******** うそばっかりのうささぎの話し ********

 

【第2部 第11話】

昼休みも終わり、うささぎ達の修行は午後の部に突入しました。

 

正覚和尚「では午後は声明(しょうみょう)の時間です。声明とはお経に

     節をつけて音楽的に美しくお経を読む事です。

     みなさん、このお経のカラオケに合わせて、お経を唱えて

     ください」

うささぎ「はーい」

正覚和尚「えー、これがカラオケのリモコンで、こちらが題目集です」

うささぎ「すごいレーザーディスクのカラオケだ」

正覚和尚「はじめに阿弥陀経(あみだきょう)などを練習するとよいでしょう。

     では、また後で来ますね。みなさん、しっかりと練習して

     くださいよ」

 

丸山  「それでは早速阿弥陀経に挑戦しよう。うささぎ、阿弥陀経は

     何番だい?」

うささぎ「304Aの89です」

丸山  「304Aの89、と押して。さあ、はじまるぞ、、、」

 

そんなわけでうささぎたちのお経が始まりました。

 

「にょーぜーがーもん。いちじぶつざい。しゃーえーこく。

 ぎーじゅーきっこーどくおん。よーだいびーくーしゅー。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あーのくたーらーさんみゃくさんぼーだい。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ぶっせつあーみーだーきょう。」

 

クロクロ「ふー、一気に唱えてしまったね」

丸山  「意外と節をつけて唱えるってむずかしいね。もう一度挑戦しよう」

クロクロ「はい」

うささぎ「うささぎから提案があります。

     カラオケだけじゃ物足りないので、生演奏もつけようと思いますが

     どうでしょうか?」

丸山  「おお、それはすごいね。生ギターの演奏かなんかもつけちゃう

     のかい?」

うささぎ「いや、木魚(もくぎょ)の生演奏です」

丸山  「木魚!? 

     いやいや、木魚もお経に合っていていいね」

うささぎ「丸山さん、ひょっとしていま、『なんだ、ギターじゃなくて木魚か。

     ちょっと拍子抜け』なんて思いませんでしたか?」

丸山  「いや、そんなことないよ。やっぱり、お経には木魚が一番だよ」

うささぎ「ほんとですか?

     でもやっぱり『しょせんぬいぐるみにはギターは無理だよな。木魚が

     いいところさ』なんて思っていませんか?」

丸山  「そんなことはないよ。ぬいぐるみだってギター弾けるかもしれない

     じゃないか」

うささぎ「そうですか。

     でもやっぱり『うささぎは変な質問ばっかりしやがって、いちいち

     思ってもいない事答えなくちゃいけないから面倒くさいな』なんて

     思っていませんか?」

丸山  「ブツブツ言っていないで、さあ、とっとと木魚の生演奏してくれ!」

うささぎ「はーい」

 

ポクポクポクポク

「にょーぜーがーもん。いちじぶつざい。しゃーえーこく。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

うささぎ「ふー」

クロクロ「丸山さん、次は別のお経にしましょうよ」

丸山  「そうだね。じゃあどれにするかなっと、、、

     題目集を見てみよう」

うささぎ「いろんなお経が並んでいますね。三波春男、美空ひばり、、」

クロクロ「えっ?」

丸山  「それは普通の歌謡曲だよ」

クロクロ「なんで歌謡曲が?」

丸山  「このお経のカラオケは、みたところ普通の歌謡曲カラオケにお経の

     ディスクを何枚が継ぎ足したものらしいね。

     お経のとき以外は普通のカラオケとして使えるという便利なものさ」

うささぎ「さすが、修行を積んでいる人たちは抜け目がないですね」

クロクロ「だね」

丸山  「よし、じゃあ、次は20のBの58を押してくれ」

うささぎ「はい」

クロクロ「今度はどのお経ですか?」

丸山  「安室奈美恵!」

クロクロ「それって、歌謡曲じゃないですか?」

丸山  「そうだよ。ボク達も抜け目なく修行しないとね。

     せっかくのカラオケなんだから、有効活用しないと」

うささぎ「お経を唱えずにふつうのカラオケを歌っちゃうんですか」

クロクロ「えっー、まじめな丸山さんらしくないですよ」

丸山  「人間はいろいろな面をもっているのさ」

クロクロ「へえー」

丸山  「では安室奈美恵をいってみよう」

うささぎ「ちょっと待ってください。何かおかしいと思いませんか?」

クロクロ「えっ?」

うささぎ「修行のしているうささぎ達の前に歌謡曲のカラオケを与えるなんて」

クロクロ「どうして?」

うささぎ「これは罠(わな)だ。うささぎ達がちゃんと修行するかどうか試して

     いるんだよ。

     カラオケで遊んじゃったら失格。

     カラオケの誘惑に負けずに、ちゃんとお経を唱えたら合格なんじゃ

     ないかな」

クロクロ「考え過ぎだよ」

丸山  「いや、ひょっとしたら有り得るよ。ほら、お釈迦様が修行している

     ときにいろいろな悪い奴がやって来て、修行のじゃまをするために

     さまざまな誘惑をする、っていう話しがあるだろ。

     それと同じかもしれないな。

     やっぱり誘惑に負けちゃいけないな」

クロクロ「そうですね。でもうささぎはよく気がついたね」

うささぎ「いつもミミズク博士にはめられているからね。

     用心しないと」

クロクロ「なるほど。クロクロもミミズク博士から多くを学ぶようにしなければ」

丸山  「なんだい、そのミミズク博士って?」

うささぎ「だれかをあわてさせることが何よりも好きな、街の研究家さ」

クロクロ「クロクロの先生なんだ」

丸山  「ふーん」

うささぎ「では、まじめにお経を唱えましょう」

丸山  「そうだね。じゃあ今度は般若心経にしよう」

 

「かんじざいぼさつ。ぎょうじんはんにゃはらみつたじ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ぎゃーてーぎゃーてーはらぎゃーてー。はらそーぎゃーてー。ぼうじそわか。

 はんにゃしんきょう」

 

うささぎ「いやー、全身に仏の教えが染み渡ってくるような気がします」

丸山  「お経の意味がわかるのかい?」

うささぎ「全然」

丸山  「クロクロも少しは仏の心がわかったかい?」

クロクロ「クロクロは安室奈美恵のカラオケのことが気になってしょうが

     ないよ」

うささぎ「ん?」

クロクロ「お経を唱えずに、安室奈美恵のカラオケを歌ったらどうなるんだろう

     って」

うささぎ「どうなるんだろうね。和尚様が飛んできて、バツとして廊下に立たさ

     れるとか」

丸山  「どうかなあ?」

クロクロ「もし、何事も起きずにカラオケを歌えるんなら、『無理にガマンして

     カラオケを歌わない』というのも悔しいなあ」

丸山  「うーん」

クロクロ「答えを知るにはただ一つ。実際に安室奈美恵のカラオケを歌ってみる

     しかない」

うささぎ「では歌謡曲の方もいってみますか?」

丸山  「うん。虎穴に入らずんば虎児を得ず」

クロクロ「そうこなくちゃ。

     20のBの58。演奏開始!

     さあ、どんな絵が現れるか?」

うささぎ「いきなり和尚様の顔が出てきて『やっぱり罠だよーん』とか言った

     りして」

丸山  「どうやらそのようだよ。ほら」

うささぎ「ガーン」

 

レーザーカラオケのモニタ画面に出てきたのは、なんと正覚和尚様でした。

 

モニタの中の和尚「あららー、お目当ての曲が出てこなくてガッカリしましたか。

         みなさん、ついにカラオケの誘惑に負けてしまいましたね」

うささぎ「ひえー」

正覚和尚「こんなことではいけません。もっと厳しい修行が必要なようですね。

     では今から妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)全28章

     4時間バージョンをノンストップで唱えていただきます」

うささぎ「ひえー」

 

「じがとくぶつらい、、、、、、、、

 

こうしてうささぎ達の修行は続くのでした。

 

つづく

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