穂高・滝谷

<穂高・滝谷報告>


無所属/四方立夫




 穂高・滝谷に行ってきましたので、報告します。少々長文です。

過去のアルパインの経験は、剣・八峰周辺を一夏、北岳・第四尾根を2回、そ れに一ノ倉・南稜を2ピッチだけ、と乏しいものです。

1996年8月11日〜14日

11日(日) 横浜(5:15)沢渡(10:30)上高地(12:20出発)涸沢(18:20)

 普段履き慣れたウォーキングシューズというか犬の散歩靴というかを履いての アプローチだったが、背中の荷物が重いと耐えれない安物らしく、明神で既に 足の裏は豆ができ始め、徳沢で靴下を買足し、何人もの人に追越されて横尾入 り。それより涸沢を目指す人は最早居らず、静かな径を成長し続ける豆の痛み と戦いながら登る。

 涸沢。岳人のメッカと思っていたら、カップルや家族のアウトドアの延長みた いなのが多く、岳人なんて探さないといない。かなりのショックを覚えた。

12日(月) 涸沢(6:20)北穂(8:50-9:05)クラック尾根取付き(10:20) 北穂(12:20-13:10)涸沢(15:20)

 本当は北穂南稜テント場にテントを張る予定だったが、とても担ぎ上げる体力 無く、ベースは賑やかなここ涸沢にし、登攀具だけで南稜を登る。

 北穂の小屋で350円の缶ジュースを飲み、キレット側に下っていくとB沢入 口と書いた小コルにでる。最初の一歩の踏み跡はあるが二歩めの踏み後はもう 無い、という感じがするほどガレガレ崩れるルンゼ。
 このクラック尾根はザイルが流れるだけでガーンガーンと落石が起こる。それ も岩ヒバリぐらいの大きさならかわいいが、サッカーボールから人の大きさぐ らいまで、ともかくなんでも崩れる。全て浮き石の岩稜って感じ。クライミン グジムではおなじみのホールドの取り方で、ぶら下ったり、ひっぱったり、ア ンダーホールドなんて、全て禁じ手。ただ押さえつけるだけでバランスを取り 、足だけで登る。フリーソロで浮き石掴んで落ちたら命取りになる。

 クラック尾根で安定した岩はジャンケンクラックのみ。でもここはザイルが欲 しかったので左手のフェースのクラックをザイルを出して登ってしまった。
 ここでは他に3パーティに出合い、一緒に話しながら登らせてもらった、7名 パーティがなんとなんと「どんぐり山の会」でした。坂上さーん、お世話にな りました。MLの内容から親切で優しそうな人、と思っていたらその通りの人で した。これからもよろしくお願いしまーーーす。
 沢に戻って、平らなところにテントを移動し、夕方までお昼寝。

13日(火) 涸沢(5:40)北穂(8:10)第二尾根P1(8:50)第四尾根コル(10:00) 縦走路(12:35)涸沢(17:50)

 夜半、雨がパラパラ降る。どうか今日は天の恵みの「沈殿」でありますように と祈りつつ眠るが、無情にも蝶ガ岳方面は紫から橙色に染まっていく。あきら めて、朝食のラーメンの準備にかかる。
 C沢下降して四尾根に出るのに1時間以上かかった。途中ザイルを出す涸滝の 下降で等身大の岩を落としてしまった。

 今日ここを登っているのは3人の1パーティのみ、1ピッチ目で追越しどんど ん先へ進む。CカンテはすっきりしているがてっきりW級のピッチと勘違いし 、ザイルを出して登った。両側切れ落ち高度感があって快適で、簡単だった。 おかしいなーと、ザイルをしまいながらガイドブックを見るとV級ピッチだっ た。
 その先のガレたルンゼ状の上のピナクルからツルムの肩までも固い岩なの でフリーソロでも思いっきり登れ気分がいい。ツルムのコルへはちょうど20 mの懸垂。浮き石ぽいところを一息のぼって右にスーと歩いていくと草付きか ら縦走路に出、第四尾根は終了。

 縦走路で荷物を広げ、裸足になって昼食を取りながらガイドブックを見ると、 「アリャーッ、最後のお楽しみ、Dカンテを巻いてしまっている」どうもルー トの弱点を登る本能というか習性が染み込んでしまっているらしい。グスン。 北穂の小屋に350円のポカリスエットを飲みに行く。南稜ばっかりでは面白 くないので東稜を下る。ゴジラの背を過ぎたところから北穂沢に下る踏み跡が 2本あるが、本当の径はもっと下だろうとどんどん下ると這松帯になる。最早 ルートを間違っているのを気付いていながら冬か5月の踏跡を頼りにしつこく 下るが、さすがに抜け切れる自信無く、とうとう登りかえした。もう一歩も登 る元気が無いというのに・・・

14日(水) 涸沢(7:30)横尾(9:45-10:10)上高地(13:30)

 本当にもう一歩も登る力が足には残っていない。あと2日滝谷をやる予定だっ たが、とうとう計画を放棄する朝が来た。と書くと何やら神妙だが、本心は 「ワーイ、ワーイ、下山だ、下山だ」とはしゃいでいる。しかし、特に横尾か ら先、足の豆の成長著しく、一歩足出すたびに目から火が出る痛みをこらえな がら歩いた。ヨダレ掛けをした子どもに追越され、腰の曲がったバアちゃんに 越されながら。

以上です。


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