『闇色のソプラノ』 北森 鴻 7点
『大あたり殺人事件』 クレイグ・ライス 7点
『12月のベロニカ』 貴子潤一郎 7点
『黄泉がえり』 梶尾真治 8点
『半落ち』 横山秀夫 7点

『闇色のソプラノ』 北森 鴻 文春文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 夭折した童謡詩人・樹来たか子の「秋ノ聲」に書かれた”しゃぼろん、しゃぼろん”という不思議な擬音の正体は? たか子の詩に魅せられた女子大生、郷土史家、刑事、末期癌に冒された男、医師、そしてたか子の遺児・静弥が神無き地・遠誉野に集まり、戦慄の事件が幕を開ける。

 非常に複雑なプロットの上に成り立つ作品だなというのと、これが北森さんの民俗学ミステリの初期作品なんだなというのを感じた作品でした。ひとりの童謡詩人を巡って、女子大生、郷土史家、刑事、末期癌患者、医者などが入り乱れ、複雑に交差する思惑の中事件が発生していくというもので、視点は複数あり、しかもつながりは不完全だし、途切れ方も中途半端だったり、荒削りな印象をうけるんですが、それが不思議と謎っぽく、独特の世界観を生み出しているような感じでした。まあ、北森作品に慣れた頃に読むと意外といい感じなんじゃないでしょうか。

『大あたり殺人事件』 クレイグ・ライス 早川文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 『大はずれ殺人事件』で見当違いの殺人を探り当ててしまったジェークとヘレンは、新婚旅行でバーミュダへ。一方、残されたマローンは大晦日だというのに、酒場で独りグラスを重ねるだけ… そんなときにドアを開けて入ってきた一人の男は、マローンの名をつぶやくと床にくずおれ息絶えてしまった。果たしてこれこおsが、社交界の花形モーナが予告した殺人なのか?

 気が付けば殺人事件に巻き込まれてるってパターンですが、なんだかいまいち惹き込まれなかったなあと。一つは無理に事件をこじつけようとしている部分と、同時に都合よすぎる部分があるからかもしれませんね。サスペンスという盛り上がりもそれほどでもなかったし。というわけで普通でした。

『12月のベロニカ』 貴子潤一郎
 富士見ファンタジア文庫 BK1-3.gif (240 bytes)

 幼なじみの少女と交わした小さな約束。それを果たすために私は生きてきた。『ベロニカ』―――女神ファウゼルに仕える巫女の事だ―――になるため、彼女は十四歳のときに都会へ連れて行かれてしまった。
 私は”ベロニカの騎士”になるべく、彼女を追いかけて村を飛び出した。だが。次代の神の代理人として重要人物となってしまった彼女に、ただの田舎者でしかない私は会うことすら許されなかった。その時から私の旅は始まった。10年の間に、兵士からたたき上げ騎士になり、ついに”ベロニカの騎士”となる13人の候補に選ばれたのだ…

 なるほど、ミステリ読みの間で話題になってるのがわかりました。まあファンタジーなんですが、いわゆる○○○○○○が仕掛けられており、ファンタジーとして読むと唸るわけです。逆に、ファンタジー読みはこれで「おぉ」と思うのかも。ストーリも涙を誘う展開であり、大賞に輝いた作品だけあります。といってもありきたりなファンタジーでもありますが。今後の作品にどういうネタを使ってくるかが楽しみかもしれません。

『黄泉がえり』 梶尾真治 新潮社 BK1-3.gif (240 bytes)

 熊本で、局地的に死者が蘇る現象が多発。老いも若きも、死んだ当事の姿そのままで生き返る。外見は間違いなく本人だが、どこか微妙に違和感が――― 喜びつつも戸惑う周囲と、困惑し混乱する行政。彼らはなぜ、どうやって蘇ったのか。やがて聞こえる終幕へのカウントダウン。黄泉がえった死者たちに安息の地はあるのか?

 熊本で唐突に死んだ人々が生身の肉体で生き返り家族の元へ現れるという不思議な現象を扱ったファンタジーになるのかな。死者が生き返るというのは、それはそれでホラーっぽい雰囲気があるんですが、そのあたりはおどろおどろしくもなく、あっさりと受け入れられたりします。しかも爽やか系かも。そして、あとは結末に向けて物語が走り出すわけですが、物語的に盛り上がりとかはそれほどないんですよね、ただ”興味”に従って読んでいくのかなという感じで。そして予想外に「ぐっ」とくる結末がまっており、ちょいと涙。まあ、流してはないですが。映画化もしましたし、なかなか面白かったですよ。オススメかな。

『半落ち』 横山秀夫 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 「人間五十年」―――
 請われて妻を殺した警察官は死を覚悟していた。
 全面的に容疑を認めているが、犯行後の二日間の空白については口を割らない「半落ち」状態。男が命より大切に守ろうとするものとは何なのか。

 妻殺しの警察官が、犯行後の二日間の行動を黙秘するというストーリーですが、うーむ、私としては変化が無い小説って感じでしょうか。つまるところ物語りに起伏が無いため、それなりに引き込まれるんですが、どうも深みにはまれない。結末の感動のみのためにすべてが用意されているともとれますが、その結末に感動できなかったものだからちょっと拍子抜けというか、なんというか。私個人的には、普通かなあと感じました。上の戦争と一緒で、どんな理由があろうとも殺人は殺人なんですから。