【第2部】 Vol.8



*** うそばっかりのうささぎのはなし ***



滝行の最中に気絶してしまったクロクロ。丸山さんとうささぎは、クロクロを

乾かすためにクロクロを本堂に運んできました。



正覚和尚「では、クロクロは護摩行(ごまぎょう)の火で乾かす事に

     しましょう」

うささぎ「護摩行って何ですか?」

正覚和尚「この木片は護摩(ごま)といいます。この護摩をこの火にくべて

     燃やします。すると、この護摩が燃えてなくなるとき、みなさんの

     煩悩も一緒になくなってしまう、というものです。

     滝行の後は声明(しょみょう)の予定でしたが、4組だけは

     急遽予定変更して護摩行を行ないます」

丸山  「はい」

正覚和尚「護摩行の前には身を清めなくてはなりません。丸山さん、

     身を清めるための滝行は終わってますよね?」

丸山  「はい」

うささぎ「和尚様、うささぎはまだです」

正覚和尚「ぬいぐるみは滝行しなくていいです。またひっくり返られると

     困りますから」

うささぎ「はーい」

正覚和尚「では護摩行を始めましょう」


パチ! パチ! パチ!


うささぎ「よし、じゃあクロクロを火の脇に置いて、っと」

丸山  「うささぎ、あそこに木の台があるだろ。あれを持ってきて、

     クロクロを台の上に置いて乾かそう。熱は高いところへ

     行くからね」

うささぎ「ほいさ」

丸山  「さあて、クロクロを置くぞ。よいしょっと。これでよし。

     護摩行を続けよう」

うささぎ「はい」

丸山  「しかし、クロクロも無鉄砲な奴だよね」

うささぎ「うん、でも、クロクロは『うささぎが滝行をやらなくても

     すむように』って自ら飛び込んで行ったんだよ。きっと」

丸山  「へえー、そうなんだー」



そんなわけで丸山さんとうささぎは護摩を焚きながらクロクロを乾かして

いきました。3時間くらいたったところ、、、



クロクロ「うーん、ムニャムニャムニャ、、」

うささぎ「あっ? 丸山さん、クロクロが気がついたみたいだよ」

丸山  「えっ?」

クロクロ「ムニャムニャ、、」

うささぎ「あっ、クロクロ、動くと落ちるよ」


ドテッ! 


うささぎ「やっぱり落ちた」

丸山  「おい、クロクロ、気がついたか?」

クロクロ「ムニャムニャ、、、、ケレケレ、ピンコーン」

うささぎ「あん?」

クロクロ「パヨパヨ、カンポン」

うささぎ「クロクロ、何言っているのか全然わかんないよ。滝に打たれて

     頭がおかしくなっちゃったのかい?」

クロクロ「ポンポーン」

丸山  「まだ水を含んでいるから、うまく発音できないんじゃないかな」

うささぎ「そうかもね。そうなのかい、クロクロ?」

クロクロ「フニャペコ、ポン」

うささぎ「ポンだけは何とか言えるみたいだ」

丸山  「じゃあ、モールス信号方式でポンとポーンを組み合わせて会話

     するかい?」

うささぎ「クロクロはモールス信号知らないと思うよ」

丸山  「そうかあ、、じゃあコックリさん方式でやってみよう」

うささぎ「どうやるんですか?」

丸山  「こうやるんだよ。

     クロクロさん、クロクロさん、おたずねいたします。

    『あなたは、まだ水を含んでいるためにうまく声が出ません』

    『はい』ならポンを1回、『いいえ』ならポンを2回言ってください」

クロクロ「ポン」

丸山  「やった通じたぞ。まだ、うまくしゃべれないんだね」

うささぎ「すごいや」

クロクロ「ムニャムニャムニャ、、、、」

うささぎ「あっ、クロクロったら、また眠っちゃった」

丸山  「まだ完全には復活していないんだ。また台の上で乾かそう」

うささぎ「またねぼろけて落ちるかも?」

丸山  「そんなら、この紐で台にくくりつけておこう」

うささぎ「早く乾くよう、護摩をじゃんじゃん焚かなくちゃ」



こうしてうささぎたちは、護摩行を続けました。勢いよく。


パチ! パチ! パチ!


おやっ、クロクロが目をさましたようです。

クロクロ(ムニャムニャ、ここはどこだ? あっ、うささぎたちが木を

     燃やしている。クロクロも混ぜてもらおうっと。

     やや、水を吸っているからうまく動けないや。

     おお、それどころか紐で結わかれちゃってるよ)


パチッ!


クロクロ(うわー、火の粉が飛んでくる。あぶねー。燃えちゃうよー。

     おーい、うささぎー)

うささぎ「何か物音がしたような、、、、?」

クロクロ「パッケンキューキュー(うささぎ、火の粉が飛んでくるよー)」

うささぎ「あれ、クロクロが目を覚ましたみたいだ」

クロクロ「キューキューポンポン(紐を解いてくれ!)」

丸山  「まだ、ちゃんとしゃべれないみたいだね。

     なんて言っているのかな?」

うささぎ「耳と足を絞ってほしいんじゃないかな?」

丸山  「うささぎ、聞いてみてくれ」

うささぎ「では。おたずねいたします。

    『あなたは、耳と足を絞ってほしいと思っています』

    『はい』ならポンを1回、『いいえ』ならポンを2回言ってください」

クロクロ「ポン、ポン」

丸山  「ちがったねー」

クロクロ「キャヒキャヒ、パックー(火の粉で燃えたらどうするんだ!)」

丸山  「体の向きを変えて欲しいのかな?」

うささぎ「かもね。

     おたずねいたします。

    『あなたは、体の向きを変えてほしいと思っています』

    『はい』ならポンを1回、『いいえ』ならポンを2回言ってください」

クロクロ「ポン、ポン」

丸山  「ちがったねー」

クロクロ「ドッカン、パラパラ(何で分かんねえんだ。ボケナス!)」


パチッ!


クロクロ「モヒョモヒュオー(うわー、あぶねー)」

丸山  「もっと火に近づけろって言っているんじゃないかな?」

クロクロ「ピョエー(ひえー)」

うささぎ「おたずねいたします。

    『あなたは、もっと火に近づけてほしいと思っています』

    『はい』ならポンを1回、『いいえ』ならポンを2回言ってください」

クロクロ「ポンポンポンポンポンポン!(ちがう、ちがう、ちがう!)」

うささぎ「そんなに何回もポンを言ったらわかりません。

     もう一度おたずねします。

    『あなたは、もっと火に近づけてほしいと思っています』

    『はい』ならポンを1回、『いいえ』ならポンを2回言ってください」

クロクロ「火の粉が飛んできて危ないって言っているんだよ! なんで

     わかんないんだ、おたんこナス!」

丸山  「やったー、クロクロがちゃんとしゃべれるようになったぞ」

うささぎ「クロクロ、やったね」

丸山  「よかった、よかった」

クロクロ「そんな事どうでもいいから早く紐を解いて降ろしてください」

丸山  「おっと、悪い悪い。

     よいしょっと」

クロクロ「ふー」

うささぎ「なにはともあれクロクロが復活してよかったね」

クロクロ「ああ、乾かしてくれてありがとう。

     でも、まだ体が重いな」

うささぎ「完全に乾くまでには一週間かかかるよ」

クロクロ「だね」

丸山  「じゃあ、みんなで護摩行を続けよう」

                           つづく

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