「こっちゃ来ぉい!」
ヨハネはその声にびっくりして、
「オヒェッ!」と声を立てて尻餅をついてしまった。
そうすると天空のどこからか白い馬がパカパカ
と緊張感のない音を立てて現われた。馬上に弓を持って妙に胸を張った男の姿があった。
何故男が胸を張っていたかというと男が冠をかぶっていたからである。一体何の冠かは不明である。
この男が馬に乗って現われたその理由というのは
勝つためだった。
そしてその目的を達成するために馬に鞭を入れた。
すると白い馬は来たときと同じようにパカパカ
と緊張感のない音を立ててその場を離れていった。
誰に勝つのかというと、まぁ、相手は悪者ですね。
反キリスト、反ユダヤ。そしてそれはすなわちローマ帝国のことなんですが、どうも、黙示録の時代の世界観の狭さが感じられるわけです。
躊躇というものを知らない子羊は、 白い馬がヨハネの視界から消える前に第2の封印を切ってしまった。それを受けて、今度は別の動物が大声を出した。
「来なさい!!」
よだれを垂らして白い馬の尻を見ていたヨハネは、またまた驚いてしまった。すこし肌着を濡らしてしまった。
今度は火のような色をした馬が勢いよく走ってきた。しかし勢い余ってかなり遠くまで行ってから止まった。
そして、照れたように後づさって来ると動物の近くで止まった。動物はちょっと咳払いをしてから眉を顰めて、馬上の男に大きな剣を渡した。
男に渡されたのはそれだけではなかった。
なんと地上から平和を奪い取る力が与えられたのである。
何故そんな力が与えられたかというと人間同士に殺し合いをさせるためである。神は人類に殺し合いをさせるわけである。
その事実にヨハネは慄いてあごが外れてしまった。火の色をした馬は登場したとき同じようにすごい勢いでその場を去っていった。
子羊はそんなヨハネに目を向けもせずに、さっさと3番目の封印を解き放った。その時また別の動物が大声を出した。
「こっちに来なさい。」
ヨハネは頭がボーッとなってしまった。今度現われたのは黒い馬であった。この馬は普通に登場してきた。馬に乗った男は秤を手に持っていた。4つの動物のうち1匹がこう言った。「小麦1コイニクスが1デナリオで、大麦3コイニクスがやっぱり1デナリオ(*)。油とワインは手に入らない。食べ物が庶民の手に入らないんだなぁ。これが。」男がそう言うと黒い馬は幽霊のようにスーっと消えた。
ヨハネは腰を抜かしたようにその場に座って次々に現われては消える馬をボーッと見ていた。
子羊はせっかちにさっさと4っつ目の封印を解いた。すると4頭目の動物が大声を出した。例によって「こっちへ来い!」と叫んだのである。ヨハネは動物が出す大声には慣れてしまっていて、驚くことはなかったが、心なしか彼が座っている尻の当たりの地面が濡れているようだった。
動物の声に導かれて現われたのは、浅黄色の馬だった。馬はしっかりとした足取りで登場してきた。その馬に乗っている男は「死」と呼ばれた。「死」には「あの世」と呼ばれる男が従者としてついてきていた。この二人のはとんでもないものが与えられてしまった。それは、剣と飢えと疫病と猛獣を使って全人類の4分の1を殺す力であった。その力を持って、「死」と「あの世」と黒い馬はその場を去って行った。
なんとも大変な力を与えるものである。もし、今の話なら12億人を殺す力を貰ったっていうことですから、東アジアを人々を全部殺せるってことですよね。結構、無茶な話ですよ、これは。
子羊が5番目の封印を切った。ところが今度はどの動物も大声を出さなかった。
ヨハネは『今度大声を出されたら、オシリの周りに水溜まりが出来ちゃう』と思っていたので、胸をなで下ろした。その代わりに、どこからともなく無数の霊魂が祭壇の下に湧き出してきたのだである。--- 祭壇? これまた突然祭壇が現われたものである。まぁ、ビジュアルな予言なんだから、唐突に色んなものが現われてもいいかな。--- ヨハネは幽霊を始めて見たので、やはり尻の周りに水溜まりができてしまった。
この幽霊は神の言葉を信じて神の教えを実行したがために、迫害されて危険分子として殺された人々のものだった。その幽霊たちが神様の周囲にドンドンと詰め寄ってきて恨み言を言い始めた。
「ねぇねぇねぇねぇ、神様ぁ!俺達はあんたの言う通りにやってさ、ひどい目に合って死んじゃったんだけど...、一体、いつになったら俺らの敵を討ってくれるんですかぁ?俺らヅーッと地上の人たちが血祭りに上げられるのを待ってるっていうのに!」
神様は、さすがに神様だけあって少しも動じることもなく、幽霊たちを1列に整列させると、一人一人と握手をしながら、「勝利」というプリントが入った白い服を配ってこう言った。
「あんさんら、そんなわがまま言うたらいかんがな。悪もん退治するのんには、まだちぃと殺された弟子の数が少なすぎるんや。ほやから、あんたらの兄弟がもっとようけ殺されるまで、辛抱したってや。あんじょう頼むわ、ほんに!」
ヨハネは神様の言葉に驚いてしまった。もっともっと多くの人が神様を信じるがゆえに死んで行かなければ神様は動かないというのである。一体なんのために人は神のために死んでいかねばならないのでしょうか?
ヨハネがそんなことを考えているうちに、子羊はさっさと6つ目の封印を解いた。
その時大地震が起こった!
これは本当にとてつのない天変地異ですよね。
地球上のすべての人々は、王様も奴隷も金持ちも貧乏人も商人も政治家もサラリーマンも公務員もプー太郎も、
洞穴や山の岩の隙間に姿を隠してがたがたと震えていた。そして彼らは事もあろうに岩や山に向かってお願いをし始めたのである。
「ひえぇー! 岩でも山でもどっちでもいいから俺達の上に落ちてきてくれ! 俺達を神と子羊から隠してくれ! とうとうあの二人が怒り出したとなると誰にも止められない!」
ヨハネはいつの間にか体育座りでこの光景を見ていたが、 大地震が起きて空が捲れ上がってなくなってしまうのを見ると、ショックのあまり口を開けたまましばらく固まっていた。 しかし、顎のあたりのひんやりした感覚で自分が涎を流しているのに気がついて我に返った。ヨハネがあたりを見渡すと新しい展開になっていた。
大地の4隅
(地動説が唱えられる前に書かれた文書だというのがよく分かる表現ですね。)
に1人づつ天使が立って地上にも海にも風が吹く込まないようにガードしているのが見えた。
そこへ、東の大地の下の方からもう一人の天使が昇ってきた。これは歌手の人が舞台に奈落から上がってくる様を想像すればいいでしょう。
ところで、この天使は最初に「誰か巻き物の封印を解く奴ぁいねぇのか!」と聞いた天使である。
その天使は生きる神の印を持っていた。
これがどんな印なのかはよく分かりませんが、とにかくこの天使が神の全権委任大使だということだと思って間違いないでしょう。
右の絵はイスラエルのとある洞窟に彫られていたもので、この全権委任天使の姿を描いたものと言われている。
地の4隅に立っている天使達は大地と海を破壊する許可 を神から与えられていたが、神の全権委任天使はその4人の天使達を大声で怒鳴りつけた。
「いいかっ!?てめえら!俺達はこれから神さんの弟子達のおでこに マークを着けるからよ。 それが終わるまでは地べたにも海にも触っちゃならねぇぞ。いいなぁ!!」
4人の天使達は少し不満そうだったが口々に「押忍!」
と低い声で答えた。
ヨハネはふと不思議に思い天使に聞いてみた。
「すいません天使さん。ちょっと質問なんですけどいいですか?」
「おお!何でい?言ってみな!」
天使はそう答えた。
「そのマークなんですけど、それって一体なんのマークなんですか?」
「てめえ!そんなこともわからねえのか?なんかまちがってるんじゃねぇか!? いいか! ええっ!!
神さんが本気で怒っちまったのは見ての通りだがよ、
このまま4人の天使が地べたや海を滅茶苦茶にしちまったら、
おめぇ!神さんを信じてる奴もそうでない奴もみんなおっちんじまぁ。
みんな死んじまっちゃぁ困るってぇ訳だ。だからよ。神さんを心底信じてる奴のデコにマークを着けておく訳だ。
そうすりゃ、おめぇ、そいつらは神さんの怒りを受けねぇで済むって仕掛けよ。
わかったか!」
「はい。解りました。」
とヨハネは答えたものの『神さまなら信じる人とそうでない人の区別くらいつかないものかなぁ。』と思わないでもなかった。すると。
「ばか野郎!てめぇ、今、何を思いやがった。神さんは区別できるに決まってるじゃぁねぇか!! だがよ。
実際に地べたと海を滅茶苦茶にするのは天使なんだよ。
こいつらには区別なんかつきゃしねんだ。解りやがったか!ボケナス!」
そう天使に怒鳴られた。
さすが神様の全権委任天使だけあって、人の心の中のお見通しのでようである。これではヨハネも滅多なことは考えられない。
「すいません、天使さん。お見それしました。
ところでそのマークは一体何人くらいの人につけるんですか?」
ヨハネは次の疑問を天使にぶつけた。
「人数かい!そりゃ、おめぇ、イスラエル全部の部族の中から選びに選らんだ144,000人だ。
まぁ、それぞれの部族から何人づつ選んだかも、ここに資料持ってるけどよ。それは省略だ。」
ヨハネが天使と楽しい会話をしているうちに、どこからか人々が沸き出てきた。
それは白い服を着て手に勝利の印である棕櫚の枝を持った大群衆であった。大群衆は玉座と子羊の前に立ち声を揃えて大声で叫んだ。
「救いは玉座に座っている我らが神と子羊のものである。」
するとその場にいたすべての天使(間違いでなければ5人の筈だ)達は神様と24人のじいさんと4匹の動物たちの周りに集まると、神様の座る玉座の前にひれ伏して(ぅぅ、まただ)神様に祈りを捧げてこう言った。
「あぁぁぁぁぁぁぁめん!我らの神に永遠の 賞賛と 栄光と 知恵と 感謝と 栄誉と 勢力と 権威がありますよーに。」
その時、24人のじいさんの17番目のじいさんがヨハネに近くに寄ってきて、ヨハネの顔に自分の顔を近づけてきた。
ヨハネはなにか内緒の話でもあるのかと思い、じじいの方に耳を向けると、じじいはあろうことかヨハネの耳に
カプッと噛み付いた。
ヨハネはびっくりして、光のようなスピードで顔をじじいから離すと、
「なっ!何しやがるんだ。このじじい!」と叫んだ。
じじいは何事もなっかたように、「冗談じゃよ。冗談。そんなに恐い顔をしなさんな。」と言った。そして続けた。
「このぉ〜、白い服を着ている人たちは一体誰なのかいの?一体どっからやって来たのかのぉ。あんた知ってるかい?」
ヨハネはその答えは知らなかったが、もしかしてじじいが答えを知っているのに、
意地悪して自分にそう聞いているのではないかと
邪推して、こう言ってみた。
「それはあなたが知っているでしょう!」
案の定、じじいは、
「ほっほっほっ、そうじゃの。わしが知っている。この人たちは大変な苦境を抜け出した人たちでな、 子羊の血 で自分達の服を洗って真っ白にしたんじゃ。だからのこの人たちは神様の玉座の前にいて、1日中、神殿で働いているんじゃ。 神様はこの人たちと一緒に暮らしておられる。だからのぉ、この人たちは、もう、 飢えにも 渇きにも 暑さにも 寒さにも悩まされることはないんじゃ。 そしてのぉ、子羊さんはこの人達を連れて命の水が湧き出る泉に連れっていってくれるんじゃよ。 神様はのぉ、この人たちの悲しみの涙もすべて拭ってくれるんじゃ。 いい話じゃろ。」
そう説明してくれた。
じじいの長口舌の間に子羊は7つ目、つまり、最後の封印を解いていた。
すると、世界からすべての音が消え30分ほど静寂が支配した。
いつの間にか神様の前に7人の天使が立っていて、その一人一人に
ラッパが一つづつ手渡された。
その後、また別の天使が現われて、祭壇の前に立った。その天使は手に金の香炉を持っていた。この天使が持つ香炉では、
これまで沢山の香が焚かれてきたが、そのすべての香は、聖人の祈りと一緒に玉座の前の黄金の祭壇に捧げられるためのものであり、
金の香炉の中に封じ込められていたのである。
そういう訳で、金の香炉から立ち上る香の煙は、
閉じ込められていた聖人の祈りとともに、天使の手元から神様の前に漂っていった。
それから、天使が香炉の中から香を一つ取り出し、
その上に祭壇の火を乗っけた。香の煙が一層強くなったところで、
天使はその香を地面に投げ捨てた。すると、雷鳴、
声、
稲妻、
そして地震が一斉に地上を襲った。
7つのラッパを持つ7人の天使は、 いよいよ自分達の順番が来たとばかり、ラッパを口に持って行き、 吹き鳴らす準備を万端整えた。
そういう訳で、7つの封印はすべて解き放たれた訳である。 この次は天使がラッパ を吹き鳴らす毎に酷いことが起きちゃうのである。
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