******** うそばっかりのうささぎの話し ********

 

【第2部 第13話】

 

この世界のぬいぐるみは歩いたり、歌ったりするばかりでなく、時にはむずかしいことも

考えたりします。

お寺に修行に来ているぬいぐるみの「うささぎ」と「クロクロ」は疑問に思っていること

を和尚様にたずねました。

 

正覚和尚「クロクロさんの質問というのは何ですか?」

クロクロ「はい。ぬいぐるみは人間、修羅、天上、地獄、畜生、餓鬼の6つのうちどれに

     あてはまるんですか?」

正覚和尚「どこにもあてはまりません」

クロクロ「えっ?」

うささぎ「クロクロ、どこにも当てはまらないって事は、すでに輪廻(りんね)の輪から

     解脱(げだつ)している、ってことじゃないかい? ひょっとして」

クロクロ「おおっ、それはすごい。ぬいぐるみはもう解脱していたんだ」

正覚和尚「ある意味ではそうかもしれません。

     あなたたち悩みなんかないでしょう」

クロクロ「はい。ありません」

正覚和尚「すばらしい。

     私もちょっと『ぬいぐるみ』になってみたくなってしまいました」

クロクロ「それはいい考えですね。

     どうやったら人間からぬいぐるみになることができるんだろう?

     うささぎ、知ってる?」

うささぎ「いや。

     こんど、ミミズク博士にきいてみよう」

クロクロ「うん。

     和尚様、クロクロたちが『ぬいぐるみになる方法』を調べてきますね」

正覚和尚「それはありがとう。

     わかったら参考までに教えてくださいね」

クロクロ「はい」

正覚和尚「では質問のほうはもういいですか?」

クロクロ「いやまだあります?

     人類が戦争や環境破壊で滅亡したら、人間にはもう生まれ変われないん

     ですか?」

正覚和尚「まあそうなりますね」

クロクロ「そうしたら六道ではなく五道になりますね」

正覚和尚「そうとも言えますが、人間、修羅、天上、地獄、畜生、餓鬼の六道は

     たとえ話しのようなものでこれらの世界が実際にあるわけではありません」

クロクロ「えっ!?

     何のたとえですか?」

正覚和尚「変わらないものはない。すべてのものは変わる、ということです」

うささぎ「今日は一文無しでも明日には大金持ちになれるかもしれない、ということ

     ですか?」

正覚和尚「そうです。

     その反対に『今日金持ちの人が明日には一文なし』ということもあります」

うささぎ「そのお金持ちの人のお金はどこに行ってしまったのですか?

     うささぎがもらえることはありませんか?」

正覚和尚「たとえ話しです」

うささぎ「はい」

正覚和尚「では質問のほうはもういいですか?」

うささぎ「まだあります」

正覚和尚「何ですか?」

うささぎ「さっきはなぜ丸山さんの極楽行きをとめたんですか?

     丸山さんは極楽に行かなくてもいいのですか?」

正覚和尚「人間は極楽に行くために生きているのではありません」

うささぎ「では何のために生きているのですか?」

正覚和尚「人によって違います」

うささぎ「では、うささぎたちは明日、丸山さんの希望を聞いてから極楽行きを

     手伝います」

正覚和尚「そうしてください。でもたぶん丸山さんは『まだ極楽へは行きたくない』

     と言うと思いますよ」

うささぎ「そうですか」

正覚和尚「質問のほうはもういいですか?」

うささぎ「はい」

正覚和尚「それではおやすみなさい」

うささぎ「失礼します」

 

クロクロ「せっかく丸山さんの手助けができると思ったのに残念だね。うささぎ」

うささぎ「うん。他に『極楽に行きたい』という人を探そう」

クロクロ「そうだね。

     なんかやることがいろいろとでてきたね。

     『和尚様をぬいぐるみにする方法』も調べなくちゃいけないし」

うささぎ「うん。

     さっそく、ミミズク博士のところへ聞きにいってみよう」

クロクロ「お寺を抜け出して?」

うささぎ「そうそう」

クロクロ「もう博士も寝ているんじゃないかな?」

うささぎ「ミミズク博士って夜も動けるんじゃなかったの?」

クロクロ「最近は健康のため早寝早起きを心がけているらしいよ」

うささぎ「じゃあだめか」

クロクロ「明日早めの時間に行ってみよう」

うささぎ「それがいいね」

 

ゴーン

 

一夜明けて修行2日目の朝。朝一番の修行は庭掃除です。

 

丸山  「朝から掃除をすると気が引き締まるね」

クロクロ「そうですね。

     ときに丸山さんに質問があります」

丸山  「何だい?」

クロクロ「丸山さんは極楽に行きたいですか?」

丸山  「そうだねえ。死んだら極楽に行けるといいね」

クロクロ「そうですよね。

     うささぎ、丸山さんはやっぱり極楽に行きたいって」

うささぎ「おおっ。丸山さん、ほんとうに極楽に行きたいですか?」

丸山  「まあ、地獄よりは極楽に行きたいよな」

クロクロ「わかりました。クロクロたちに任せておいてください」

丸山  「は?」

 

つづく

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