たんぽぽは考え続けた
たしか199×年5月×日だった
たんぽぽの匍匐前進を観察したことがあり
その年も雨がふったり晴れたりで
忙しい天気だったような
その時には写真を撮るなんて思いもよらなかったのに
今では写真を撮らないではいられない
ほんに 未来はわからない
一応なんでも食ってみるもんだ
空き地の隣のかしわぎさんは
相変わらずの 草むしり
歯医者さんは こと細かいのです
しかし たんぽぽは減りもせず
いやむしろ いくぶん増えたような
わざわざ訪ねて行くと角が立つので
偶然を女装しながら
僕がどんなにたんぽぽを愛しているか
それとなく言っておきました
5月×日
7時に目が醒めた時には かしわぎさんはいませんでした
道路端は黄色い花で埋めつくされています
この黄色い帯は 今年も蟻の行列の様に
多少の蛇行をしながら かしわぎさんちの横を通りぬけ
緩やかな坂を登りつめて森に消えて行ったのでした
これが今年の匍匐前進
写真撮るのも匍匐前進
|