『鍵』 乃南アサ 7点
『ロマンス小説の七日間』 三浦しをん 7点
『針』 浅暮三文 7点
『犬は勘定に入れません
 あるいは消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』 コニー・ウィリス 9点
『吉永さん家のガーゴイル』 田口仙年堂 7点

『鍵』 乃南アサ 講談社文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 高校二年生の麻里子のカバンに、知らぬ間に一つの鍵が押し込められた――― 近所で連続して起きる通り魔事件は、ついに殺人にまでエスカレート。父も母もいなくなた障害をもつ女子高生と、その面倒を見なければいけなくなった兄や姉との心の通じ合いをも見事に描いたミステリ。

 家族の葛藤とあり方を中心に、ミステリと言う味付けをした作品。両親が死んで兄弟だけが残ったときのやるせなさ、行き場のない思いなどは上手く描かれていると思います。ただ、ミステリ部分がなんだか強引なのがちょっと。ついでに時間の流れもとても早く、あっという間の展開は、ミステリには厳しく、家族関係にはやさしいという、バランスが難しかったりするかなとも。どういう風に読むかで、面白いか面白くないかはわかれる作品だと思います。

『ロマンス小説の七日間』 三浦しをん 角川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする、二十八歳の独身女性。ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を依頼され、歯も浮きまくる翻訳に奮闘しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。不可解な彼の言動に困惑するあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちを小説の主人公たちにぶつけてしまう。原作を離れ、どんどん創作されるストーリー。現実は小説に、小説は現実に、二つの物語は互いに影響を及ぼし…

 微妙。恋愛小説なんですが、ファンタジーっぽい話と現実が交互に展開され、またなんともいえない展開(日常)だったりするのであんまり刺激がないわけです。どっちかというとファンタジーのほうが面白い感じもありますから。んで、ある種きれいに終わっちゃって、えへへという雰囲気が。安心して読めるといえばそうなんですが、もうちょっと、刺激が欲しかったなあと。

『針』 浅暮三文 早川書房 BK1-3.gif (240 bytes)

 日本企業が出資し、アフリカの密林を切り拓いてコーヒープラントを作ろうとしている現場で、現地の作業員が失踪するという事件が起こった。捜索を続けるにつれ、事件は奇怪な様相を呈しはじめる。一方東京では、ある男が原因不明の皮膚感覚の亢進に見舞われていた。手が触れる道具、肌に当たる風、すべてのものがこれまでにない感覚を伝えてくる。そして一見無関係に見える両者には実は奇妙な共通点があった!?

 五感の触覚を扱った作品で、ある日を境に感覚として微妙な部分から、ものの思いまで感じ取れてる気分になった男の話。あいかわらずディープでフェチです。男なんて名称ほとんどかかれてないし。で、序盤はまともなんですが、異常触覚に目覚めてからの転げ落ちるさまといったら… 人の本能の快感を求める部分とかわかるだけに、読んでると自分もだんだん変態の気持ちになっていってヤバイです。もう、ひしひしと「ああしたい」とか考えちゃいますから。文章に流されないように読みましょう。

『犬は勘定に入れません
 あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』
 コニー・ウィリス 早川書房 BK1-3.gif (240 bytes)

 オックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の再建計画の資料集めに毎日を送っていた。だが、計画の責任者・レイディ・シュラプネルの命令で、20世紀と21世紀を時間旅行で行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、ついには過労で倒れてしまった。シュラプネルから、大聖堂にあったはずの「主教の鳥株」という花瓶をぜひとも探し出せと言われていたのだ。二週間の絶対安静を言い渡されたものの、シュラプネルのいる時代にいては、ゆっくり休めるはずもない。史学部のダンワージー教授は、ネッドをのんびりできるにちがいない、19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。ところが、時間旅行でぼけてぼんやりしていたせいで、まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…

 わかりやすく言えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とミステリが合わさった感じです。冒頭、いきなり鳥株(花瓶のこと?)をさがすシーンから始まるものの、いきなりタイムラグ(時間旅行ボケ)となった主人公が休暇のために訪れるのヴィクトリア朝の時代。そこで、くっついてはいけない男女がくっつきそうになるのを必死に食いとどめ、なおかつ女性の旦那となる相手を探すという話。もちろんタイトルにもある犬は、非常に美味しい立場で登場するし、猫も登場します。タイムトラベル+ミステリ+ユーモア+恋愛+動物とボリュームたくさんで面白さも十分でした。ちょっと分厚くてしんどい部分もありますが。満足の一冊です。尚、『犬は勘定に入れません』というのは、古典であるジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』という作品の副題から取ってきているそうです。そっちも読んでみたくなりました。

『吉永さん家のガーゴイル』 田口仙年堂 ファミ通文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 商店街の福引で大当たり! 吉永さん家の双葉ちゃんがゲットしたのは、前代未聞の生き物だった!? 犬の石像のように見えるソレは、突然喋りだすわ、石より硬いわ、あげく自分を「吉永家の門番だ」というわで、兄の和己くんはポカーン状態。双葉ちゃんは、提供した店に突っ返そうとアンティーク屋に乗り込むが…

 福引の景品でガーゴイルなんぞゲットしてしまった家族による、日常。新聞配達の人がガーゴイルにびびったり、隣のうちに入った泥棒を退治したり、結構のほほんとしてて、でそれなりに面白いかなと。ほとんどがノリで進んでいっちゃいますが。なんで安心して読めますが、それ以上は期待できない部分がちょっと残念かなとも思ったりしました。