******** うそばっかりのうささぎの話し ********

  

【第2部 第16話】

  

深夜、お墓の番をいいつけられたうささぎとクロクロ。

そのうささぎたちの前に現れた謎の人物とは、、、、、

 

クロクロ「こっちへ来る来る」

うささぎ「陰に隠れて様子を見よう」

クロクロ「だね。

     うささぎ、もしお化けだったらどうする?」

うささぎ「どうしようか?

     一緒に写真を撮ってもらおうよ」

クロクロ「お化けって怖いもんじゃないのかい?」

うささぎ「大丈夫だよ。

     交通事故で死ぬ人は多いけど、お化けが原因で死んだ人って

     あんまりいないんじゃないかい」

クロクロ「そうだね。

     お化けって意外と安全なものなんだね」

うささぎ「うんうん」

 

話しをしているうちに謎の人物はうささぎ達の近くまでやって来ました。

 

うささぎ「どうやら男の人のようだね。

     おじさんっぽい人だ」

クロクロ「お墓の前で何かブツブツ言って言いる」

うささぎ「お化けかなあ?」

クロクロ「どうだろう」

うささぎ「クロクロ、お化けかどうかって、どうやって見分けるんだい?」

クロクロ「死んだ人の姿をしていたらお化けさ」

うささぎ「あの人が死んだ人なのか、死んでいない人なのか区別がつかないよ」

クロクロ「死んでいたら、歩き回れないさ。生きている人だよ、きっと」

うささぎ「でも、お化けって、死んでいても動くんじゃないかい?」

クロクロ「だね。何か頭が混乱してきた」

うささぎ「お化けかどうかの区別はむずかしいね。

     たぶん、電車の中で隣にお化けが座っていても最後まで気がつかない

     ものさ」

クロクロ「かもね」

うささぎ「どうする?」

クロクロ「直接、本人にきいてみよう」

うささぎ「何て言うんだい?」

クロクロ『だれだ!』とか『こんなところで何をしているんだ!』てガツーンと

     言うのさ」

うささぎ「よし。

     まずは懐中電灯で照らして、顔をよく見てみよう」

 

ピカッ

 

おっと、懐中電灯を向けられたおじさん、まぶしくてビックリ。

 

おじさん「だれだ!」

うささぎ「うささぎとクロクロだよ」

おじさん「なんだ子どもか」

うささぎ「子どもじゃないよ。ぬいぐるみだよ」

おじさん「ぬいぐるみ?

     こんなところで何をしているんだ?」

うささぎ「お墓の番をしているのさ」

おじさん「なんだ、そうか。

     まぶしいから、その懐中電灯、こちらに向けないでくれ」

うささぎ「はーい。

     クロクロ、うささぎが言おうと思ったこと全部言われちゃったような

     気がするけど」

クロクロ『気がする』じゃなくて全部言われちゃったんだよ」

うささぎ「そうかあ」

クロクロ「いいよ。クロクロが言うから」

うささぎ「うん」

クロクロ「おじさん! おじさんは何をしているんですか?」

おじさん「見ればわかるだろう。墓参りだ」

クロクロ「おじさんは、ひょっとしてお化けじゃないですか?」

おじさん「お化け?

     ちがうよ。

     でも明日にはお化けになっているかもな」

クロクロ「お化けじゃなくて安心しました。

     なにやら怪しい人物がお墓に現れるそうなので、お墓の番をしていたんです」

おじさん「オレは怪しいものじゃないさ。

     ほら、塀の向こうの3件先に工場があるだろ。

     そこの社長さ」

クロクロ「社長さんだったんですか。

     お墓の3件先といえば、もう、ここは社長さんの庭も同然ですね」

社長  「そんなところさ」

クロクロ「謎が解けたね、うささぎ。

     社長さんで昼間は忙しいから、夜に墓参りに来ていたんだ。

     怪しい人物じゃなかったんだね」

うささぎ「そうだね」

クロクロ「そうとわかったら、もう帰ろう。

     行こう、うささぎ」

うささぎ「ちょっと待てよ。

     クロクロ、おじさんは社長さんだよ。

     おじさんの工場でアルバイトとして雇ってもらおうよ」

クロクロ「それはいい考えだね」

うささぎ「だろ。

     社長さん、うささぎたちを社長さんの工場で雇ってもらえませんか?」

社長  「アルバイトをしたいのかい?」

うささぎ「そうです」

社長  「無理だね」

うささぎ「やっぱりぬいぐるみじゃダメですか?」

社長  「雇いたくても雇えないね。

     来週で工場はつぶれちまうのさ」

うささぎ「ありゃ、それは大変ですね」

社長  「ああ、大変だ、、、、もう、自分が情けなくて。

     じいさんが起こして、おやじが盛り立ててきた工場だったけど、

     オレの代でつぶしちまうなんて。

     ご先祖に申し訳なくて」

クロクロ「それで、お墓参りに来ていたんですね。

     あんまり気を落とさないでください。

     世の中考え方ひとつですよ。

     工場がつぶれて仕事がなくなれば、今度は、ちゃんと昼間にお墓参り

     できますよ」

社長  「もう、その必要はないさ。

     オレはこの墓の中に入るよ」

うささぎ「お墓の中にいれば、わざわざお墓参りに来る手間もはぶけて便利ですね」

クロクロ「うささぎ、ちがうよ。

     この人、ひょっとして自殺しようとしているんじゃないかい?」

うささぎ「えっ!?」

 

つづく

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