硫黄尾根/滑落事故

<報告者>磐田山の会ケルン/山根


<遭難事故日>2006年5月5日(金)


大阪労山・カランクルンの鈴木様

労山・磐田山の会ケルンの山根です。

硫黄尾根の該当遭難パーティーは当方です。

・パーティー編成
 磐田山の会ケルン(静岡労山、本拠静岡県磐田市)
  山根 俊 34 男 (リーダー)
  木野 幸一郎 32 男

・計画
 5/3高瀬から入山。硫黄尾根を経由し5/5に西鎌へ抜ける。

・事故概要
  発生時刻 5/5 08:58
  発生場所 硫黄尾根 赤岳 通称P8 
  遭難者  木野幸一郎

  遭難状況
   ザイルをつけず、P8北側の急雪面をトラバース中、小リッジを
   乗越す際に両足を乗せた小岩峰が崩落。それとともに2m墜落。
   さらに急雪面を頭を下にした状態で、湯俣川方向へ雪の詰まった急峻な
   ルンゼをあお向けに滑落。
   ピッケル、バイルは腰に装着しており滑落停止は全く不可能であった。
   推定滑落高度差350m、水平距離500m

・事故直後の処理
山根は遭難者を視認できず、ザイルも届かないと判断した。
よって事故地点へザイル末端をハーケンにて固定し、ソロシステムで
35mほど先行者のトレースどおり登高。P8頂稜に出たところ、赤岳1峰を
登高していた先行2名と5名のパーティーを発見。救助要請した。

・救助活動
まず5名のパーティー(都岳連・好山会)と中山沢コル(P8から50m)で合流。
好山会アマ無線機(144MHz)は下界に全く届かず、受信も不可。
先行2名(おそらくカランクルン)へ、西鎌へ出て無線を試みるよう要請。
山根の無線機(144MHz3W)と高性能アンテナ(第一電波製RH770)を使用したと
ころ、諏訪のアマ無線局と連絡が取れた。しかし電波不安定。
その後、安曇野の無線局JH0WJEが強力に入感し、全連絡をWJEへ一本化。事故
状況ならびに現場の緯度経度を伝達。
以後、無線連絡を山根が行い、記録、収容準備、ビバーク準備などを好山会
に支援していただいた。

10:00ごろP8から木野を発見。推定滑落高度差は350m。上体を動かしているのが
見えたので、意識はあると判断。しかし立ち上がることはできない模様。
11:00ごろP8から木野の立ち上がる姿と笛を確認。動くことはできない模様。
11:55ヘリ松本空港離陸。
12:05ヘリ現場上空。無線でヘリと直接交信し、木野の場所を指示。
12:25収容完了
12:35ヘリ大町に到着、入院先は大町市民病院。

・遭難者 木野幸一郎の容態
右手剥離骨折(全治6週間)、そのほか軽い打撲。
事故時の記憶が失われており、ヘリ搬送時の一瞬しか覚えていない。
ふらつき感あり。

・事後経過
山根は好山会パーティーと合流して登攀継続。白樺台地に幕営の後、5/6に
新穂高下山。木野は5/6PMに転院許可が出たため、自家用車にて静岡へ帰郷。

カランクルンの2名、また好山会の5名の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。
絶対に助からない墜落状況で、無傷に近かったのは奇跡でした。
運がよかったとしか言えません。あんな落ち方で助かることは普通ありません。
ザックは破れ、つけていたスコップには酷く深い傷が付き、ヘルメットも傷だらけ
でした。

ご協力いただいた皆様に、深く感謝しております。
この場をお借りして御礼申し上げます。木野はおかげさまで元気です。

正式な事故報告は現在作成中であります。

磐田山の会ケルン 山根 俊
  
suzuki & fujita さんは書きました:
>ACMLの皆さん、こんにちは。
>大阪労山・カランクルンの鈴木です。
>
>北アルプス・硫黄尾根に5/3に入山し、久保田さんとともに2名、
>本日無事に下山し、ただいま自宅に着きました。4日間とも晴れでした。
>
>ところで、5/5、硫黄尾根で滑落事故がありましたが、
>安否をご存じありませんでしょうか。
>
>4・5と一部行動を共にしたのですが、事故が起こったときは
>赤岳ジャンダルムに先行していまして、もっていた無線で交信をして
>事の次第を知った次第です。
>無線で緊急事態、救援を頼もうとしたのですが、他に無線がつながらず、
>ともかくも、西鎌尾根まで行って連絡をとってくれ、ということになりました。
>でも、その前に連絡がつき、12時ころ、ヘリコプターがやってきました。
>沢の中程でホバリングしていましたので、かなり滑落したようです。 

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