******** うそばっかりのうささぎの話し ********

 

【第2部 第10話】

お寺の『体験修行コース』に入門したぬいぐるみのうささぎと、同じくぬいぐるみの

クロクロ。午前中の修行で滝にあたったクロクロは体調を崩してしまいました。

そうこうしているうちに、時刻は12時に、、、、

 

ゴーン

 

正覚和尚「もう12時ですね。お経の時間にしようと思いましたが、みなさん、

     昼食にしましょう」

丸山  「はい」

うささぎ「ときに和尚様。ぬいぐるみは食事しません」

正覚和尚「そうですか。それでは、クロクロさんとうささぎさんは食事の間、

     庭の掃き掃除をしてください」

うささぎ「えっ!?」

クロクロ「うささぎ、イヤそうな顔していないで、さあ、掃除だ、掃除。うわっ!」

 

ドテッ

 

うささぎ「クロクロ、大丈夫かい? まだ体を動かすような修行は無理だよ」

正覚和尚「クロクロさんには無理なようですね。掃除はいいですから、

     休んでいてください。

     じゃあ、うささぎさん、庭掃除は頼みましたよ」

うささぎ「はーい」

 

そんなわけで、ひとり庭掃除をすることになったうささぎ。

 

うささぎ「なんでえ。みんなは食事で、クロクロは休みなのに、なんでうささぎだけ

     が掃除をしなくちゃいけないんだ。ブツブツ。

     スッポンスッポンスッポンポン」

 

さて、クロクロはというと、、、

休み時間中、ご住職のおかみさんにドライヤーでもって乾かしてもらっていました。

 

ゴー

 

おかみさん「風加減はどう?」

クロクロ「ちょうどいいです。あー、暖かな風が吹いてきて気持ちいい。

     あー、極楽極楽」

 

ゴー

 

クロクロ「あー、極楽極楽。

     お寺へ修行に来ただけなのに、お寺を通り越して一気に極楽まで

     来てしまうとは。

     いやー、幸せ、幸せ」

 

一方、掃除を続けるうささぎは、、、

 

うささぎ「ゲホッ、ゲホッ。

     ほこりだらけになっちゃうよ。後でうささぎ自身も掃除してもらわないと。

     あーあ、うささぎだけが掃除なんて、、、不公平だよな。

     あっ、和尚様」

正覚和尚「うささぎさん、掃除ははかどっていますか?」

うささぎ「はい、ぼちぼちと。でも、和尚様、なんでうささぎだけが掃除をしなくちゃ

     いけないんですか?」

正覚和尚「どうしてでしょうかねえ? 

     考えておきましょう。

     ときに、うささぎさんは『修行をしてみたい』と思ってお寺に

     やってきたんですよね」

うささぎ「はい、修行をしてみたいと思って来ました」

正覚和尚「それならば、やりたいと思っていた修行を、他の人よりも余分に

     しているわけですよね。なんか得したと思いませんか?」

うささぎ「うーん、そうですねえ」

正覚和尚「得して良かったですね」

うささぎ「はい」

正覚和尚「では掃き掃除を続けてください」

うささぎ「はーい。

     ・・・・

     なんか丸め込まれてしまったような気がするなあ、、、」

丸山  「ははっ、うささぎじゃ和尚様の相手にならないよ」

うささぎ「あっ、丸山さん、もう食事は終わったんですか?」

丸山  「うん、うささぎがちゃんと掃除をしているかどうか見に来たんだよ」

うささぎ「なんとかサボろうとしたけどダメだったんだ。

     和尚様にはかなわないや」

丸山  「修行の積みかたがちがうからね」

うささぎ「そうかあ! 修行を積めばいいんだね。

     修行を積めば、他人を口車に乗せて、自分の代わりに掃除をさせることも

     できるようになるんだね」

丸山  「どうかなあ?」

うささぎ「きっとそうだよ。

     やっぱり、修行をすれば得する事があるさ。さあ、掃除、掃除。

     あっ、おみくじが落ちている」

丸山  「ほんとだ」

うささぎ「うささぎが、落とした人に届けてあげよう」

丸山  「落としたんじゃなくて、捨てて行ったんだよ」

うささぎ「もったいない。買えば100円するのにな。

     うささぎが拾って使ってあげよう」

丸山  「他人の引いたおみくじを拾って使うとは珍しい奴だね」

うささぎ「世の中リサイクルが流行(はやり)でしょ。

     だから、うささぎもおみくじのリサイクルをしようと思って」

丸山  「ふーん。おみくじのリサイクルねえ」

うささぎ「もっとおみくじが落ちていないかなあ」

丸山  「それならあそこの木に括(くく)り付けられているおみくじもリサイクル

     したらどうだい?

     あそこのおみくじはみんなが置いていった物だよ」

うささぎ「うわー、たくさんのおみくじが木になっている。

     ざっと見積もって3000円分くらいはあるね。

     ぬいぐるみ仲間に思う存分分けてあげられるや」

丸山  「おみくじってもらってもあんまりうれしくないんじゃないかい?

     自分で買うから楽しいんだよ」

うささぎ「それなら簡単。うささぎがみんなに売ってあげればいいんだよ。

     そうだな。友達価格の10円で売ることにしよう。

     お寺や神社で買えば100円もするおみくじをわずか10円で売るんだから、

     もうおみくじの価格破壊だね」

丸山  「買う奴いるかい?」

うささぎ「古本や古いマンガを買う人がいるんだから、古いおみくじだって

     だれか買ってくれるさ」

丸山  「うーん。でも古新聞はみんな買わないよ」

うささぎ「大丈夫。

     うささぎの友達にオカルト大好きの『くまった』っていう奴がいるんだけど、

     くまったなら買ってくれるさ」

丸山  「でもなあ、、おみくじを買うって、そのおみくじに宿っている魔力を買う事

     なんじゃないかな? 魔力は最初に買ったひとにしか効かないよ」

うささぎ「それも簡単。うささぎが魔力を吹き込み直せばいいのさ。『うささぎ神社』製

     特製おみくじのできあがり」

丸山  「そんなことをして仏様のバチがあたらないかい?

     罰(ばち)があたって怪我でもしたらどうするんだ」

うささぎ「そうしたらお寺を訴えるさ。怪我するようなおみくじを製造販売したかどで」

丸山  「製造物責任法(いわゆるPL法)違反でかい?」

うささぎ「そうそう」

丸山  「やれやれ、うささぎが仏の道を知るのは何年先になることやら」

 

                    つづく

 

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