『せちやん』 川端裕人 7点
『ア・ハッピー・ラッキー・マン』 福田栄一 9点
『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦 7点
『恋愛寫眞』 市川拓司 8点
『奇妙な旅行』 星 新一 7点

『せちやん』 川端裕人 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 少年だったとき、雑木林の広場にぽつんとたたずむ日本家屋。パラボラアンテナをもった「摂知庵」とかかれたその建物で、少年たちは中年の男性せちやんと出会う。せちやんのもとで宇宙や星星に心惹かれていく少年たち。やがて、卒業し大人となっていった彼らは…

 星に魅せられた少年たちのその後。なんというか、読み終えた後はもの悲しい気分に浸ってしまいます。人生の成功と失敗。宇宙の孤独。求めるものは何なのか? いろんなものが詰まっていながらも、最後に何が残るのだろうかと。歳をとったときに、幸せだったなあという生き方をしたい、です。

『ア・ハッピー・ラッキー・マン』 福田栄一
 光文社 BK1-3.gif (240 bytes)

 目が回りそうなほど忙しいときに限って、次々と面倒ごとが舞い込んでくるって経験をしたことがあるだろうか? もしそういうやっかいな事態に巻き込まれたとしたら、どうやって切り抜けていく? 自分の手に余るものはきっぱりと拒絶する。それも方法の一つだ。何もかも放り出して逃げ出す。人によってはそれがベストの選択かもしれない。後先を考えずに全て抱え込んで何とかしようとする奴もいるだろう。まさしく俺がこのタイプだ。これから始まるのは、そんな俺が経験した、目が飛び出してひっくり返るほどに忙しい、一週間の物語だ。

  お人よし大学生の運の悪い一週間を描いた作品。楽しいです。人がいいから、自分が大変なときであるにもかかわらず、いろんなことを引き受けてしまう(引き受けさせられてしまう)姿がなんともいえないというか。読んだとき、ちょうど自分も忙しかったからある種シンクロして、なにかを実感していたとか、しないとか。しかし、そこは小説、情けは人のためならず。ちゃんと見返りが用意されて、差し引き0ですもんね。うらやましい。なんにせよ、非常に楽しめた作品でしたのでオススメです。

『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 白樺湖畔にそびえる洋館「鳥の城」は、主の五度目の婚礼を控えていた。過去の花嫁は何者かの手によってことごとく初夜に命を奪われているという。花嫁を守るように依頼された探偵・榎木津礼二郎は、小説家・関口巽と館を訪れる。ただ困惑する小説家をよそに、館の住人たちの前で探偵は叫んだ ―――おお、そこに人殺しがいる

  実に鬱な作品、というか関口君のうじうじさがたまらないというか。いつもながらの厚さで、薀蓄とうじうじな心境が延々とかかれており、やっと事件だと思ったら600ページに達していた、と。事件そのものは非常に単純であり、なんだかなとも思えたりもしたんですが。結局のところ京極小説だからそんなもんでしょうかね。

『恋愛寫眞』 市川拓司 小学館 BK1-3.gif (240 bytes)

 瀬川誠人は、横断歩道でたたずむ少女、里中静流と出会う。その後、彼女が同じ大学の生徒と知り友達となる。誠人に惹かれていく静流と、誠人が思いを寄せるみゆきと、大学生活はそんな中進んでいく。

 実に切ない、幸せで悲しい話。結末を電車で読まなくて良かったなあと思ってみたり。結局、それまでは平気だったんですが、最後の最後に泣けますから。切ない、を非常に感じることが出来るというか。別の市川さんの作品を読んだときにも感じましたが。読み終わると、好きな人と喋りたくなる、そんな話です。

『奇妙な旅行』 星 新一 理論社 BK1-3.gif (240 bytes)

 エヌ氏にはしばしば夢の中に出てくる風景があって、エヌ氏は意を決してその場所に行ってみた。ところが、そこで出会ったのは…。表題作ほか全17編のショートショートを集める。

 ショートショート17編。ちょっとしたネタなんだけど、「ほほー」と感心したり、「うまい」とうなってみたり、その短いなりの文章につまった技を見せてくれます。息抜きには最適かな。


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