『太陽がイッパイいっぱい』 三羽省吾 8点
『神様のパズル』 機本伸司 9点
『亜愛一郎の転倒』 泡坂妻夫 7点
『フレームアウト』 池垣真太郎 7点
『いま、会いにゆきます』 市川拓司 8点

『太陽がイッパイいっぱい』 三羽省吾 新潮社 BK1-3.gif (240 bytes)

 一年程前、割のいいとのことではじめた肉体労働。その後のビールの旨さという快楽にすっかりはまり大学にも行かずに工事現場で毎日働く。汗、恋、喧嘩、もがき苦しみ、笑いそして青春真っ只中で生きる男たちの物語。

 苦しくても、辛くても、そこに快楽があるから、なんて感じてしまい思わず肉体労働って楽しそうだなとまで思ってしまう、そんな小説でした。生き生きとした人たち、それぞれがそれぞれで違うものを背負いながら生きていく姿、成長する人間たちが上手くかかれているという印象。文章もなかなか上手で面白かったです。オススメ。

『神様のパズル』 機本伸司 角川春樹事務所 BK1-3.gif (240 bytes)

 卒業ゼミに素粒子物理研究室を選択した留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題。なにしろ穂瑞ときたら、精子バンクを利用して生まれた天才児で、建設中の巨大加速器「むげん」の発案者でありながら、その天才さゆえに大学側も持て余し気味という問題児なのだから。案の定、僕を鼻であしらう穂瑞だったが、一人の老聴講生・橋詰さんの発した究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんとそれを討論テーマとしてゼミに現れたのだ! 僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…

 内容としては物理学など非常に高度(?)な理系理論が騙られ難しいSFだなあという印象もうけるんですが、おちこぼれ主人公が視点であるせいか、なんとなくの雰囲気で理解できてしまう部分もあり、またその他のところでの描写がなんとなく爽やか、みずみずしい印象を受けて非常に面白く読めたなあと思います。テーマは宇宙の作り方で、なかなか興味深い「疑問」がいくつも提案され、読んでて独自の発想が湧いてきたりします。天才とおちこぼれコンビも凸凹ですがそこが楽しく、またSF以外に田植えなんかも重要だったりして、最後まで興味新進で楽しめました。小難しくて爽やかなSF、オススメですよ、いかがでしょうか?

『亜愛一郎の転倒』 泡坂妻夫 創元推理文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 ありえない矛盾を含んだな絵の秘密とは?―――『藁の猫』 とある温泉で見つかった変死体、それはまるで手毬歌の見立てのように―――『意外な遺骸』 引退した各界の重鎮4人が集まって行っている相談とは?―――『争う四巨頭』
 丹精な二枚目で、でもどこか抜けているカメラマンの亜愛一郎が颯爽と謎を解き明かす短編集。

 非常にいろんなパターンで出揃った短編集でしたね。それぞれのパターンでそれぞれの推理に楽しませていただいた、という感じです。しかし、亜の珍妙な行動というかそのキャラクターにはなかなか笑わせてもらいますね。やはり珍妙でありながらも名探偵というのが好感度が高いのかなあと思ってみたりしますが。

『フレームアウト』 池垣真太郎 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 1979年、NY――― 映画編集者デイヴィッドの作業スペースに紛れ込んでいた邪悪で完璧に美しい一本のフィルム。あれは、本物の"スナッフ"!? 主演女優のアンジェリカと、失踪したもう一人のアンジェリカの行方を追うデイヴィッドが覗いた暗黒の淵とは?

 構造的に狙っていることは読み終わってみるとわかるんですが、いまいち(というか全然)おどろきを感じなかったです。なんというかややこしくてそれぞれの表記を覚えていないのが原因でしょうか。ストーリー自体がスナッフフィルムの謎を追うというものであり、いまいち興味がそがれる部分があるというのと、他のミステリのように殺人など、強烈に推理を必要とするわけでもないというのが原因かなと。ちょっと私はいまいちっぽい作品でした。

『いま、会いにゆきます』 市川拓司 小学館 BK1-3.gif (240 bytes)

 「また、この雨の季節になったら、二人がどんなふうに暮らしているのか、きっと確かめに戻ってくるから」
 一年前に病死した妻が突然目の前に記憶を失った状態で現れた。ふたたび別れることを思いながらも、そのときの幸せを感じとろうとする恋愛小説。

 読み終わった後、好きな人に「愛している」と伝えたくなる、そんな気持ちにさせてくれます。純粋さがにじみ出ている、愛が詰まっている、なんだかステキな小説なんですよね。愛でいっぱい、言葉はいらない、としておきましょう。