ドライフラワー雑記

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諦めないということ

 まだ寒かったころ、
 NHKで<画家になりたかった少女>というドキュメントをやってい  ました

 子供の頃、画家を夢みて、何かの理由ではたせず、
 50年後のまた絵を描きはじめた後藤信子さんの話しです
 彼女、癌にかかって余命いくばくもない
 でも最後の日まで、絵を描かないではいられなかったのです
 彼女は言います

 いい芸術というのは、人の心をうつ誠実さがある。
 有名とか偉大とかということとは無関係だ。

 深い言葉です

 昨年の2月、彼女が意識不明になる2日前、NHKのスタッフを呼ん
 で、ほとんど聞き取れないほどの声でこう言いました
 

 絵が次から次ぎへと浮かぶのに残念だ。
 心残りばかりだけど、死ということはそういうことだと思う。
 私は、楽しく、そして延命装置なんかしないで、すがすがしく逝き
 たいと思う。

 何かを始めるのには、タイミングとかチャンスとか偶然の要素が必
 要なのかもしれない
 彼女の場合、それが50年後だったということなんでしょう
 それに、自分の中に才能が眠っていても、興味がなければ気が付か
 ないしね
 でも、もし自分の中に情熱を傾けることができるものを発見したの
 なら、才能がどうだとか、始めるには遅すぎるかもしれないとか
 考えるのはやめた方がいいと思う
 <心を打つ誠実さ>という言葉を聞いた時
 上手いとかセンスがあるとかと全然違う意味を感じるし
 彼女も言う通り、心残りの人生は途中で終わる
 好きなことは、<人生の区切り>という言葉で諦めることはない

 と
 突然偶然出会った少女は僕に語りかけ
 ふわっと消えた

 

 

壷を覗き込んだら

シャ〜〜ッと威嚇された

と電話があった

相変わらず強気なおかあさん




 

    

 

2001年7月1日

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