『いつか、ふたりは二匹』 西澤保彦 7点
『D-ブリッジ・テープ』 沙藤一樹 6点
『ボートの三人男』 ジェローム・K・ジェローム 7点
『ドスコイ警備保障』 室積 光 8点
『大相撲殺人事件』 小森健太朗 7点

『いつか、ふたりは二匹』 西澤保彦 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 菅野智己は母が再婚した四年生の頃、突然、眠りに就くことで猫の身体に乗り移れるという不思議な能力を持った。身体を借りている猫にジェニイという名前をつけ、巨大なセントバーナード犬のピーターと友達になった智己が六年生のとき、クラスメイトを含め三人の女子児童が襲撃されるという事件が発生し、一人が重態に。昨年秋に、同じく町内で起きた女子児童誘拐未遂事件の犯人と同一人物の仕業のようだ。被害者の共通点は、智己の義理の姉久美子さんが家庭教師だということ! 智己はジェニイになって、ピーターとともに事件を調べることにした。

 眠っている間だけ猫になれる子供が、近所でおこった事件(?)を追いかけるもの。猫の視点で描かれているところがミソかな。あんまり猫が人の周りをうろうろうろうろしてたら怪しいだろう、というツッコミはあるものの、子供向けではそこそこの冒険談に仕上がっているかなとも。ただやっぱり物足りなさがありました。

『D-ブリッジ・テープ』 沙藤一樹 角川ホラー文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 近未来、ゴミに溢れた横浜ベイブリッジで少年の死体と一本のカセットテープが発見された。いま、再開発計画に予算を落とそうと、会議室に集まる人々の前でそのテープが再生されようとしていた。耳障りな雑音に続いて、犬に似た息遣いと少年の声。会議室で大人たちの空虚な会話が続くなか、テープには彼の凄絶な告白が…

 エグイ印象がまず第一。ゴミ捨て場に捨てられた「人間」が生きた生き様が語られるというもので、主に食べ物の描写が残酷かつ気持ち悪くなるというもの。もう一つの視点が、その生き様を聞いている大人たち。徹底して無関心なところは、まさにそうなんだろうなと思えるんですが、それだけ。結局なんだったのかわからないまま終わってしまいました。残酷話? しかもこの作品が絶賛されてホラー大賞とっているのも不思議だったりします。どう読むべきなんだろうか…?

『ボートの三人男』 ジェローム・K・ジェローム
 中公文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 気鬱にとりつかれた三人の紳士が犬をお伴に、テムズ河をボートで漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍妙な河の旅が続く。

 男三人と犬一匹がテムズ河にボートを浮かべて旅をすると言う話。ただ、その旅が物語の中心というわけでもなく、これまで経験した珍事件などが回想として連続的に語られる感じ。なので、話と話の区切り目がちょっとはっきりしないところも。ユーモアさがちょっと伝わりにくいところが何箇所もあったりしたんですが、犬に関しては失笑・爆笑ありでした。時代が古いので、わからない部分があったのは残念かもしれません。

『ドスコイ警備保障』 室積 光 アーティストハウス BK1-3.gif (240 bytes)

 芸能プロダクションの社長を務める敦子の元に、同級生の秀明から南ノ峰親方に会って欲しいという連絡があった。親方が何の用かと出向いてみれば、引退後の力士のための再就職の場として警備会社を設立する、ついてはその手伝いをしてくれないかというもの。戸惑いはあったものの、力士による警備会社「ドスコイ警備保障」がスタート。果たして、彼らの活躍は…?

 力士引退後の就職のための警備会社設立を行い、その警備会社でのエピソードを綴ったエンタメ小説。着眼点が面白いですよね。引退力士がちょっとにらんだだけで、賊が泡を食う様子など「まさに」と言う感じですし。で、それがいろんな風に成長していく様が描かれてて、上手いなあと。終盤はこれまで活躍してきた人たちのまとめみたいに、ちょっと駆け足で終わってしまいましたが、非常に楽しめた一冊でした。

『大相撲殺人事件』 小森健太朗 ハルキノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 由緒ある歴史を誇る相撲部屋・千代楽部屋を訪れたアメリカの青年・マーク。ひょんなことから力士となるべく部屋住みの身となった彼だったが、そんな彼を待っていたのは相撲界に吹き荒れる殺戮の嵐! 立ち会った瞬間爆発する力士の身体、頭のない前頭の惨殺死体、連日順々に殺されていく対戦力士、女性が上がれないはずの土俵上に生じた密室状態、身体のパーツを集めるかのごとく発生する連続殺人、洋館に集まった力士を襲う見立て殺人… マークの名推理が土俵の上に冴えわたる!

 相撲小説が何故か連続で。で、こっちはあんまり有名じゃない相撲部屋に、大学と間違えて弟子入りしたアメリカ人を中心(探偵役)として相撲部屋を舞台にした短編ミステリ集。結構ありえない展開でバカっぽいですが、そのバカっぽさが結構面白かったりします。しかし、仮にも格闘技のプロなのに、力士はやたらと殺されます。そんなにもろいのかというぐらいに。最後の話があまりにも突拍子もない設定を表に出すだけ出して終わっちゃうんですが、さすがにこれはなぁと。まあ、小森作品だし、この程度ならOKかもしれませんが。