『アルファベット荘事件』 北山猛邦 7点
『猫の尻尾も借りてきて』 久米康之 8点
『QED 式の密室』 高田崇史 7点
『七度狐』 大倉崇裕 8点
『虎よ、虎よ!』 アルフレッド・ベスター 7点

『アルファベット荘事件』 北山猛邦 白泉社My文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 岩手の洋館・アルファベット荘は、庭や屋敷内に奇怪なアルファベット形のオブジェが並ぶ奇妙な屋敷だ。そこに招かれた売れない役者・未衣子とその仲間(変人の看板女優・美久月と、何も持たない探偵・ディ)は、パーティのほかの客と共に、謎の物体「創生の箱」をめぐる、血も凍るような惨劇に出会う…

 謎の箱「創生の箱」を巡る惨劇というお約束な展開で、タイトルの通り雪の山荘ものでもあります。あいかわらず変人と探偵がたくさん登場し、推理やらを繰り広げます。こういうのは非現実的でありながらも読者としては楽しいです。トリックは、なんというか、駆使されてはいますが、慣れてしまってると「ああ、そう」となります。人間同士の変人同士のやりとりも楽しいので、そちらで満足すればいいかなと思います。

『猫の尻尾も借りてきて』 久米康之 ソノラマ文庫 

 1995年7月20日、研究署員・村崎史郎が想いを寄せる女性・矢野祥子の22歳の誕生日であり、殺害された日でもあった。祥子を失った史郎はなかなか立ち直れない中、ふと研究所長に呟いたひと言は「タイムマシンがほしい」 もちろん、かなわぬ願い事として。 しかし―――!

 タイムトラベルもの。で、実はミステリ。いいですね、この作品で登場するタイムマシンは、かなり理想に近いかも。高性能でシンプル、シャープ。わらわらと増えちゃうと困りますが、実に理想的。内容もなかなか凝った感じで、「存在の輪」はまあ説明がつかないからおいといても、整理してみれば納得の結果だったり。楽しませてもらいました。

『QED 式の密室』 高田崇史 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 密室で、遺体となって見つかった「陰陽師の末裔」。”式神”を信じる孫の弓削和哉は他殺説を唱えるが…。果たして、祟の推理は事件を謎解くばかりか、時空を越えて”阿部清明伝説”の闇を照らし、”式神”の真を射抜き、さらには”鬼の起源”までをも炙り出す。

 密室本だったからでしょうか、薄い。しかし、いつもの薀蓄が省略されて事件だけって感じもするので非常にシンプルでよかったなぁと。さらなる薀蓄削除で事件だけにするともっと薄くはなるでしょうが。さて式とは式神、いわゆる陰陽ですが、語り尽くされてないかなとも。まあ、ふりがないっぱいの文章は軽く読み飛ばしてるんですが。事件についても、あっけないような結末で盛り上がりもせず、単純に終わっちゃった、まさにシンプルだと。なもんで、いつもに比べたら非常に物足りない作品だったかなと思います。

『七度狐』 大倉崇裕 東京創元社 BK1-3.gif (240 bytes)

 「静岡に行ってくれないかな」
 突然、春華亭古秋一門会の取材を命じられ、北海道へ出張している「季刊落語」の編集長・牧の名代として緑は単身現地入り。ところが、波乱を含む一門会を前に、豪雨に見舞われ村は陸の孤島に。そして、見立てとも思える殺人事件が!

 落語の見立て殺人、クローズド・サークルで安楽椅子探偵という、なかなかミステリとして楽しい仕掛けが満載だったり。しかし、やはり落語の見せ方が非常に上手い感じがします。興味はないほうなんですが、これを読むとテープを借りてきて聞いてみようかなって気分になります。そしてそれが妙にミステリとしてマッチしているので、この小説自体がひとつの芸という印象を受けてみたり。なかなか推理を出し惜しみにして、被害者が出てしまったりする個所には、探偵に対して「なんじゃこいつは」と思ったりもしましたが、まあ、楽しめた作品だったと思います。

『虎よ、虎よ!』 アルフレッド・ベスター 早川書房 BK1-3.gif (240 bytes)

 25世紀、人々の全く予想のしなかった、新しいフロンティアが、人類の眼前にひらけた―――テレポーテイション(精神感応移動)である。 それは発見者の名を冠してジョウントと呼ばれた。これにより世界は変わった。法律も、社会も、モラルも、その全てがジョウントに合わせて改変を要求された。それぞれの思惑が交差する中、戦争は勃発した。そんな時代、ガリヴァー・フォイルの復讐の物語が幕を開ける。

 復讐の物語、あるいは能力者たちの黄昏というイメージでしょうか。第一部は誰が敵やら味方やらよくわからないまま、怒涛の勢いで展開、また展開を繰り返して、唐突に物語が途切れた印象を受けました。そして打ってかわっての第二部、落ち着いた雰囲気の中の騙しあいの追跡。何故、どうして、と考えることを許さずに一気に結末でした。よくわからなかった部分も多数ありましたが、やはり怒涛、すごいが感想になるのでしょうか。