『ふたりジャネット』 テリー・ビッスン 7点
『四季 冬』 森 博嗣 7点
『千尋に闇(上)(下)』 ロバート・ゴダード 8点
『さよなら妖精』 米澤穂信 8点
『闇のなかの赤い馬』 竹本健治 7点

『ふたりジャネット』 テリー・ビッスン 河出書房新社 BK1-3.gif (240 bytes)

 サリンジャー、ピンチョンら有名作家たちが続々と田舎町に引っ越してきた? 英国が船みたいに動きはじめた? 万能中国人がヘンテコな数式で事件を解決? そんなばかな話ってある? 奇想とユーモアとペーソスに満ちた摩訶不思議な短編集。

 うーん、高度なSFというか想像が追いつきません。なにが、どう面白いのか、センスを感じ取れないのです。奇想に満ち溢れすぎているというか。けど、終盤思った以上に楽しめました。面白いと感じたのは『熊が火を発見する』、『冥界飛行士』、それから最後ウーシリーズ3作。突拍子のなさ、奇抜さがずば抜けており、どこが笑いどころなのかつかめない作品も多いのですが、そこに漂うユーモア感などをなんとか感じられれば、面白いのかなと思えます。とくにウーシリーズは楽しめました。ほの悲しいエピソードなんかもいくつかあり、幅があったりするのも、ゆっくりと読むのにはいいのですが、連続して読んでいると思考の置き換えができないというか。そうそう、SFというよりもファンタジーって感じを受けた一冊でした。

『四季 冬』 森 博嗣 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 天才科学者真賀田四季の孤独。両親殺害。妃真加島の事件、失踪、そしてその後の軌跡。彼女から見れば、止まっているに等しい人間の時間。誰にも理解されることなく、誰の理解を求めることもなく生きてきた、超絶した孤独の存在。彼女の心の奥底に潜んでいたものは何か…?

 今まで以上にストーリのない一冊。ほとんどが四季の思考というべき本で、流れ行く天才の思考に翻弄されるというか、独特の考え方にうならせられると言うか。完結篇でありながらも、ストーリーと言うものがないため、よくわからないという感じで、もはやファンブックという気もします。行き着くところまで行き着いて終わったなとも。まさかあっちの作品に連結するってことは、ないですよね?

『千尋の闇(上)(下)』 ロバート・ゴダード
 創元推理文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 一九七七年の春、元歴史教師のマーチンは、悪友からの誘いに乗ってポルトガル領マデイラへ気晴らしの旅に出た。到着早々、友人の後援者である実業家に招かれた彼は、半世紀以上前に謎めいた失脚を遂げた、ある青年政治家にまつわる奇妙な逸話を聞かされることになったが…

 一人の男性の回顧録と現実の記録から織りなされる謎を追いかけるというストーリー。とりあえず読ませる、ぐいぐいと引き込まれました。回顧録の中で描かれる裏切りの物語。その謎を現在追いかけ、そこに襲い掛かる影。二転三転し、物語はつながり、予想していない展開を迎えた結末には、どことなく哀愁が漂っていました。なかなか面白かったです。

『さよなら妖精』 米澤穂信 東京創元社 BK1-3.gif (240 bytes)

 一九九一年四月。雨やどりをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたち街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、「哲学的意味がありますか?」、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに―――

 出会いの小説、青春小説であると思います。各所にちりばめられた日常のささいな謎はあるものの、それらはキャラクターたちの位置関係を図るための小道具的な役割を感じさせ、それよりも、もっと面白いと感じたのが、異国の少女との出会いによる人間関係の成り立ち、心理。帰国した彼女はどこに住んでいたのか、ということが大きな題目であり、それを推理するために過去を振り返る。しかし、振り返ってみれば楽しかった思い出という感じではないでしょうか。そして待ち受ける結果にほろりとしてしまい、タイトルに大きな意味があるのだなと。これまでの『氷菓』のシリーズとキャラクターは通じるものがありますが、こちらはすこし思い話であり、一味違った読了感を与えてくれたと思います。

『闇のなかの赤い馬』 竹本健治 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 聖ミレイユ学園で神の怒りとしか思えない悲劇があいついだ。ウォーレン神父は校庭の真中で落雷にあって焼け死に、さらにベルイマン神父が密室とかしたサンルームで、人体自然発火としか考えられない無残な焼死体となって発見されたのだ。「汎虚学研究会」はみんなからキョガクの連中とよばれる、ちょっと浮世離れしたメンバー四人で構成されている。部長は僕、室井環。中でも好奇心のかたまり、フクスケは女ホームズと化し、ワトソン役に僕を指名した。ベルイマン神父の死は殺人に違いないと言うのだ。僕は夜ごと見る、狂った赤い馬の悪夢でそれどころじゃないのだが…

 学園の事件、首を突っ込む好奇心あふれる少年少女、といった図式で、そこに竹本さんの暗く狂気なせかいがちらりと垣間見えるという感じでしょうか。ミステリの謎に固執せず、流れるままに話が展開し、ちょっとあっさりしてるなという印象はうけますが、最後の最後の推理にはビックリさせられるかも。現実離れしているといってしまえばそれまでかもしれませんが。そういった意味では、ちょっと昔の学園ものという部分も感じられるかもしれません。