『無限の殺意』 アレクサンドラ・マリーニナ 7点
『追伸・こちら特別配達課』 小川一水 7点
『ストームブレイカー』 アンソニー・ホロヴィッツ 7点
『占星師アフサンの遠見鏡』 ロバート・J・ソウヤー 7点
『マルドゥック・スクランブル 排気』 沖方 丁 7点

『無限の殺意』 アレクサンドラ・マリーニナ
 光文社文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 恐喝事件がきっかけで、管区検察局から個人情報のファイルが盗難に遭っていたことが発覚した。盗みの実行犯は、折りしもアナスタシヤが手がけていた殺人事件の被害者であった。口封じのためなのか。犯人の真の目的は? 捜査を進めるうち、やがて局面は、科学省管轄のある研究所で開発中の、軍事機密に属する戦慄のプロジェクトへたどり着く…

 長ったらしい名前のオンパレードにへこたれず中盤まで読めば、やっと物語の筋道もはっきりしだしてきて、理解できるようになりました。それまでは、もう誰が何をやっているのかよくわからず読んでましたから。中盤以降はそれなりに楽しめたものの、視点の移り変わりには、やはり戸惑いがありました。誰だっけ、こいつ、と。終わりが唐突だったのもなんだかな。

『追伸・こちら特別配達課』 小川一水 ソノラマ文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 郵政省特別配達課は切手が張れるものならなんでもOK。特装新幹線車両や高速ヘリを駆使して、全国各地へ、皆様の真心を確実に素早くお届けしています。
 ところが、ここにきて、郵便局が宅配便に対抗して作った高速配達網が閑静。特配課は存亡の危機に! しかし、この高速網、何かが足りないと感じた、熱血コンビの鳳一と美鳥。今、炎の配達が始まった。

 郵便業務における闘いを描いた作品とかくと、ちょっと固いようにも思えますが、どちらかといえばライト感覚のハチャメチャ話。しかし、設定はきっちりとリアルに押えています。地下を利用し機械化された郵便と、人が運ぶ郵便。人情と便利さのせめぎあい。面白かったです。

『ストームブレイカー』 アンソニー・ホロヴィッツ
 集英社 BK1-3.gif (240 bytes)

 叔父のイアンの死に不振をいだいた十四歳の少年・アレックスはその死の理由を探る。結果、叔父はSASの特殊工作員だったことがわかるが、叔父の最後の潜入工作をアレックスに引き継ぐように指令が下る。成り行きによって特殊工作員となったアレックスの任務とは、あるコンピューター会社への潜入調査だったが…

 ジュブナイルですから、展開には多少ご都合や無理があったりしますが、スパイものとしてそこそこ楽しめました。さすがに十四歳の少年がそれをやってのけるのはどうよ、と思うこともありますが、秘密道具などは少年向けだったりしてそういうアイデアはいいなと。

『占星師アフサンの遠見鏡』 ロバート・J・ソウヤー
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 人類同様の知性をもつ恐竜キンタグリオ一族は、世襲制の国王のもと中世ヨーロッパ的な文明社会を築いていた。少年アフサンは見習い占星師。宮廷占星師の弟子として勉学にはげむ毎日だが、神を絶対的なものと考え、森羅万象を非科学的に解釈する師の教えに不満を感じてもいた。そんな彼が最新発明品の”遠見鏡”を手に観察をはじめたとき、その眼前に開けた新しい世界観とは?

 いわゆる世界の謎が解明されていない時代の物語を、恐竜という人類に置き換えて新しい概念を見つけたときの世の中の反応をシミュレートしているような小説なのかなと。序盤は狩猟と冒険のアドベンチャーでもありファンタジーでもある展開で、中盤は惑星と自分たちの大地の関係を観察し推測する科学・SF、そして後半は移り変わる世相の流れというボリューム。面白いんだけど、最後のほうが物足りないというか、すっきりしない部分があるのがネックですね。というのも、この作品はシリーズ三部作で、まだ続編がまったく翻訳されていないのです。されるかどうかも未定ですし。非常に読みたい、んですが、まだかなあ…

『マルドゥック・スクランブル 排気』 沖方 丁
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 科学技術発祥の地”楽園”を訪れたバロットが知ったのは、シェルの犯罪を裏付ける記憶データが、カジノに保管された四つの100万ドルチップ内に存在するという事実だった。チップを合法的に入手すべくポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコック奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、最後の勝負ブラックジャックに臨んだ彼女は、ついに最強のディーラーと対峙する―――

  後半、完全にカジノ小説と言う感じの本作でしたが、それはそれで面白かったです。手に汗握る心理戦、駆け引き。静かながらも非常に白熱したたたかいを見せてくれました。そういった意味では、終盤のアクションも色あせ、もっと心理のたたかいを見せてくれたほうが、という気持ちも。救い出された少女の求め、たどり着いた結末。ただ本の一握りの人間たちの大きな物語でした。