ドライフラワー雑記

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復活するために

「自分の感受性くらい」

   茨木のりこ

 

ぱさぱさに乾いてゆく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを

友人のせいにはするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを

近親のせいにはするな

なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを

暮らしのせいにはするな

そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を

時代のせいにはするな

わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ

こんな詩を口ずさみながら

突然姿を消した友だちがいた

ボクなんかには計り知れない後悔と反省で

潰れそうになっていたのかもしれないが

今ではしゃーしゃーと元気を取り戻している

中途半端に落ち込むよりも

一層のこと底まで行った方がいい

と言えば

他人の空事であるのは間違いない

抜けだしたい抜けだせない時

独りこっそりと

正しい原点に戻るのはいいことだと思う

何かのせいにして

一時の心の安定を得たとしても

振り向けばすぐ見透かされる

過去完了の自分がいるだけだと


手遅れと思うか

間に合うと思うか

事実は変わらないが気の持ちようが違う

気持は大切だ

ただでさえ多くのことは手遅れ

くよくよばかりだと

未来は確実に減ってしまう


 

 

 

 

2002年5月4日

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