『高く孤独な道を行け』 ドン・ウィンズロウ 7点
『麿の酩酊事件簿 月に酔』 高田崇史 8点
『X雨』 沙藤一樹 8点
『マルドゥック・スクランブル 燃焼』 沖方 丁 7点
『砂漠の薔薇』 飛鳥部勝則 7点

『高く孤独な道を行け』 ドン・ウィンズロウ
 創元推理文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 中国の僧坊で伏虎拳の習得に余念がなかったニールに、父親にさらわれた二歳の赤ん坊を無事連れ帰れ、という指令がくだった。捜査の道のりは、ニールを開拓者精神の気風をとどめるネヴァダの片隅へと連れ出す。不穏なカルト教団の影が見え隠れするなか、決死の潜入工作は成功するのか?

 中国幽閉から無事帰還し子ども探しの依頼を受けたニールは一路田舎へ。カウボーイの生活と宗教テロリストへの潜入捜査と、やはりあいかわらず厳しいお仕事。しかし、今回のニール君は流されるということが少なめ。意思を持ち、自ら過酷な境遇へと身をほおりこむ心意気は立派! あいかわらずかわいそうですが。今回は珍しくハッピーエンドを迎えたんじゃないでしょうか。シリーズこれで終わったのかなと思ったら、まだ翻訳はされてないけどあるんですね。

『麿の酩酊事件簿 月に酔』 高田崇史
 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 美人姉妹との出会いに喜ぶ文麿だが、大浴場の露天風呂で、男の死体を発見してしまい… 警察は事故と断定するが、酔えば酔うほど冴えわたる文麿の酩酊推理は事件の真実を指摘する。(『湯船の向こう側』) 他短編3編を収録した短編集。

 やたらと美女に出会うお坊ちゃん。しかも酒に弱く、酔うと頭すっきり名探偵に。でも記憶もパーになってしまうという恒例のシリーズ。微妙な恋の駆け引きなど楽しいですよね、かならず報われないから。しかし気になるキャラの登場によって変化が出てきて、なんとも。推理というよりもそっちをやたら楽しんじゃいます。コミック、読みたいなぁ。

『X雨』 沙藤一樹 角川ホラー文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 一月のある快晴の朝、小学生の里緒の前に一人の少年が現れた。何故かレインコートを着ていた少年はフードをとり、潰れた右目をあらわにすると、自分には見えるという「X雨」のことを話しはじめた―――
 15年前、作家になった里緒は記憶に刻まれたこの話を書き始めた。そして、物語の結末を完成させるため小学生時代をすごしたあの街へ出発するのだが…

 怖かった。恐怖というわけではないのですが、何だかわからないものに対する恐れが非常に強かったです。内容は相変わらず独特な流れで、昔であった少年の語り、それをベースにした小説、さらにその小説をリニューアルした小説、再び語り、そして少年の語りの分析とあとがきのような奇妙な文章/日記/手紙へとつづきます。もう、最後にはフィクションとわかっていながらも、自分にもX雨が見えるようになったらどうしようかという想いに潰されそうな感じも。一風変わっていますが、ホラーを味わいたい人にはオススメかな。

『マルドゥック・スクランブル 燃焼』 沖方 丁
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 緊急事態において科学技術の使用が許可されるスクランブルー09.人工皮膚をまとって再生したバロットにとって、ボイルドが放った五人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で相手を仕留めていくバロット。その表情には、強力な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る―――!

 シリーズ二冊目。最初の戦闘を追えた後の検討、反省、そして次の作戦までが描かれています。今回の戦闘はアクションというよりも駆け引き、ゲームです。カジノでの戦いは何だかわからない興奮と熱くたぎるものを彷彿させます。予想外にアクションが少なめで、それでいて立場がSFなのが見事というか、なんというか。上手いなと思います。

『砂漠の薔薇』 飛鳥部勝則 カッパノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 西洋風の荒れ果てた古い洋館の地下室には、首なし死体が転がっていた。そして今また、少女の首が…
 奥本美奈はアルバイトをしていた喫茶店で、謎めいた女流画家・明石尚子に、モデルにならないかと強引に誘われる。明石の家に隣接する幽霊屋敷のような洋館「ヘル・ハウス」では、かつて美奈の同級生が惨殺される事件が起こっていた。明石と美奈は事件の深化と真相の究明に、いつしか巻き込まれていく…

  怖さの定義があります。納得です。結構ですね、純粋な本格だなあという印象の作品でした。あえて異世界を雰囲気として与え、一気にもやもやと混沌に突き落とされた気分を与えてくれつつも、より合理的な結末へと導かれるあたりなど、よかったなあと。意外と事件とは密接に関わっていないように見えながらも、要所要所を抑えているもの、読了後に感じた部分かもしれません。飛鳥部さんのもつ作品の雰囲気好きかも。