『時に架ける橋』 ロバート・チャールズ・ウィルスン 7点
『BG、あるいは死せるカイニス』 石持浅海 7点
『Q&A』 恩田 陸 7点
『アキハバラ@DEEP』 石田衣良 8点
『試行錯誤』 アントニイ・バークリー 7点

『時に架ける橋』 ロバート・チャールズ・ウィルスン
 創元SF文庫 

 一度は捨てた故郷の町に戻ってきた青年は、人里離れた一軒家で一人暮らしを始めた。それは実に不思議な家だった。長年放置されていたのに内装はぴかぴかで、夜間に洗い物が片づいている。夢の中には奇妙な虫たちが現れ……この”幽霊屋敷”の謎を解こうとするうち、彼は地下に隠された秘密のトンネルを発見する。そこを抜けて出た先は……なんと現在でないニューヨークだった!

 タイムトンネルをくぐって過去の町に行くという話と、タイムトラベルを巡るドンパチの二つの話が微妙なバランスの上に成り立っている作品です。ノスタルジーというか、哀愁漂う話なのに、何故かアクションがあるんで、ほんとアンバランスだったりします。それぞれの話で登場人物が変わっては来るんですが、なんだか、奇妙な感じでした。ラストはそれぞれでそれぞれのエンディングって感じの終わり方でしたが、なんとなく一つもハッピーエンドに感じられなかったりして、やっぱり微妙な作品だったなあと。

『BG、あるいは死せるカイニス』 石持浅海
 東京創元社 BK1-3.gif (240 bytes)

 天文部の合宿の夜、学校で殺害されたわたしの姉。男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた優等生の姉が、どうして? しかも姉は誰かからレイプをされかけたような状態で発見されたが、男が女をレイプするなんて、この世界では滅多にないことなのだ。捜査の過程で次第に浮かび上がってきた「BG」とは果たして何を示す言葉なのか? そして事件は連続殺人へと発展する―――

 女性が変体して男性になるという世界での事件。設定にどうもとらわれすぎている感じがしました。つまり設定の所為で逆に推理というか論理の幅が狭まっている印象が。同時に警察の捜査がまったくといっていいほどいいかげんに感じられ、なんで動機なんかを考えず、手当たり次第怪しむと言う行動をしないんだろうかと。ついでに背景を知っているはずの警察が、読者を惑わす仕掛けに引っかかってたら世話はないです。やはり色々と設定面にこだわりすぎたのかなと思ってやまない作品でした。

『Q&A』 恩田 陸 幻冬社 BK1-3.gif (240 bytes)

 2002年2月11日午後2時過ぎ、都内郊外の大型商業施設において重大死傷事件発生。死者69名、負傷者116名。現場に駆けつけた警官、消防員はなにによって引き起こされた事故(事件)かの原因を特定できず、一種の都市伝説のように扱われることに―――

 全て質問による受け答えのみの小説という変わった構成。よって、登場人物に必要なのは、ただ位置付けのみ。最初はデパートで起こった謎を解明する話なのかと思いきや、予想外な方向に話が流れていき、結果的に一体なんだったんだろうかと、登場人物たちと同じ心境に。小説なんだか、よくわからない感じです。微妙。

『アキハバラ@DEEP』 石田衣良 文藝春秋 BK1-3.gif (240 bytes)

 コスプレ喫茶のアイドル、不潔恐怖症のWebデザイナー、中卒の天才プログラマー…… 病気のおたく青年たちが、裏アキハバラで出会ったとき、ネットの世界に革命を起こすeビジネスが始まった! 彼らが不眠不休で作成した検索サーチエンジン「クルーク」。それを奪われたとき、彼らの誇りをかけたテロが、裏アキハバラを揺るがすのだ。

 どこかに欠陥を持ったおたく青年たちがビジネスを立ち上げ、高度なツールを作ったところ、それを取り上げられ、取り戻すためのテロを行うという話。おたくという人種としては居そうな人々が題材ですが、それに味をつけるかのように欠陥をとりつけ、それを上手く転がしています。ただ、展開やらがどうも『池袋ウエストゲートパーク』と被ってしまう印象を受けてしまいますが、それはそれで面白かったです。ラスト、唐突にして終わっちゃった部分だけがちょっと残念でしたが… なかなか楽しませてもらいました。

『試行錯誤』 アントニイ・バークリー 創元推理文庫 

  トッドハンター氏は、動脈瘤であと数ヶ月の命だと医者から宣告される。しからば、残された人生をいかに有効に使ったらよいか、と友人に相談したところ、驚いたことに、社会に害悪を流す人物を抹殺せよ、という結論で一致した。かくて、彼は見事に殺人を犯すのだが…

 不治の病にかかった男性が「最後に人でも殺そうか」というような話なんですが、そこから予想外な展開に転がっていって非常に楽しめた感じです。真相がわかっていてもそれを信じてもらえない、なんとも逆説的な歯がゆさを感じ取れます。話の流れというよりもアイデアが素晴らしいのかも。そしてエピローグのさらに意外な結末。いやはやお見事でした。