『カナリヤは眠れない』 近藤史恵 7点
『ラミア虐殺』 飛鳥部勝則 8点
『さすらいエマノン』 梶尾真治 7点
『マルドゥック・スクランブル 圧縮』 沖方 丁 7点
『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 8点

『カナリヤは眠れない』 近藤史恵 祥伝社文庫 

 変わり者の整体師合田力は、"身体の声を聞く"能力に長けている。助手を務める屈託のない美人姉妹も、一皮剥くと何がしかの依存症に罹っていた。新婚七ヶ月目の墨田茜を初めて看たとき、力は底知れぬ暗い影を感じた。彼を驚愕させたその影とは? やがて不安が現実に茜を襲うとき、力は決死の救出作戦に出た。

 依存症の女性たちにターゲットをあてつつ、探偵役には整体師をあてるという突飛な設定。全体的にディープで重いテーマなんですが、登場人物たちの性格・明るさに助けられて楽しく読めたと思います。そういう部分では成長していく様を見せるシリーズなのかなとも。ミステリ面はあまり主体でもなかったですしね。それなりにオススメなので気が向いたら読んでみてください。

『ラミア虐殺』 飛鳥部勝則 カッパノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 吹雪の山荘で起こった連続殺人。残された謎のメッセージカード。犯人をさがそうとしない滞在者たち。ここには、人論も尊厳もなかった。殺すか、殺されるか。その二つだけがあった。

 上手い! というのも小技の見せ方。そうかなー、そうかなーという想像を膨らませるためのエサのばら撒きがよかったという、本格枠から外れた作品ってのが私の感想かな。よかったですよ、うへぇってな雰囲気もあり、ミステリとしてのトリックも妙な部分でいきてるし。ただ、ウェルズの『モロー博士の島』をもろにネタバレしてるのはどうかなと。まあ、SFですがネタバレはネタバレですし。私はちょうどこの前読んだところなんで、妙に共感したりもしましたが。閉ざされた雪の山荘での連続殺人。生き残るのは何者か? 読んで楽しんでみてください。

『さすらいエマノン』 梶尾真治 徳間デュアル文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 ながい髪に、印象的な瞳とそばかす。ジーンズをはき、E・Nとイニシャルを縫いこまれたナップザックをかかえた少女。彼女の名前はエマノン――― 四十億年分の記憶とともに生き続ける存在。彼女の体の中には、『地球』とおなじだけの喜びや悲しみが積み重なっていた。人類の祖先をすくった意思を描く『さすらいビヒモス』や、化学兵器汚染地区での物語『まじろぎクリィチャー』などの五編を収録。

  自然にやさしい小説というか、人間の環境汚染がいかに悪いものかを語られているような気分になります。偉大なる自然の脅威。地球に生命が誕生してからの全ての記憶を引き継ぐ少女エマノン。出会うのは何かしらの要素をもった人々。いろいろなエピソードがありますが、いいたいことはやはり同じように思えたりもします。面白いんですが、だんだんとくどくなりそうな気がしないでもないです。

『マルドゥック・スクランブル 圧縮』 沖方 丁
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 なぜ、私なの? 賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力を得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ちふさがる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした男だった…

 先日、第24回日本SF大賞に輝いた作品です。ちなみに全三巻の一巻目。瀕死の重傷を負った少女が特殊改造され能力を身に付けて、相棒のねずみとアクションする話、だと思います。予測だと。そのプロローグっぽいのが本巻。はねっかえりではなく、薄幸の美少女というのが、最近のこの手の話とことなっているのではないでしょうか。どっちかというと相棒のねずみが輝いてます。ありがちといえばありがちですが。一冊目はとりあず面白かったです。ちょっと中だるみに感じなくもないですが、ひきつけるものはあります。完結では涙できるのかなとも。なんにせよ楽しみと言うことで、年内に読めればいいなあと。

『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎
 東京創元社 BK1-3.gif (240 bytes)

 引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の美青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―――たった一冊の広辞苑。僕は訪問販売の口車に乗せられ、危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが、書店強盗は訪問販売とは訳が違う。しかし決行の夜、あろうことか僕はモデルガンを持って、書店の裏口に立ってしまったのだ!

  過去と現在の二段構えで、思っていたほどスケールは大きくなく小粒。二段構えであるが故の仕掛けにはけっこう早い段階から気が付いて、あとは物語の結末を楽しみに読んでいました。途中では悲劇的に終わるのかなとも思っていましたが、その思想からかきれいに落ちたように思えます。