奥武蔵/河又の岩場

<報告者> ARIアルパインクラブ/加茂谷


<遭難事故日>    2004年5月8日(土)


加茂谷です、こんばんは。

大変遅くなり、申し訳ありません。

今日、8日午後2:30頃(推測)、河又、シュテファンフェイス奥のタワーロック
で、単独クライマーの墜落事故がありました。以下その時の模様の報告です。

2:40頃、河又、鍾乳洞入り口あたりに救急車と、消防車が集まるようなサイレンが
きこえました。と、同時にシュテファンにいた二人のクライマーが急ぎ、下に降りて
いきました。

2:46頃、頭上をヘリコが旋回を始めました(この後時計を見ていません)。何事か
あったと思い、コウモリ岩Dブロックの切り開きに上がると、赤いセーターを着てい
て目立ったのか、ヘリコから問いかけがありました。事故の通報があったがけが人の
所在を知っているか、とのことでした。ここで初めて事故があったことを知りまし
た。

そこに、先ほど降りていったシュテファンのクライマーが上がってきて状況を聞き、
ヘリコをシュテファン近くの小さな切り開きに誘導しました。
さらに奥に行くと、ロープをマット代わりに横たわっているクライマーが一人いまし
た。頭に大きな傷があり、かなりの出血が見られました。顔面は蒼白で、目はうつ
ろ、ふるえがきていて、体は冷たくなっていました。問いかけに対する答えはあまり
はっきりしませんでした。この時点での意識レベルは1でした。

見るとレスキュー隊員がホイストで下降してきます。隊員に駆け寄り、上記を報告、
搬出を委ねました。頭部を強打しており、素人が動かす事は不可能でした。

このころになると、コウモリ岩にいたクライマー全員と、地上からの救急隊員も到着
し始めました。全員、救急隊員の指示に従い、てきぱきと動いていました。足の不自
由な自分が歯がゆく感じたときでした。

事故者は意識が薄れ、ほとんど無いようでした。救急隊員が装着した酸素マスクの曇
り方でかろうじて呼吸している事が分かりました。

首を固定し、脊椎を固定するボードに乗せたとき、意識を取り戻し、救急救命士の問
いかけに、とぎれとぎれながら答えていました。血圧は低いながらも安定していたよ
うです。その後、ホイストピックアップ用のメッシュ担架に載せられ、レスキュー、
救急隊員の手によって50m程はなれたピックアップポイントに運ばれ、レスキュー
隊員一名と共にヘリコにピックアップされていきました。

ヘリコが我々の頭上を旋回してから、ピックアップされるまで、約1時間ほどだった
でしょうか。頭上にホバリングしているヘリコの風を受けながらの作業はかなり難儀
でしたが、結構迅速な救出だったと思います。

その後元気な若い者は、地上に残った救急隊員の荷物の搬出を手伝い、いろいろな使
われなかった装備を背負ったり、手に持ったりして下まで降りていきました。

聞いた所によると、この単独クライマーは驚いた事に、事故現場から歩いて来て救出
を求めてきたたそうです。樋口が残置ロープを発見し、事故現場が特定されました。
それまでシュテファンフェース裏側あたりと思われていましたが、タワーロックだっ
た事が判明、レスキュー隊員を案内し、実況検分。あたりには血痕が残っていまし
た。

事故者は、ハーネスを装着していましたがまだアプローチシューズだったことで、お
そらくは、目標のルートにフィックスロープを張るべく、裏側から登ったものの何ら
かのアクシデントにより、墜落したものと思われます。頭部の傷の具合や出血の様子
から、しばらく気を失った後で助けを求めに来たものと思われます。おそらく、彼は
助かるでしょう、後遺症も残らずに。

ヘリコが2機、レスキュー隊員、救急隊員合わせて12名。そして、我々が帰る時警
察官3名が、現場検証に上がって来ました。その他クライマーが15,6名。たった
一人の事故者のためにこれほどの人間が動きました。迷惑だとは全く思いませんが、
大変なものだと思いました。

クライミングとは危険なものだと改めて感じました。皆さんも、もう一度安全点検を
してからクライミングに臨みましょう。怪我、事故などのないように。

それでは。

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