『レインレイン・ボウ』 加納朋子 8点
『不思議じゃない国のアリス』 沙籐一樹 8点
『ターミナル・エクスペリメント』 ロバート・J・ソウヤー 8点
『ぶたぶたの休日』 矢崎存美 7点
『黒の貴婦人』 西澤保彦 8点
『レインレイン・ボウ』 加納朋子 集英社 
高校時代のソフトボールのチームメイトの通夜で久しぶりに集まった陶子たち7人。来なかったのは1人だけ… 7人の視点を通じて語られるそれぞれの人生。女たちの友情と成長を描いた連作短編集。
高校時代のソフトボール部員たちの今を描いた、ミステリというよりも青春小説なのかなってな作品。一つ一つの作品にこめられた複線がやがてラストに収束するかのような技はなかなか。何かあると思わせる部分は各作品にありますが。それにしてもそれぞれの作品の色というか背景がまったくと言っていいほど異なっているのが面白い。どこかで昔のソフトボール部にはつながりますが、そこから歩む道は人それぞれであると、まさにそんな感じ。誰もが違う道を歩み、それでも根本は一緒であり、今も切れない絆であるというのはうらやましいような。読了後のさわやかさを感じ、良い作品だったなと思います。
なお、主人公の一人、片桐陶子は『月曜日の水玉模様』の主人公だそうです。
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『不思議じゃない国のアリス』 沙籐一樹 講談社 
地元の信用金庫につとめる由記子。職場の人間関係などでむしゃくしゃしていたときに、園不思議な少女と出会う。木彫りの熊の置物をひもでつないいで引きずりながら歩くその少女はアリスと名乗り、やがて、由記子とよく語るようになる。胸のうちにたまった愚痴を吐露するとなぜか気分がすっきりとするのだ。表題作『不思議じゃない国のアリス』他、なんともいえない世界観をもった五編を収録した短編集。
すごい独特の世界観を持っており、またそれが非常に良い味わいを出してるんじゃないかなと言う短編集。表題『不思議じゃない国のアリス』は関西弁こてこての女性と少女のやりとりで、これがキッツイけど染み入るものがあるというもの。他にも、すごくきれいな物語なのに、最後の最後で台無しにしてしまっている『青い月』、子どもの純真さを残酷に変換する『飛行熱』、オンラインRPGと現実を描き、ゲームのチャットそのまんまって感じの『空中庭園』、全て箇条書きの『銃器のアマリリ』などなど。最初こそは「なんじゃこりゃ」って感じで読んでますが、いつのまにか「面白い」と感じてしまいました。オススメかも。
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『ターミナル・エクスペリメント』 ロバート・J・ソウヤー
早川文庫 
医学博士のホブスンは、死にかけた老女の脳波の測定中に、人間の「魂」とおぼしき小さな電気フィールドが脳から抜け出してゆくのを発見した。魂の正体を探りたいホブスンは自分の脳をスキャンし、自らの精神の複製を三通り、コンピュータの中に作り出した。ところが現実に、この三つの複製のうちどれかの仕業としか思えない殺人が次々に… 果たして犯人はどの「ホブスン」なのか?
中盤からの盛り上がりは非常に面白かったです。科学者が死ぬ瞬間の人の体からエネルギーが出て行くのを発見し、魂の存在が明らかになるというのが一点。それより、脳の電子データのスキャンを行い、本人の複製をプログラムとして3種類作成するのが一点。その3種類の複製の一人(?)が人を殺し、誰が犯人かを探すのが一点。というボリュームある内容だったりします。魂の存在を見つける過程、その後の反応というアイデア、死後の複製、不死の複製というアイデアなど、予想外ながらもありえると納得させられるのがすごいです。新たな発見と言う展開がありつつも、謎を解明するという、開拓しつつ追いかけるスタイルが読者を飽きさせないテクニックなのでしょうか。実に楽しませてもらいました。
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『ぶたぶたの休日』 矢崎存美 徳間デュアル文庫 
あるときは占い師、あるときは定食屋手伝い、はたまたあるときは刑事。動き、喋り、働くピンクのぬいぐるみ(ほぼバレーボール大)、山崎ぶたぶた氏はなにを隠そう、お父さんでもあるのだった! 休日だからと気を抜いてしまったのか、ちょっと寝過ごしたぶたぶた。ゴミを出し、洗濯物を干し、雨の中を買い物に走る。約束の時間に間に合わせるために…
ピンクのぶたのぬいぐるみは今日も元気に、周りの人を驚かせ、元気付け、癒しています。中年のおじさんだから人生経験は豊富だし、人にないものをもっており、実にいい影響をあたえてくれますよね。そして、奥さんとかわいい二人の娘。不思議… そんなぶたぶたの日々、にやりと読み、癒されましょう。
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『黒の貴婦人』 西澤保彦 幻冬舎 
タック、タカチ、ボアン先輩、ウサコの四人が、行きつけの飲み屋でいつも姿を見かける「白の貴婦人」と絶品の限定料理・鯖寿司との不思議な関係を推理した表題作『黒の貴婦人』。他、ほろ苦い青春とミステリを組み合わせた短編四作を収録した、タックシリーズ短編集。
タックシリーズの短編集ということで、時期がいろいろ分散しており、また作品のうちふたつは読んだことがあったんですが、それはそれで楽しめました。特に後半、学生後のタックなど、あいかわらず世捨て仙人だけど大人だなと思うしぐさなど良い感じです。そして、このシリーズでは相変わらず、ロジックよりも成長が描かれている気がして、それがまた楽しめますね。シリーズを通じ、いろいろはパズルのピースが収まり完成図が見えてきたような気もしますが、果たして出来上がりがどうなるか楽しみです。
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