ドライフラワー雑記

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園芸家12ヶ月


  チェコの大作家、カレル・チャペックがこの本を書いたのは
 1920年代の終わりころ。
 5年くらい前に、知り合いの園芸愛好家にこの本を貰ったのが最初。
 清里の家を捜したらこの本が出てきて
 パラパラめくっていると、
 何ケ所か折り返しのついているところがありました。
 癖で面白い所とか好きな文章があるところうを折り返すのです。
 だから、好きな本は折り返しだらけ、ということになります。

 余談ですが、僕の子供ののどちらかは、小さい頃、気に入ったページ
 の端を破くという癖があって、
 一度、殆どのページが破られた本を発見した時には、、、
 
         何故か、少し、恐かった、、、、、、、、


原種ミニチューリップ


 長くなりますが、折り返しのついたページの一文を紹介します。

  どの園芸書にも<苗は種から育てるにこしたことはない>と書いて
 ある。しかし<自然は 種に関する限り 不思議な癖をもっている>
 とは書いてない。まいた種は一粒もはえないか、全部はえるか、どっ
 ちかだ。これが、つまり、自然の法則なのだ。 

  「ここにはなにか装飾になるような、アザミ類をもってくるとうい
 いだろう例えばアザミかオオヒレアザミか」

  思い付くと、すぐに両方の種を一袋ずつ買ってきて、美しい芽がは
 えるのを楽しみにしている。しばらくたつと移植の時期になる。園芸
 家は見事に育った実生苗を鉢に170本をつくり、歓声をあげて喜
  ぶ。そして、種から育てるのが一番だ、と考える。

  やがて実生苗を地面におろす時期がくる。だが、170本のアザミ
 を、いったいどうしたらいいのか?すこしでもすきまのある地面を、
 あます所なく利用して、それでも130本以上あまっている。あんな
 に丹精して育てたものを、いくらなんでも。ごみ箱に放り込むわけに
 はいかない。

  「どうです、アザミの実生苗があるんですがね、2、3本お宅で
 お植えになりませんか。装飾的でいいですよ」

  隣の主人は実生苗を30本もらい、今、それを持って途方にくれ、
 庭のなかをさかんにあっちこっち歩きまわって、植え場所を捜してい
 る。あとまだ左側と、むこう側のお隣りが残っている、、、、

  神よ、彼等を守りたまえ。彼等が2メートルもある装飾的なアザミ
 に育ちますまで。

  

ゼラニューム

 

 本書は、嫉妬、羨望、独占欲、知ったかぶりを折り込みながら
 マニアックな園芸家の喜怒哀楽を書いたタノシイ本です。
 <中公文庫>



 

なんだっかしらセージ


ワスレナグサ

中学生の頃、<忘れ名草>という映画が長崎にもやってきました。
ドイツの映画で、主演はフェルッチョ・タリアビーニというイタリアのオペラ歌手。
当時、世界最高と言われたテノール歌手です。
僕は少ないおこずかいをはたいて12回も観に行きました。
それ以来、歌、特にテノールが歌うオペラに心を奪われ
いつかは僕も歌いたいと思うようになりました。
その後、東京に引っ越しをして
タリアビーニが来日した折り、
銀座のホテルまで訪ねて行ったことを思い出します。
今でいうなら、心臓バクバクでした。
現在なら会うなんてとても出来なかっただろうに
いい時代だったんでしょうね。




 

    

 

2001年4月29日

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