日本で公開された当初、この映画の謳い文句は食人でした。
「極限状態に陥ったらあんたは人を食うか?」
と言った感じのキャッチコピーだったように思います(記憶が不正確ですが)。
しかし、このキャッチコピーはまったく一般受けせず、客入りも悪かったそうです。
端的に言うと、この映画は、冬山に墜落した飛行機の生存者が仲間の死体を食べながらも生き長らえ、最後に救出されるという映画です。
しかし! 寄しくも、本編の最初のほうでJohn
Malkovichが以下のように語っている通り、人を食うかどうかなんてことは、余計なお世話なのです。
"Many people come up to me and say that had
they been there they surely would have died. But it makes no sense.
Because until you are in a situation like that you have no idea how
you behave."
「人々は私によくこう言う。『もし自分があの場に居合わせたなら、確実に死んでいただろう。』 だけど、それは意味のない言葉だ。実際にあのような体験をして見なければ、どんな行動をとるかなど分かるわけがないからだ。」
この映画のテーマは言うまでもなく、タイトル通りに「生きる」です。
さて、この映画のあらすじです。「アンデスの奇跡」と呼ばれた飛行機事故からの生還劇の実話に基づいた映画です。ある冬、南米のウルグアイの学生ラグビーチームが乗るコロンビア行きの貸し切り飛行機がアンデス山脈上空で墜落事故をおこす。幸い(?)乗客の多くは生き残ったが、パイロットは瀕死、無線は壊れている。助けを呼ぼうにも呼べない。
生存者は飛行機の残骸の中に身を寄せ合って、助けを待つ。
ところが、捜索隊は一向に現れず、捜索すら打ち切られてしまう。
その後、食料は底を尽きるは、雪崩に襲われるはで、生存者も減って行く。
結局は、死んだ仲間の肉を食いながら、春先まで生き長らえる。
最後は、生存者のうちの2人が、アンデス山脈を越え人里にたどりついて、全生存者が救助される。
とまぁ、こんな筋です。
で、私が好きなのは上のシーンですね。
この映画は2時間を超える長さなのですが、最初から最後までほとんど雪景色なのです。
最後の20分くらいはEthan Howkeの演じるナンドとJosh
Hamiltonが演じるカネッサがアンデス山脈を越えるシーンですが、ここは一転して岩山の連続なのです。
そう!頂を超えても超えてもまた山なのです。
そして、やっとのことで、緑が溢れかえる大地に降りていき、そこにある湖で喉を潤すシーンです。
ここに来て、見ている私も「ふぇ〜、やっと着いたぁ。」
と緊張が解けるわけです。
そして、この映画の中には余計な感慨や感想を述べるようなシーンは一切ないのです。
この映画の最初と最後は、事故から約20年後、John Malkovichが扮する生存者の一人が語る形式になっているわけですが、最後に彼は言うのです。
"There
is nothing more I can tell you."
これ以上言うことはない!後は自分で考えろっていうことですよね。
生きるとはどういことなのかを。
そして、それに続いて、エンディングテーマであるアヴェ・マリアが聞こえてくる。
また、これが結構ぐっと来るわけです。
そうすると、もう一回、この曲を同じ過程でききたいなぁ。
と思ったりして、最初から見直したりしてしまうのです。
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