『殺しはエレキテル』 芦辺 拓 7点
『極限推理コロシアム』 矢野龍王 7点
『光の帝国 常野物語』 恩田 陸 7点
『ST 黄の調査ファイル』 今野 敏 7点
『図書館の水脈』 竹内 真 7点

『殺しはエレキテル』 芦辺 拓 カッパノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 田舎から学問のため出てきた若者・箕四郎が大坂ででくわしたのは、美少女・真知と阿蘭陀渡来のエレキテルをめぐる殺人だった… 謎解きに乗り出したのは、蘭学者の曇斎先生こと橋本宗吉。だが、その前に立ちふさがったのは意外な人物だった。続いて起きた事件も、異国趣味たっぷり、不可能興味どっさりの奇々怪々なものばかり。なぜかいつも無実の人間をつかまえる奉行所に対し、曇斎先生と箕四郎・真知ら町人探偵団が真相解明に走る!

 江戸時代の大阪を舞台とした捕り物帖。といっても、探偵は医者と先生で、どちらかというと舶来品がらみの事件を解くというもの。それなりのトリックはありますが、やはりその時代において奇抜という感じがあり、悪く言えばご都合主義、時代の雰囲気を壊してるなと思う部分も。短篇で、結構事件中心に動いているため淡々としている部分もあり、トリックを楽しむのにはいいかもしれませんが、物語としては面白みっていうのが少なかったかなと思います。

『極限推理コロシアム』 矢野龍王 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 二つの館に強制的に集められた七人の「プレイヤー」たちに「主催者」は命じる―――「今から起きる殺人事件の犯人を当てよ」―――もちろん、被害者もプレイヤーの中から選ばれる。二つの館で起きる事件を、互いにもう一つの館より早く、解決しなければならないのだ。不正解の代償は「死」!

 ほとんどサバイバー。気が付くと、なんだかわからない建物に7人の見ず知らずの人間が拉致。謎の主催者から告げられたのは、そこで殺人が起こるから、犯人見つけてね、というもの。しかも、建物はもう一つあってそちらも同じ状況で、その二箇所の事件を解け、と。リアルな推理ゲーム。こういうリアルさがかけた設定は好きだし、序盤の盛り上がりも好みなんですが、後半になるにしたがって「推理」なんて関係ないじゃんという気分に。もう、「勘」というか、犯人が特定できるような情報が皆無で、行き当たりばったりな行動は何を考えてるんだろうか、と思えるものばかり。結末も、すごい勘というか運というか… 主催者の意図もなんにもないし… で、ドラマ化で、もしかしたら続きものなんでしょ? なんでなのかが微妙です。

『光の帝国 常野物語』 恩田 陸 集英社 BK1-3.gif (240 bytes)

 穏やかで、知的で、権力への志向を持たずにひっそりと生きる人々。時を超えてよみがえる風景。彼らが生かされている場所と帰るべきところは? 不思議な能力を持つある一族の物語。

 それぞれで完全に完結している短編は、幻想があって面白いと思います。一話目の『大きな引出し』、二話目の『二つの茶碗』なんかは結構好みですし。ただ、全体の大きなつながりが見えてくると、ややこしくなってしまって、逆にわかりにくいかなと思える部分も。主要登場人物が特におらず、時系列もバラバラなのが原因かなという気もしますが。なので、連作としてみればまとまりがない、個々の短編としては面白いという微妙な評価ですね。

『ST 黄の調査ファイル』 今野 敏 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 宗教団体「苦楽苑」の若者信者四人が突然の集団自殺を遂げた。検死官はカルト的な自殺と断定したが、事件現場の不自然さを疑ったSTは調査を始める。少しずつ明らかになる事件の裏には、教団幹部の対立や自殺に加わらなかったもうひとりの存在が浮上。STメンバー僧侶の山吹が禅を通して現代人の心の闇に迫る!

 宗教関連の集団自殺を扱った今回の「黄」は当然のごとく、僧侶山吹が主役。宗教に関連する問答なんかも面白いですし、人間観察も、いくつもの視点の意見がうならせてくれます。面白かったです。

『図書館の水脈』 竹内 真 メディアファクトリー BK1-3.gif (240 bytes)

 学生時代に図書館で暮らし、トンデモ本を読み漁ったことのある売れない作家。本好きで、小説に描かれた世界を旅したくなる若いカップルのナズナとワタル。二つの別々の物語は、『海辺のカフカ』という物語に導かれて一つの流れとなる。そこには光り輝く水脈があった。

 小説の舞台を追いかけて、四国へ旅に出たカップルと作家の出会いなどが描かれた、一種の青春小説ですが、それよりも面白い小説紹介って感じの一冊でした。村上春樹を中心にして海外の小説など、どちらかというと青春系じゃないかなと思われる小説が全48作も紹介されており、中には読んでみたいなと思う作品も当然ありました。そういった部分では楽しめましたが、物語としてはちょっと頼りないと言うか、なんというか… 小説でありガイド本でした。