『しずるさんと偏屈な死体たち』 上遠野浩平 7点
『『アリス・ミラー城』殺人事件』 北山猛邦 7点
『800』 川島 誠 7点
『幻のマドリード通信』 逢坂 剛 7点
『QED 六歌仙の暗号』 高田嵩史 7点

『しずるさんと偏屈な死体たち』 上遠野浩平
 富士見ミステリー文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 しずるさんは何年も病床にありながら、とても綺麗で、この世の誰よりも聡明で、どんな不可解なおぞましい殺人事件の数々も、彼女の前では只のごまかしになってしまう―――あらゆる死体の謎を病室から外に出られない少女の推理が解き明かす。

 表紙のイラスト本文と全然あってないよ! という感じですが、内容は安楽椅子探偵もの。ただ、探偵役がどうも「やるきなし」って感じで、事件に対しての緊張感がないんですよね。だから、謎が解けた場合でも「あーそか」ってぐらいの気持ちにしかならず、どうもダラダラとした雰囲気がちょっと不評な感じでした。

『『アリス・ミラー城』殺人事件』 北山猛邦
 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 ルイス・キャロルの作品にちなんだ不可解な城に探偵たちが集められた。ある者は密室状況下、巨大な鏡の上で顔を溶かされた死体となり、ある者は合わせ鏡の部屋で殺され、犯人は目撃者の眼前で消失する。館内のチェス盤からは殺人の度に駒が一つずつなくなって…

 探偵が孤島に集められ殺人ゲームが始まるという、ある種のミステリにありがちな展開ですが、そういうのってなんとなく好きだったりして楽しめて読めました。犯人の「密室にする意味」と「チェスの駒を取り除いていく理由」は実に新しい定義で目から鱗が落ちましたが、しかし結末がいかんともしがたい結果に… うーん、確かにそれは「OK」なんでしょうが、作中の探偵が「そこに気がつかない」というのが納得できなかったり。当然読んでいる読者よりも作中の登場人物のほうが当事者なわけで、思いついて当然なはずなのに、といった感じですね。それとも、読んでいる私の思い描いている結末と微妙に違うのかな…? なんにせよ、楽しめたことは楽しめた一冊でした。

『800』 川島 誠 角川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 なぜ800メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。
 思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする―――

 ほんのりと爽やから陸上青春物語ってところでしょうか。読めば読むほど自分が「おぢさんになったなぁ」と感じてしまいました。内容としては一人称が俺の遊び人風の人物と、一人称がぼくのおぼっちゃん型の二人の視点が交互で語られるため、感情移入はしにくいですが、微妙に屈折した青春と、800メートル走への思いが伝わってくる感じでした。

『幻のマドリード通信』 逢坂 剛 文藝春秋 BK1-3.gif (240 bytes)

 スペイン内戦が終わった翌日、閉鎖されていた日本帝国公使館の再開に向け、外務省書記生の宮川は荒れ果てた建物に入った。だが、建物の地下には黒こげになった人間の死体が遺され、空のはずの手提げ金庫からは宮川宛ての手紙が入っていた… 表題作を含む5作を収録した短編集。

 スパイものっぽい短編集でアクションがあったり革命の歴史を語ったりです。純粋に知識が要らずにアクションしてる作品はそれなりに楽しめましたが、歴史を背景としたスパイものは、もう途中から何がなんだかでわかんなくなっちゃいました。スパイの世界も二重三重、騙しあいで大変そうです。

『QED 六歌仙の暗号』 高田嵩史 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 「明邦大学・七福神の呪い」―――大学関係者を怯えさせる連続怪死事件は、歴史の闇に隠されていた「呪い」を暴こうとする報いか? 桑原崇が膨大な知識を駆使し、誰も辿り着けなかった「七福神」と「六歌仙」の謎を解き明かす。

 「七福神」をテーマとした民俗学が主体で、そこに微妙に怪死事件が絡んできて、何故だか「六歌仙」まで絡んでくるというもの。七福神についての薀蓄、推論はとても楽しめたかなという反面、話題が六歌仙になっちゃうと、「何、それ」「誰?」ともう斜め読みになってしまいパス。事件についてもそれなりに想像で見えちゃっているので適当にスルーしていたら、いつの間にか犯人が… うーん、探偵役が事件に興味ないからか、解決だけしてほったらかしっていうのが気に食いませんが(最後までちゃんと責任もってほしいなぁ)、こと七福神の薀蓄は楽しめたと思います。あと、最後に「こうです」と決定しちゃいますが、「という考え方もありますよね」程度がいいんじゃないかなと。こじつけにも思えなくもないですんで。というか、今の本当の七福神の真相ってこう、なんですか? あるいは、北森鴻さんの蓮杖那智・民俗学シリーズと比較してみるのも楽しいかも。