

 

クロクロ「社長さん!」

社長  「なんだい。今、紐をくくりつけているんだ。邪魔しないでくれ」

クロクロ「社長さんにちょっとお話しあるんですが」

社長  「なんだい?」

うささぎ「社長さんのために『石ころ占い』をしたいと思います」

社長  「石ころ占い?」

うささぎ「石ころをころがして、その結果により吉兆を調べます。

     では、ひとつやってみましょう」

 

ゴロゴロゴロ

 

クロクロ「なんと出た?」

うささぎ『今日、自殺するのは凶、健康に悪い』と出ました」

クロクロ「あらら、社長さん、自殺するのは明日にしましょうよ」

社長  「自殺はいつしたって健康に悪いに決まっているだろう」

うささぎ「それもそうですね」

社長  「引き止めてくれなくてもいいんだよ。

     静かに死なせてくれ」

 

つづく

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