高階杞一詩集

<早く家へ帰りたい>より

返却

どうして人の体からは

きたいなものばかりが出てくるんだろう

うんこやおしっこ

汗やフケや洟や垢や膿やおならや言葉

出しても出しても

またわいてくる

どこに

こんなにつまっているんだろう

まるで汚物のかたまりみたいだな

すべてを吐き出し終えて

ひとは自分の命を終える

ぼくもまた

いつかどこかで糞を出しつくして死ぬのだろう

空に

風船があがっていく

春の土手に座って

子供といっしょにそれを見ながら

思う

死ぬ時は

ちょうどあんな具合に帰っていくのかもしれないな

初めてこの世に出てきた日のように

ぼくらを

元通りの空っぽにして



back to index