「COBRA」
アドバイス・批評ページ

文・図:HG大西

ポーズ・シルエットについて


 まず、【元絵1.2.】と比べて下さい。
 上の画像の方がよりメリハリの利いたシルエットになっていると思います。
 では具体的に...。

・筋肉の変形(伸び・縮み)
 筋肉表現は単にコブや起伏を作ることにあらず。
 筋肉はポーズにより伸びたり縮んだり変形します。しかし、筋肉自体の量は変わりませんので、伸び(ひっ張られ)れば薄く・細く、縮めば太くなったり盛り上がります。
 このメリハリを利かせることにより、立体ならではの量感が出ます。

・コカンの位置・向き
 男フィギュアの場合、コカンの位置や向きはとても大切です。
 (両足に挟まれて窮屈そうだったり、力なく“でろ〜ん”と垂れていたりと、)コカンがうまく表現されていないと、せっかくカッコいいキャラでもナヨナヨした印象になってしまいます。

 

体のライン・流れについて

> ポーズはやや後ろに重心をかけ、両膝とも軽く曲げてゆとりを持たせ精神的に余裕のある感じにしてみました。

 緑色で示した流れを持った板バネが入っているつもりでポーズを造ると、しなやかでいてパワーを秘めたコブラらしい雰囲気が出せると思います。

 O脚にならないよう気を付けてください。
 太ももの筋肉の外側ばかり盛っていくと、どうしてもO脚に見えてしまいます。力強さの表現のための筋肉表現が、O脚に見えては(チャッップリンのような)コミカルな印象を与えてしまい逆効果になってしまいます。
 あと、同じようにヒザが割れた(外側へ開いた)ポーズも力ない印象を与えてしまいますので気を付けなければなりません。

体の動きについて

 可動フィギュアでもないのに“動き?”と思われるかもしれませんが、ちょっとここで、マネキンに扮したパントマイムを思い描いてみてください。
 なぜ人が演じているにもかかわらずマネキンに見えてしまうかといえば、前後の動きが感じられないからです。普段人は一秒とて同じポーズは取っていません。絶えず重心を変えリラックスしたり、何かしらの動作をしています。この人間クサイしぐさや動きを排することでパントマイマーはマネキンになりきっています。

 ということは前後の動きを連想させるエッセンスをフィギュアに盛り込めば、動きのある生き生きとした雰囲気が出せるはずです。
では具体的に...。

・右腕の動き
 今にも左腕を引き抜きサイコガンを抜き放とうとする動きを入れる。
 このポーズの場合はやや上向きの右後方への力を加えれば動きが出ると思います。

・左腕の動き
 右腕に引っぱられる力の反作用で下方左旋回の動きを入れる。

・上半身の動き
 やや上向きの右後方へ旋回・ひねりを加える。

 大事なことは、この前後の時間でポーズが変わっていると感じさせること。
 でないと
 “コブラさん!ちょっとポーズとってくださ〜い。”
といわれてカメラの前でこのポーズのまま何秒かじっとしている印象をあたえてしまう。
 女の子フィギュアの場合、それがかえってグラビア撮影でカメラに向かって微笑んでいる感じが出て、いい場合もあるかもしれませんが、ウソくさくもなりますので、これに関しては個人の好みということで...。

 体の動きの表現とは、時間の表現でもある。

補足


>ここでいくつか質問があります。
>コブラのレオタードのしわの表現法
>髪の毛のディティール表現

 自分の(コブラの)場合、それまで小スケールしか造ったことが無く、初の1/6サイズということで、筋肉表現のみだとどうも殺風景に(間延びしたように)感じて、全身にウソじわをいれましたが、森原さんの場合は筋肉にもメリハリがきちんとあって陰影もしっかり出てますので、しわはなくてもいいのではと思います。
 髪の毛に関しては、原作の絵でもそれほど実線で細かく描かれている訳でもないので、それほどきつい陰影が出るようなモールドは必要無いと思います。撮影の際、ライティングでモールドが飛んでしまう程度の掘りこみでいいと思います。

 

締め

 今回かなり細かい、マニアックな批評になってしまいました。似せることや筋肉表現など模型工作技術は何もいうことがありませんので、その技術をいかんなく発揮できるようなアドバイスにとどめたつもりです。

 今回森原さんの作品をアップしたとたん数々のコメントが寄せられましたが、ほとんど「うまい」という表現でした。私ももちろんそう思いましたが、一瞬何をしているところか(どんなポーズをとっているのか)分かりませんでした。“もったいない”そう思いました。
 ヘビーゲイジ作品への肯定的な感想(色塗りが汚い、アクが強すぎるなどの悪評のほうが多いのですが、)も「筋肉がいい」「しわがいい」といったコメントが大多数です。
 しかし、筋肉やしわはしょせんモールド、お飾り・オマケです。「筋肉がいい」「しわがいい」ということはそれを取ればどうってこと無いと言われかねません。“それだけじゃないのに”というジレンマが常にあります。フィギュアで大事なのは女の子フィギュアなら「かわいい」「きれい」、野郎フィギュアなら「かっこいい」「男クサイ?」ということのはずで、それに注力しているのですが...。
 また、作品の本質や製作者のこだわりは原作の(キャラクターの)雰囲気の再現・抽出やドラマ性を盛り込むことにあります。技術はそれらを表現するために必要であり、向上させるものだと思います。
 今回、森原さんのコブラを通してこんな話が出来てよかったです、感謝。
 では、製作がんばってくださいマセ。

HG大西

 ブーツなどについてはまたの機会に。


製作者 森原さえ さんからのお返事

 こんにちは、大西さん(^^)

 とても詳しいアドバイスをありがとうございました。
 こちらが見落としていたような部分をしっかり指摘してくださっていて勉強になります。

 以下詳細について。

◆筋肉の表現について
 緊張してるのかリラックスしてるのかによっても違ってきますね。それと緊張していても脂肪がついているとボディビルダーのように筋肉の境目にくっきりとみぞが出来たりはしないようで、むしろそれが「打たれ強さ」=「タフ」の表現になるのではと考えました。

◆コカンについて
 この点はまったく見落としておりました(^^;;腰の回転の方向を決定するためにも重要なポイントですよね。さっそく作りなおします。

◆O脚の件と膝の向きについて
 この辺は程度問題ですよね。どちらもやり過ぎると恰好が悪いですが、ポーズの段 階で膝の向きや脚のシルエットは
  ・外向きでO脚気味>男性的でたくましい
  ・内向きで真っ直ぐ(X気味)>女性的でか弱い
 と言う定理はあるように思います。
 実はこのコブラも最初、左脚は膝を伸ばした状態で制作しましたが(良くアニメの 設定資料等にあるような)決めポーズとしては恰好良いんですが、逆にリラックスした感じを出したかった僕にとってはちょっと堅い印象がありましたので、現在のかかとが内側に入りかつ膝を軽く曲げたポーズになりました。

◆動きについて
 これはまったくおっしゃる通りだと思います。パントマイムの例など本当に勉強になります。
 ただ今回の場合「今にもサイコガンを抜こうとしている瞬間」というよりは「さあ どうする? オレにこいつを抜かせたいのか?」と100%の自信を背景に相手に決断を迫る、そんな凄みを表現してみたかったのであえて動きの少ないポーズを選びました。ですからむしろ「写真撮影のように静止している」と見えたのならそれは僕にとっては大成功なわけで(^^;;
 ポーズに関しては今回はこのまま行かせてください/(^^;;
 ただ、それにしても気になるところはありますのでその辺は直します。

 あと総評に関してですが、ポーズの意味が分かりにくいというご指摘には耳が痛いです/(^^;;
 そしてそれにからんで致命的な欠点が一つ。それはこのポーズではサイコガンを抜 いた腕と差し替えられないと言うこと(笑)まったく情けない....。
 それから、原作や制作にあたっての姿勢などについてのお考えにはまったく同感です。そもそも原作を読んで(見て)そのキャラクターを好きになるわけですからそれと違う物を作ってしまっては自分にとっても意味がない(笑)

 長くなってしまいましたが、今回ご指摘いただいた点を修正して再度アップいたし ますので、その時にはまたご指導よろしくお願いしますm(_ _)m

2/22 '99 森原さえ


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