『百鬼夜翔 霧が閉じる黄昏』 友野 詳 7点
『幻影のペルセポネ』 黒田研二 7点
『涼宮ハルヒの暴走』 谷川 流 7点
『銀河帝国の弘法も筆の誤り』 田中啓文 7点
『絵が殺した』 黒川博行 8点

『百鬼夜翔 霧が閉じる黄昏』 友野 詳
 角川スニーカー文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 日本を覆い尽くした魔霧の中、襲いかかる妖怪を撃破した洋大が目撃したものは蠎薙剣を手にした律子と、剣に刺され倒れた麦の姿だった。いったい何が起こったのか? 混乱する洋大をあざ笑うかのように霧はその濃さを深めていく――― 魔霧に包まれ、人々が、そして妖怪までもが少しずつ理性を失いはじめ…

 なかなか面白い書き方をしています。みんなでいろんな話を書いて持ち寄って編集するという。さて、ストーリーはかなり前回の短編とリプレイが混ざってます。読んでないとついていけない部分が多々あるかと。しかもまた、いいところで”続く”なのは、次はいつ?

『幻影のペルセポネ』 黒田研二 文藝春秋 BK1-3.gif (240 bytes)

 気鋭のプログラマー各務秀則は、なぜ殺されたのか? 尊敬する先輩の死の謎を解くため、ネット上に構築された電脳空間「惑星ペルセポネ」にログインした来栖正孝は、秀則が「ペルセポネ」で操っていた分身”ノリリン”もまた仮想世界の中で惨殺されていたことを知る。やがて「ペルセポネ」の美少女”メグ”とともに犯人探しを開始した来栖を、虚実の世界を往来する巨大な悪意が襲う!

 オンラインゲームの中の殺人と現実の殺人をごっちゃにしたミステリです。わからなくもない展開なんですが、都合よすぎかなと思える部分が多々。あと、オンラインが舞台だと、簡単に人物入れ替えが可能というのはすぐにわかっちゃうんで、多少おかしいと思っても「でもありえることだし」と思えちゃうと謎が薄れる気分も。それにしても、いくらリアルな生活を楽しむオンラインゲームでもヴァーチャルセックスが可能な時点で参加者の八割以上がそれ目当てと思っちゃうのは間違ってます? まあ、生活を楽しむだけのゲームって時点で目的がなくてチャットって感じなんでしょうが。

『涼宮ハルヒの暴走』 谷川 流 角川スニーカー文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 夏休みに山ほど遊びイベントを設定しようとも、宿敵コンピ研が持ちかけてきた無理無茶無謀な対決に挑もうとも、ハルヒはそれが自身の暴走ゆえとはこれっぽっちも思っていないことは明白だが、いくらなんでもSOS団全員が雪山で遭難している状況を暴走と言わずしてなんと言おう。

 また長門さんが主役のような、短編集。これだけ非日常になっちゃうと、もう回りの人間もだいぶ気がつくんじゃないのかと疑いたくなるような。また、主人公にしてみればいくら命が会っても足りないぐらいのイベント消化率じゃないのか、と。もう、ほとんどノリで進んでるような気がします。特に最後の話なんて、原因とか結局わかってないし、強引にまとめてるような。面白ければなんでもありの世界に突入かな、このまま。

『銀河帝国の弘法も筆の誤り』 田中啓文 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 「ブラックホールの中にホトケはいるかおらぬか、そもさん」 史上初めて傍受された知的生命体からのメッセージは、なぜか敵意むきだしの禅問答であった!? ―――<人類圏>存亡の危機に立ち向かう伝説の高僧・弘法大使の勇姿を描く表題作、大量のゲロとともに銀河を遍歴した男の記録『嘔吐した宇宙飛行士』など、5編を収録したSF短編集。

 うーん、やはりというべきかとんでもない作品集。駄洒落というよりも、B級C級というか、レイトショーというか、そんな感じ。まあそれはそれでくだらなさを楽しめるわけで私的にはOKです。表題作の『銀河帝国の弘法も筆の誤り』が一番好きかも。最後の話なんかもそれなりにいい感じなのにオチが「しょぼ」って感じなのが残念でした。まあ、オススメはしませんけど、ゲテモノ好きは読んでみれば。

『絵が殺した』 黒川博行 創元推理文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 竹の子採りの主婦が発見した白骨死体。身元の確認は難航するかに思われたが、丹後半島の岬の上で消息の絶えていた日本画家とあっさり判明した。背後には過去の贋作事件と贋作グループの存在が見え隠れし、第二、第三の殺人が発生。”ブンと総長”に代わって、名脇役・吉永誠一刑事の活躍を描いた大阪府警捜査一課シリーズ。

 絵画のことに詳しくなくても関西弁のテンポよい会話を聞いていると、非常に心が和みます。そして最後にはちょっとほろりときてしまう結末も。それから作中以下のような会話があります。
> 「おまえ、何のために探偵になった。…まさか社会秩序の維持ではないやろ」
> 「―――違いますね」
> 「正義感か」
> 「でもないみたいです」
> 「ほな、何や」
> 「たぶん、この仕事が好きやからです」
> 「わしといっしょや」

 この会話に非常に心打たれた気がします。やれ興味だの好奇心だので謎だけを解いて、犯罪者の心理に触れようとしない探偵よりかは、全部ひっくるめて仕事として好きという言葉、いいですね。(そういう意味で書いてるのかどうかわかりませんが) オススメの一冊ってことで。