『復活の地 1』 小川一水 7点
『吉永さん家のガーゴイル 5』 田口仙年堂 7点
『チルドレン』 伊坂幸太郎 8点
『ベクフットの虜 クレギオン7』 野尻抱介 8点
『Alice』 川崎康宏 7点

『復活の地 1』 小川一水 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 王紀440年、惑星統一を果たしたレンカ帝国は今まさに星間列強諸国に対峙しようとしていた。だが帝都レンカを襲った大災厄は、一瞬にして国家中枢機能を破壊、市民数十万の生命を奪った。植民地総督府の官僚であったセイオは、亡き上司の意志に従って緊急対策に奔走するが、帝都庁との軋轢、陸軍部隊の不気味な動向のなか、強力な復興組織の必要性を痛感する…

 まず壮大な序章だったなぁというもの。全三冊の一冊目はほんと完全に序章というか、はじまりの出来事だけですよね。扱っているテーマは震災、ほんとリアルです。被災者のリアルさと国家の混乱が克明に描かれています。どっちかというと、政治家に読んで欲しいぐらいのものでした。続きが楽しみであると同時に、なんだか怖いです。

『吉永さん家のガーゴイル 5』 田口仙年堂
 ファミ通文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 御色町に祭りの季節が巡ってきた。南口名物のさくら祭りが始まる。町内会長や吉永家のママ、双葉もウキウキ。そんな折、パパは旧友のマッカチンに再会する。彼は今、北口デパートの支配人で、南口進出を目指し祭りに対抗、一大イベントを行うという。パパは何を思ったか「北口に協力する!」と宣言し、南口贔屓の一家から総スカン。険悪ムードの家族を案じるガーくんだが仲裁するのはやたら難しくって…

 えー、北と南の商店街のお祭り戦争という、ご町内物語です。すでに日常を遥かに凌駕していますが、物語自体はほんとにただのお祭り騒動って感じで気がついたら終わってます。毎回恒例の心温まるエピソードな部分は夫婦愛なのかな? 結果的にはサクラにまつわる部分などが不完全燃焼というか印象薄で終わっちゃってる部分がちょっと残念でしたね。もうちょいそっちで引っ張って欲しかったような。結果的にお祭り騒動のインパクトの所為でしょう。

『チルドレン』 伊坂幸太郎 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 家裁調査官の僕が今回扱うのは万引きした少年。先輩の陣内さんからは適当なアドバイスと芥川龍之介の文庫を渡される。父親を連れて現れた少年だが、なんだか固い印象を受け、面接も思うように行かないが… 表題作の『チルドレン』他、ばかばかしくて格好のよい4作の短編を収録した短編集。

 帯には「短編集のふりをした長編小説です。」と書いていますが、やっぱり独立した短編小説って感じです。ほんの些細なつながりはありますが。さて、感想としては面白かったです。家裁調査官の話と、若者が巻き込まれる騒動の話が交互にありますが、どちらも一風変わっていて、でもそれが爽快な印象を与えてくれる短編で、うきうき読めてしまいます。興味の対象を上手くコントロールしているというところでしょうか。格好よい小説でもあるんです。是非、オススメします。

『ベクフットの虜 クレギオン7』 野尻抱介 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 ミリガン運送の見習い航法士として、ときには危険な業務にも従事するメイだったが、故郷ヴェイスの両親には「安全かつ健全な毎日です」という偽りの手紙を送り続けていた。そんなある日、両親がアルフェッカ号を訪ねてくることになった。しかも次の仕事先は、艦隊消失事件が起こった戒厳令下の惑星ベクフット。あろうことか海賊の潜水艦に拉致されてしまったメイは、無事に両親との再会を果たせるのか…?

 親訪問のサスペンスSFですが、それはほとんどラストのお楽しみ的要素、囚われの身となった状況でのミリガン運送の面々の物語って感じでしょうか。といっても完全にメイが主役、ロイドとマージは出番がありません。水の惑星ベクフットの設定も魅力的ですし、展開も非常に早いもので一気に読めてしまいます。ラストのお楽しみ要素で笑い、同じくラストの「何故?」の解釈による未知なる宇宙という存在の感動を味わいましょう。

『Alice』 川崎康宏 電撃文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 メビウスチルドレンと呼ばれる特殊能力を持ち、超人的な戦闘能力から狂犬と恐れられる少女アリス。そんな彼女は一人の女子高生として、大学進学を目指し、また学費と生活費を稼ぐために、ちんけな探偵事務所でアルバイトをしていた。いつものように、迷い猫を探していたアリス。しかしその猫が大手ハイテク企業の重要機密で…

 ドタバタ探偵物語というか、戦闘能力の高い女の子が戦う小説です。しかし、真骨頂はどっちかというとクマ。探偵事務所の所長がカナダ国籍を認められたグリズリーなわけです。しかも和の心を追求するサムライで、爆笑。笑いとアクションが微妙なバランスで両立しているあたりが上手いなと思いました。この作者って『銃と魔法』の人だったんですね。たしかにあれとかのアイデアは光ってたと思いますから、いい感じです。