『春季限定いちごタルト事件』 米澤穂信 7点
『蒼煌』 黒川博行 7点
『航路』 コニー・ウィリス 7点
『瑠璃の契り』 北森 鴻 8点
『百鬼夜翔 霧が惑う暗夜』 友野 詳 7点
『春季限定いちごタルト事件』 米澤穂信 創元推理文庫
小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
小市民であれ、という主人公のふたりが、何故だか事件に巻き込まれ推理してしまうという顛末を描いた日常系のミステリ。それぞれ面白いんですが、「小市民であれ」という立場がちょっと嫌い。というのも、人より優れた能力を生かそうとしないわけで、ただの負け犬にも見えてしまうような。そのくせちょいと手を出しちゃうし。小市民であれば、それはそれで無視・無関係を決め込まないと、意味が無い。もうちょい自信をもって行動すればそれはそれなりに面白いと思うんですけどね。そういう意味では青春ライノベといったほうが正しいのかもしれません。えばってない探偵は、なんか似合わない。
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『蒼煌』 黒川博行 文藝春秋 
次期補充選挙で芸術院会員の座を狙う日本画家の室生晃人は、対抗馬の稲山健児とともに、現会員らへの接待攻勢に打って出る。師のために奔走する中堅画家や、振り回される家族たち… 絵に魅入られ、美の世界に足を踏み入れながら、名誉のためには手段を選ばない派閥抗争の巣と化した伏魔殿――― 最後に笑うのは果たしてどちらか?
絵画の世界の金まみれのやりとり。こんな本を読んだ日には絵画の世界には絶対に行きたくないと感じること必死でしょう。ええ歳したお爺さんが会員になるために票を集めるために四苦八苦、どれだけ周りを巻き込むことか。そしてその緊張感やどろどろ具合が見事に描かれていたわけです。ラスト、一体どんな展開になるのかと思ったら、上手いまとめかた、落としかただし、楽しめた一冊でした。
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『航路 (上)(下)』 コニー・ウィリス
ヴィレッジ・ブックス 
 認知心理学者のジョアンナは、デンヴァ―の大病院にオフィスを持ち、朝はER、午後は小児科と、臨死体験者の聞き取り調査に奔走する日々。目的は、NDE
(臨死体験)の原因と働きを科学的に解明すること。一方、神経内科医のリチャードは、被験者の脳に臨死体験そっくりの幻覚を誘発する薬物を発見し、擬似 NDEを人為的に引き起こしてNDE中の脳の状態を記録するプロジェクトを立ち上げ、彼女に協力を求める。だが、実験にはトラブルが続出し、やがて被験者が不足する事態に。こうなったら自分でやるしかない。ジョアンナはみずから死を体験しようと決意するが…
臨死体験の謎を解くというストーリー。序盤は結構ダラダラといろんな”語り”と背景の説明でなんともつらかったのですが、中盤からそこそこのスピードを持って読めました。臨死体験の意味とは、何を示しているのかをシミュレーションによって解明しようとするわけですが、事態はやがて主人公自身が臨死体験をしてみることに、という風になり、もどかしい思いがえんえんと続きます。気分は出るんですが、やはり冗長さがきつい。あの分厚さなのに、全部を読了しても、結局、最終的に得るもの(感じるものが)非常にすくなかった気がします。泣ける部分もあったもいえるんですが、やっぱり分厚かった割には…が勝ってしまいます。もっとスピーディーに、もっと軽やかに、な作品を今後期待してみたいと思います。
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『瑠璃の契り』 北森 鴻 文藝春秋 
眼に異変を感じた「冬狐堂」の陶子は飛蚊症、そして網膜剥離の危険性を示唆される。眼を患った目利きとして果たして今後やっていけるのか? そんな状態の陶子のもとにわけありの品が同業者から持ち込まれる。(『倣雛心中』)
騙しあいと駆け引きの骨董業界を舞台とした、冬狐堂の駆け引き4編を収録した短編集。
古美術ミステリのシリーズものの短編集。犯罪系ではなく、古美術を巡った取引を扱った小説です。しょっぱなの話から、いきなりの展開です。目利きが目を負傷、というか病気になるのかどうか、なんいせよそれに絡めた同業者の罠をどう逃れるかという展開。以降、過去の話、相棒の話、元旦那の話と、今回は美術品を扱いながらも、主人公・陶子に非常に近い立場の人たちの話となっています。これは何か今後のシリーズの転機なんだか、たまたまそういう話が続いたのやら。なかなか内面に踏み込んだような作品でした。
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『百鬼夜翔 霧が惑う暗夜』 友野 詳
角川スニーカー文庫 
人間と妖怪の双方を混乱に陥れた魔霧の脅威を阻止するため、「スーリエ・ルージュ」のメンバーは霧の発生源である富士の山頂を目指していた。次々と現れる敵妖怪との苛烈を極めた戦いの最中、洋大たちの行く手をふさぐ意外な敵が現れた!! いまだ日本を覆う魔霧はその闇の中に二重、三重の罠を張り巡らせていたのだ!
霧との戦いの完結編のはずが、中巻になっちゃってます。下巻はもう少し先にでるそうで。で、戦いは広範囲、泥沼状態。すでに人という生き物が全滅しててもおかしくないような書き方だったりするのでは、と思ってしまいます。高名を轟かせる登場人物も多数登場し、また負傷者死者も多数で、ぐちゃぐちゃといってしまえばそれまで、スケールが大きくなりすぎです。完結する様相が見えなかったりもしたりしますが、次ぎでちゃんと終わるのかな…
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