『蜻蛉始末』 北森 鴻 8点
『真っ暗な夜明け』 氷川 透 7点
『ビタミンCブルース』 森 雅裕 7点
『麦の海に沈む果実』 恩田 陸 8点
『長く短い呪文』 石崎幸二 7点

『蜻蛉始末』 北森 鴻 文藝春秋 BK1-3.gif (240 bytes)

 明治十二年、藤田組贋札事件。身に覚えのない贋札に対する執拗な取り調べをうけ、問題の贋札を目にしたとき、藤田傳三郎は全てを仕組んだのが誰であるか知ることになる… 藤田傳三郎は明治維新という激動の時代を駆け抜けた商人。そして、彼の側には宇三郎という影のように寄り添う男が居た。

 江戸から明治への時代の流れに翻弄された二人の男、藤田傳三郎と宇三郎。そしてともに時代を駆け抜ける男たちを描いた物語。歴史に詳しいわけでもないので藤田伝三郎なる人物のことはなんの予備知識ももたずに読みましたが、それでも時代のうねりや黒い部分、諸々が見え隠れし、飲み込まれていきました。面白かったです、こういう時代の物語は読むのがしんどいときもあるんですが、なんというか引き込まれ、伝三郎は、宇三郎どう時代を乗り切っていくのかが、一気に読んでしまいました。すごいなぁと。

『真っ暗な夜明け』 氷川 透 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 推理作家志望の氷川透は久々にバンド仲間と再会した。が、散会後に外で別れたはずのリーダーが地下鉄の駅構内で撲殺された。現場/人の出入りなしの閉鎖空間。容疑者/メンバー全員。新展開/仲間の自殺!? 非情の論理が唸りをあげ華麗な捻り技が立て続けに炸裂する。

 本格デビュー作でメフィスト賞です。
 理屈でといていくというのはいいんですが、相変わらず作中の氷川は浮いてる印象がどうしてもね… そうですね、今まで読んだ氷川シリーズでは一番よかったと思います。穴も一応思いつかなかったですし。

『ビタミンCブルース』 森 雅裕 新潮社 

 カリスマ的な人気を博す美人歌手、千里を、ロンドンから友人の息子がたずねてくる。その友人はすでに他界し、少年には莫大な遺産が相続されることがわかると、次々に起こる殺人。トラブルがトラブルをよんで…

 えー、森雅裕が書いた森高千里の物語ですか? まあ具体的に名前を出すわけでもないですが、そんな雰囲気らしいです。
 まあ、ハチャメチャぶりのテンポも心地よく、適度にミステリでもあり、なかなか楽しめました。意外と楽しめると思いますよ。

『麦の海に沈む果実』 恩田 陸 講談社 BK1-3.gif (240 bytes)

 とある北国の湿原の中に突如現れる、4つの尖塔を持った陸の孤島「青の丘」。そこには「学園」が築かれ、不吉な言い伝えが流布されていた。「ここに三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」。そして、理瀬が「学園」にやって来たのは2月の終わりの日のことだった。

 『三月は深き紅の淵を』で断片的に語られていた内容でもあります。
 学園という閉鎖された環境で、一癖も二癖もある人間たちが互いを感じ、監視しあうという印象でしょうか。実に幻想的でもあり、つかみどころのない世界観は、読んでいる人をどろどろと夢想の世界へと連れて行ってくれるのかもしれません。
 「何をとりもどせますか?」 結末の子悪魔的な衝撃はいかがなものでしょうかね?

『長く短い呪文』 石崎幸二 講談社ノベルス BK1-3.gif (240 bytes)

 岐城島へようこそ。自分にかけられた「呪い」を解くため少女が帰った先は、その一族だけが住む孤島。かつて姉を交通事故死に追いやり、今度は妹の双子にまで伸びる魔手の正体とは? 木に刺さったネジ、腕を切断された人形が示す想像を絶する真相とは?

 あいかわらずのネタで、しょっぱなからの日本史(ミステリ)勉強はすごいなぁと。”呪い”との対峙がテーマです。いままでの石崎作品に比べると後半につれ笑いが少なくなってきたかなというのが不満でしょうか。最後、予想以上にミステリだったのも、なんというか予想外? 笑いを期待して読んじゃダメなんでしょうけどね。