『届かぬ想い』 蘇部健一 7点
『ドゥームズデイ・ブック』 コニー・ウィリス 8点
『名探偵 木更津悠也』 麻耶雄嵩 7点
『イリヤの空、UFOの夏 その1』 秋山瑞人 7点
『イリヤの空、UFOの夏 その2』 秋山瑞人 8点

『届かぬ想い』 蘇部健一 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 小説家を夢見ている小早川嗣利は、美しい妻と可愛い娘に囲まれて幸せに暮らしていた。だが、度重なる不幸が2人の娘を奪い…。意気消沈する嗣利は、幸せな家庭を取り戻せる方法があると知り試すが、思いもよらない結末が?!

 ちょっと読みにくい作品を読んでいたため、こちらはスラスラと読めました。あらすじだけ読めば、かわいそうな話なのかなと思いきや、実は……話という。しかも中盤、展開が完全に読めてしまうあたりがなんともいえないですよね。わざとわかるように書いているともとれますが。で、どんどんと進んで、トドカヌオモイで終わるあたりが爆笑、かも。しかし、アレの設定とか論理とかがまったく出てこないのも、なんでもありの世界ですよね。まあ、あっさりしてるからいいんですけどね。

『ドゥームズデイ・ブック(上下)』 コニー・ウィリス
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes) BK1-3.gif (240 bytes)

 歴史研究者の長年の夢がついに実現した。過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代を直接観察することができるようになったのだ。オックスフォード大学史学部の女子学生キヴリンは、実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。だが、彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった… 一方未来でも、彼女の送り出し先を計算しようとした技術者が倒れ、未知の感染病が蔓延しだすが…

 ぐぅっときました。未来パートと過去パートが交互に語られるんですが、ちょうどいい展開になったら、場面が切り替わって、なんていうか読書欲をそそります。序盤、未来のトラブルで話を引っ張り、中盤、真実が明らかになり、怒涛の後半。非常なシーンなんかも淡々と書かれておりシンプルな話なんですが、展開とかが上手く、淡々さが味にもなってる感じが。最後も、これだけ盛り上げておきながらそんな終わりかたなのってぐらいあっさりなんですが、それがまた結末を引き立ててるというか、なんというか。登場人物たちも魅力でしたしね。とくにコリン君、ナイスキャラでした。上下巻で分厚いんですが、その分厚さをさほど感じることなく、結構読み込むことが出来た一冊でした。

『名探偵 木更津悠也』 麻耶雄嵩 カッパノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された… 柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンの意味するものは?

 名探偵は格好いいという話かも。『翼ある闇』でおなじみの木更津&香月の短編集ですが、もう、なんていうか、香月の木更津への愛が感じられますよ、いろいろと。名探偵が名探偵であるための惜しみないフォローの数々、そしてその名探偵のセリフに感激する香月、うわぁ… ミステリとしては突飛なトリックなどはなく、非常にシンプルで本格。もうちょい派手で奇抜でも良かったんですけどね。

『イリヤの空、UFOの夏 その1』 秋山瑞人 電撃文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 「6月24日は全世界的にUFOの日」
 新聞部部長・水前寺邦博の発言から浅羽直之の「UFOの夏」は始まった。当然のように夏休みはUFOが出るという裏山での張り込みに消費され、その最後の夜、浅羽はせめてもの想い出に学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにプールには先客がいて、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野可奈」と名乗った…

 パラレルな世界を舞台とした、ボーイ・ミーツ・ガールな小説、かな。キャラが見事に立ってます。ヘンな先輩にヘンな転校生、ちょっとヘンな主人公と、まともな同級生。とても中学生と思えない行動力と好奇心で騒動に巻き込まれるというか、引き起こすさまは見事。それだけだと、どこにでもある学園モノのライトノベルなんですが、どうも背景というか世界観が練られてそうなところが魅力かなと。楽しみです。

『イリヤの空、UFOの夏 その2』 秋山瑞人 電撃文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 浅羽直之と伊里野可奈の初めてのデータ。それを尾行する者が、一人、二人、三人…当然のことながらただですむわけがなく、実際に”ただではないこと”が起こり―――

 キャラ形成はほぼ完了ですね。その上で軍事関連の裏方の事象が徐々に現れ始めた感じ。一方で軍事、一方で学園ラブコメ、一方で暴走っぷりを展開しています。今後、重たい話になっていきそうではありますが、面白そうでもあります。ただ、なんとなく、高橋しんさんの某漫画とネタがかぶってそうな感じがすごいしますが、どうなんでしょうか…?