『禅定の弓 鬼籍通覧』 椹野道流 7点
『タリファの子守歌 クレギオン5』 野尻抱介 7点
『夜の果てまで』 盛田隆二 7点
『浪人街外伝』 霞 流一、杉江松恋 8点
『パーカー・パイン登場』 アガサ・クリスティ 7点

『禅定の弓 鬼籍通覧』 椹野道流 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 火災現場からO医科大学法医学教室に運び込まれた老人の死体。単なる焼死と思われていたが、伊月とミチルが解剖したところ、遺体からは煤の吸引も、一酸化炭素中毒の症状も認められなかった…つまり、火災の前に死んでいた! 同じ時期、同地域で連続動物殺害事件が発生。伊月、ミチル、新米刑事の筧の三人組は真相に迫るが…

 動物殺しと放火事件。法医学教室の日常物語でもあり、いつものらそれにオカルティックな内容が含まれるのですが、今回それはなし。それよりかはミステリ側に大きく寄った一冊でした。といっても謎を追いかけるわけではなく、日常。気が付いたら警察へ連絡という感じんなのです。シリーズとしては落ち着いてきているんでしょう。ミチルさんの活躍をもっと期待したいのですが、どうやら「男」メインだから… まあ、面白かったですけどね。

『タリファの子守歌 クレギオン5』 野尻抱介 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 自転によって明暗境界線に凄まじい砂嵐が発生する、苛酷な惑星タリファ。そこでは、希少宝石タリファ・オパールの採掘を夢みる男たちが、遊牧民のような生活を送っていた。この辺境の星を訪れたミリガン運送の面々だったが、マージはひとり、ある追憶に浸っていた。彼女を優秀なパイロットに育てあげたかつての教官ホセが、タリファにいるという噂を聞いたのだ。だが、恩師との再会は意外なものだった…

 砂嵐吹き荒れる惑星を舞台に、パイロットのマージを主役に沿えたストーリー。あとがきにある自動操縦の宇宙船で、パイロットの力量を測るには、顔スティックな環境、自動では乗り越えられない環境が必要というのは、実に理にかなっていると同時に、SFの世界では、そういえば自動操縦があたりまえだよなと感心してみたり。ということでそんなカオスな環境での技術を見せ付けられるのです。しかも、同時に女性としての力量も試され、その落差を見せ付けられて読者は失笑をこぼすという、うまいなぁ。結構その、違うジャンルの知識を問われるという形の話は好きだったりします。面白いから。

『夜の果てまで』 盛田隆二 角川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 二年前の秋からつきあっていた女の子から突然の別れ話をされた春、俊介は偶然暖簾をくぐったラーメン屋で、ひそかに「Mさん」と呼んでいる女性と遭遇した。彼女は、俊介がバイトをしている北大近くのコンビニに、いつも土曜日の夜十一時過ぎにやってきては、必ずチョコレートの「M&M」をひとつだけ万引きしていくのだった… 彼女の名前は涌井裕里子。俊介より一回りも年上だった―――

 恋愛小説、でもこれってすごく都合のいい男女の物語なんじゃないの、と思ってみたり。後妻の人妻と、その子どもの家庭教師をしている男性が恋に落ち、過ごす一年間が描かれているわけで、しかも出会いから、始まりまでという、「これから」という直前までの物語だったります。一途なんだか、肉欲におぼれたんだか、微妙なんですが、ほんと自分たちだけって感じで、周りの迷惑省みずな部分がイヤですね。というか、回りがかわいそう。結局そんなやるせなさの残る感想を抱きましたが、世間的にはどうなんでしょうね?

『浪人街外伝』 霞 流一、杉江松恋 宝島社文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 退廃した江戸末期に起きた猟奇事件! 二重密室の中で首が切られ逆さ貼り付けとなっていた死体は一体誰のものなのか?(『お新捕物控 幻夏逆蛇蔵』)
 喧嘩屋・赤牛の壮絶なる生き様を描いた一作。(『SHIDO 赤牛血風録』)

 霞さんの作品は、いつもどおりの奇抜トリック。それを時代小説の世界でやちゃうという。ノリはいつもと一緒だけど。だからこそ時代小説なのに読みやすいし面白かったです。しかし、動物の切腹ってなんだろなー 杉江さんの作品はふつうにチャンバラ風。でも結構読みやすく面白かったですよ。外伝じゃない『浪人街』も興味が出たんですが、舞台だけですかね?

『パーカー・パイン登場』 アガサ・クリスティ 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 「あなたは幸せ? でないならパーカー・パイン氏に相談を」こんな奇妙な新聞広告に誘われて、依頼人が次々とパイン氏の事務所を訪れる。夫の浮気に悩む人妻、人生に退屈した退役軍人、平凡な生活を送るサラリーマン、大金を使いたがる大金持ちの婦人―――人々の悩みに答える、パイン氏の奇想天外なサービスとは?

 幸せでない人に、幸せを与える信用詐欺師パーカー・パイン。前半は事務所から動かず、適材適所な人材を派遣することで、持ち込まれた依頼をこなしていく話。後半は、パーカー・パイン氏本人が旅先で出会った事件を扱っていますが、私は断然前半が好きですね。本人はちょっと経験豊富な普通の人であり、探偵なんてつとまらないだろうし、あくまで経験と統計による推測を導くだけじゃないですか。それなら人を上手く使い、幸せを配るという上手さが非常によいのですが… なんにせよ結構楽しませてもらった一冊でした。