『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎 8点
『トキオ』 東野圭吾 8点
『消える密室の殺人 猫探偵正太郎上京』 柴田よしき 7点
『桜宵』 北森 鴻 8点
『クレイジークレーマー』 黒田研二 7点

『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎
 ノンノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 リーダーはウソを見抜く名人、さらに天才スリ、演説の達人、体内時計の持ち主という彼らは百発百中の銀行強盗だった…はずが、その日の仕事に思わぬ誤算が。逃走中に、同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇。「売上」ごと車を横取りされたのだ。奪還に動くや、仲間の息子はいじめ事件に巻き込まれ、死体は出現、札付きのワルまで登場して、トラブルは連鎖した!?

 テンポがよくて、キャラが変でおかしく、全体的にバランスよくまとまっていて面白い、という非常にできた作品だったかなと。改めて考えてみれば、物語の中身ってそんなに大げさでもなくて、削れば短編ぐらいかもとも考えちゃうんですが、膨らませ方が上手いというか、見せ方が上手いというか、読んでると引き込まれてあっという間ですし。驚きとかはないんですが、スピーディーかつユーモアな展開を楽しんでください。

『トキオ』 東野圭吾 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 1979年、浅草。宮本拓実は「彼」トキオと出合った。不思議な雰囲気の彼は、何故か拓実の心を見透かしたような行動をとる。そして、拓実の恋人が行方不明となり、怪しい男たちが彼女を追いかける。二人は彼女を捜して大阪へと向かうのだが…

 ずっと昔、息子が時を越えて俺に会いに来たんだ。実はタイムトラベルものだったんですね。といってもそれがわかっているのは読書のみかもしれませんが。しかもタイムトラベル自体は大筋にはあまり関係ないかもしれなんですが、最後が近づくに連れじわりじわりと効果があらわれてくるんですよね。ミステリも多少はありますが、純粋にエンタテイメントかな。そして感動もの。文章は上手いし、楽しませてもらいました。ラストの一文で不意に泣きそうになりましたよ。オススメ。

『消える密室の殺人 猫探偵正太郎上京』 柴田よしき
 角川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 何も聞いてないよ――― またしても同居人の突発的な旅行に付き合わされることになったオレ。今度は東京だ。嫌な予感がしていたのだ。上京したオレを待っていたのは猫、猫、猫。そしてやはり、死体。しかも人間の死体と共に、友達になったばかりのアビシニアン、デビッドも死体で発見される。殺人? 自殺? そんなことに興味はないが、殺「猫」犯は見つけ出さなきゃならない。しかし、密室で誰が、どうやって人間と猫を殺せたのか?

 やっぱり猫はかわいいにゃーん。といいたくなるような小説というべきでしょうか。擬人化された猫たちは、各々好奇心を満たすためやら仲間の敵をうちたいがためやらで事件を追っかけ、もう人間をはるかに超える推理っぷりを見せてくれますね。ほんとホームズですよ。さっぱりとあっさりと、でも甘酸っぱいところもある猫作品いかがですか?

『桜宵』 北森 鴻 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 夕海が、手にしたバッグから白い封筒を取り出した。封筒の中身は、一枚のカードだった。―――『十五周年』 一度訪ねてみてください。わたしがあなたに贈る最後のプレゼントです。―――『桜宵』 「悪魔のリストラランチ」と異名をとる、リストラ要員選びのホームパーティを開いているそうだ。―――『犬のお告げ』 あの金色のカクテルに固執するお客はあれから来ましたか。―――『旅人の真実』 たった一つの旅の思い出、それがこの店なんですよ。―――『約束』
 旨いビールに、しゃれた酒肴。そして何よりこの店には、事件を読み解く心がある。今夜も「香菜里屋」で、ひとつの謎が明かされた。

 十人ほどの客がやっと座れそうなL字形のカウンターに小卓が二つ、鈍い光を放つ間接照明で彩られた「香菜里屋」。落ち着く店、暖かく包み込んでくれる店というのは非常に魅力的に移り、作中に「落ち着く」という表現を目にすると、読んでるこっちも非常に落ち着いた雰囲気の中にいるように思えたりする作品で、よかったですね。料理が美味しそう、されだけでいいじゃないですか、と言ってしまいたいです。ただ、最後の作品に結構悪意を当てられてきつかったですが…

『クレイジークレーマー』 黒田研二 ジョイノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 大型スーパー「デイリータウン」のマネージャー袖山剛史は、クレーマー・岬圭祐、万引き常習犯・マンビーという二人の"悪魔"に悩まされていた。ある日岬が、クマ型ペットロボット「テディ・バディ」のケンタを診てほしいと現れた。治療法を教えて切り抜けたのも束の間、マンビーにデスクトップパソコンを盗まれる。そして岬が再びやって来た、「電子レンジでケンタを温めたら死んだ」とーー― 岬の嫌がらせはエスカレートする一方。袖山の心の支えは恋人・美乃の存在だったが…

 大型スーパーでの万引き犯、クレーマーとのバトルかなとも思ったんですけど、ある意味精神的なやりとりですね。しかし、急速なヒートアップはおかしいなと思うほどじゃないですかね? まあ小説だからでしょうが。で、最終的にどうオチるのかなと思ったら、ああ、相変わらずかあ、と。あるいみ期待を裏切らない作品でもあるんですが、目新しいのも感じてみたいなと思ったりします。