2005年2月の柿のたねニュース

NPO法人はちくりうす設立の顛末

障害者支援費事業をはじめてみようと柿のたねの有志が集まって初めて会議をもったのは、2004年3月のことだった。

18年目に突入した柿のたねの活動も一つの節目を迎えていた。18年間、障害者と健常者の対等な関係のあり方とは何なのかということを問い続けてきた。この問いに向き合うことは、健常者としての自己に厳しく向き合わざる得ない問いであり、エネルギーを内に内にむけてしまう結果にもなっていた。

無着氏を中心とした障害者の自立に向けた取組みの中で私達は多くのことを学んだ。

それは、どんなに重度の障害をもっていても、必要なサポートの体制があれば地域で一緒に生きていくことができるということであり、普通学級に通う障害を持った子が身につけていく社会性は障害者の自立の第一歩であるという確信である。

無着氏の若い介助者は、無着氏と一緒に買い物した時の地域の人たちの目の冷たさが、付き合い続ける中で変わっていくような経験を重ねる中で、もっとトータルに他の障害者とも付き合いたい、社会や地域が変わっていくような介助体制が必要だと語った。

また、無着氏以外の障害者たちも、親からの自立を望む年齢に達しはじめている。

結論は、安定した、多様な介助体制が必要だということだった。そのことを通して学校、職場、地域の全ステージで障害者が生き生きと生きていくことが出来る社会をつくっていこうということだった。そのために支援費事業に着手することとし柿のたねとは別組織としてNPO法人をたちあげることとした。当然、また、無謀にも収入にならない支援費事業外の学校介助を事業にすることとした。

同時に、柿のたねの再位置付けの議論が始まり、現在、詰めの議論に入っている。

8月に立上げ準備会、10月にNPO法人結成総会を開催した。名称は「はちくりうす」。柿のたねの活動の中から生まれたから、さるかに合戦の助っ人の蜂、栗、臼(馬糞が入っていない)。障害者の自立の助っ人という一応の理由はある。

NPO法人設立の手引書に首っ引きになり、設立総会にこぎつけた後は、またさらにマニュアルに首を埋めてしまうような作業で認証申請。1月22日(金)の午後便で認証書は届けられた。週が明ければ3月中の事業開始はアウトのところだった。その後登記申請、東京都福祉局への事業申請をしたのは1月28日、事業許可が下りたのは2月3日というギリギリの状態だった。

すべて初めてのことであり右往左往することは仕方がないとしても、認証の過程での東京都の字句を含めた細かい指摘、作業期間の不明さは、こうしたことに不慣れで苦慮している市民活動団体の活動の推進を図っているようには思えない。差し迫った日程の中でとにかく認証が必要な立場としては釈然としない思いは持ちながらも従うしかないのだが、認証権をもつ行政との力関係に疑問をもつ経験だった。

事務所は、柿のたねから歩いて3分くらいの2DKのアパートを借りることとした。

現在3月中の開所にむけ詰めの議論の最中である。立上げ資金、事務所の諸備品、ヘルパーの諸規定づくり。いや、大変。でも、いい経験をしている。

(櫻原)

特定非営利活動法人 はちくりうす 設立趣旨書

1985年の国際障害者年をひとつの契機にしながら障害者も健常者も一緒に生きていく社会をつくっていくノーマーライゼイションの考え方は徐々に広がってきています。それは地域で当たり前に生きていきたいという多くの障害者の強い願いの中で獲得されてきたものでした。しかし現状は教育の場ではいまなお分離教育であり、働く場からは疎外され続けています。地域においてもいまだ心のバリアは高く、障害者は家族が抱えこむしかないというような中で、自立した生き方はまだまだ保障されきれてはいません。私たちはこれまでの活動を通して障害者も健常者もともに生きていくことの中から、お互いが成長しあう豊かで充実した社会を目指してきました。誰もが生きやすい地域づくりは障害者と健常者相互のテーマであり、ともに力を合わせて次代につないでいかなければなりません。そのためにはまず障害者が自分で生活のあり方を選択できる充分なサポート体制と、介助者との対等な関係を保障する介護の質を社会的に広げていくことが不可欠です。

その実現のために、お互いが助け合って生きていくことを当たり前とする社会、地域、まちづくりを市民の主体的活動としておこなうため特定非営利活動促進法に基づく法人格を取得することとし、特定非営利活動法人 はちくりうす を設立することといたしました。

活動方針

  1. 私たちは介護事業を通して、障害者の自己決定権を保障し誰もが地域で自立した生活をおくることができる社会を目指していきます。
  2. 利用者のニーズにあったより質の高いサービスを提供するため意識の向上をはかると同時にヘルパーがいきいきと働ける環境整備に取り組みます。
  3. 通常学級に在籍する障害児の教育支援のために、学校、地域との連携を図りながら、学校での付き添い介助をおこない、誰もがいっしょに学び育つ地域の学校を推し進めていきます。
  4. 地域の市民団体・福祉団体などとのネットワーク活動を通して生きた情報の発信、ボランティアの育成・参加をはかりながら、障害者とともに地域での積極的な活動をおこない福祉のまちづくりを目指していきます。
  5. 行政に対し、実践をもとにした提言等を通し連携を図りながら誰もが生きやすい社会を実現していきます。

より多くの方にご賛同いただきご参加くださることを心よりお願いいたします。ぜひともに誰もが安心して生活できる社会の実現を目指しましょう。

2004年9月23日

設立代表者 住所 東京都目黒区鷹番2丁目4番13号

氏名 櫻原雅人 印