『赤ちゃんがいっぱい』 青井夏海 7点
『やっとかめ探偵団と殺人魔』 清水義範 8点
『激突カンフーファイター』 清水良英 6点
『歩くと星がこわれる』 森 雅裕 9点
『さよならダイノサウルス』 ロバート・J・ソウヤー 8点

『赤ちゃんがいっぱい』 青井夏海 創元推理文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 アルバイト先の助産院を解雇された陽奈は、急場をしのぐために「ハローベイビー研究所」に就職するが、そこでは価値のないものばかりが消えうせる目的不明の盗難が続き、さらには十八年前を再現したかのような赤ちゃん置き去り騒ぎが起きた。いったい研究所内で何が進行しているのか?

 「ハローベイビー研究所」という名前ですでに胡散臭いと思わないと。ということはおいておいても、かならず騒動に巻き込まれるというのは一種の才能ですね。しかし、大人の都合と世間の常識のずれをなんとも思わず、事件を内部的に処理しようというのはどうなんでしょうか? それに気がついたら、妙な具合に展開して、おのおのが納得しちゃって終わり。うーん。ちょっと盛り上がりが足りずに、あっけなくっていう感じでしたか。

『やっとかめ探偵団と殺人魔』 清水義範 光文社文庫 

 名古屋の中川区の一角で、どえりゃー事件が発生した。たちまち、波川まつ尾(74歳)が営む駄菓子屋には、情報屋・婆ちゃんたちが押し寄せ、蜂の巣をつついたよう。さらに、恐怖の連続殺人魔が出現。どうする婆ちゃんたち!

 連作短編のような形をとっている今回のやっとかめ探偵団。ユーモアも交えつつも、人の交流と、見えない闇の部分に光をあてたという感じでしょうか? 悲しい結末もまっていますが、名古屋弁のユーモアさ、婆ちゃんたちの人情味に触れてみるのも一興。是非一読をば。

『激突カンフーファイター』 清水良英
 富士見ファンタジア文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 闇を切り裂き轟くは、正義の心かカンフーファイター。悪を打ち払うその拳に込めた思いは、慈悲の心かカンフーファイター。人々は彼をたたえ、感謝の叫びを上げるのだ。「ありがとう、ユタの若大将!」と―――

 バカ小説です。なんだかよくわからない怪人(うではドリル)とカンフーファイター(謎の外国人、ワンピース着用)が戦ったり、適当に言い合いしたりする話です。ってか、会話がかみ合ってないし… もう、誉めるというか言えることはただ、そのかみ合わない会話のテンポが微妙であるということぐらい、かも。実に微妙、ただの勢いかもしれませんが。そんなバカ小説を読みたい方はどうぞ。一応、第12回ファンタジア長編小説大賞の準入選だそうです。

『歩くと星がこわれる』 森 雅裕 中央公論社 

 芸術系の大学、いる人間はろくでもない人間ばかり。自己中、お嬢様なんてあたりまえ。そんななか、海外をふらついてから入学した巽と、お嬢様の黎のカップルも周りから見れば変な組み合わせだったりするのだが… 大学時代をつづった上野篇、そしてその後のモデナ篇の二篇からなる、自伝のような、青春小説のような不思議な小説。

 なんだか青臭い気分になるのは何故でしょうか? 純粋に愛や恋を語る小説とも違います。完全にひねくれた人間たちの偏った、ある種失恋小説でもあるような感じでもあります。天邪鬼という人種が実に上手くかかれているような、そしてなぜかそこに自分の気持ちを投影してしまうかのような人物たちがいます。痛いです。それは実に痛感するし、そして共感もします。せめて、物語の中では幸せになってほしいと願うものの、まるで現実のごとく厳しい現実は押し寄せてきます。それが最初でした。
 続くモデナ篇でも夢を希望を見せつつも、非常にダークな一面をも見せてくれます。出版業界の汚さ。いいのかなと思うぐらいかかれています。そして結末で待っているもの。悲しくて、やるせなくて。この本に出会ったのは非常によかったかもしれないなと思ったりもします。いい話です。入手は困難でしょうが、是非、一読してみるといいと思います。

『さよならダイノサウルス』 ロバート・J・ソウヤー
 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 恐竜はなぜ滅んだのか? この究極の謎を解明するために、二人の古生物学者がタイムマシンで六千五百万年のかなた、白亜紀末期へ赴いた。だが、着いた早々出くわしたのは、なんと言葉を喋る恐竜! どうやら恐竜の脳内に寄生するゼリー状の生物が言葉を発しているらしいのだが、まさかそれが「***」だとは…!?

 恐竜が滅んだ謎を明らかにするためにタイムマシンによって白亜紀末期へと古生物学者二人が訪れる話で、冒険アドベンチャー風なんですが、まさか、その六千万年前で驚愕なSF的展開がまっていようとは… 意外性もあり、その上、それを上手く使って恐竜絶滅の理由や、恐竜が何故あれほど巨大に成長したのかなど恐竜関係の不思議を解き明かし、さらには○○が何故あんななのか、とか時間旅行は何故可能でなければならないのか、などの謎までもに決着をつけているという。もう、ネタばれOKならば。○○の展開すごいよね〜、やら、○○って○○じゃないのとか、いろいろ語れそうな感じです。是非とも一読を。