質問内容/回答

<質問>

こんにちは。同流山岳会の磯川と申します。 初めて質問させていただきます。
ダブルロープとツインロープの違いについて教えてください。 ある技術本にダブルロープ2本を
1個のカラビナに通すのは禁じてと書いてありました。 これはどうしてでしょうか? また、ツ
インロープという上り方は“2本を1本のように使っていく方法”とかいてありました。これだと、
2本のロープを1個のカラビナに通して登っていくと解釈できますがダブルロープの禁じてになっ
てしまうと思うのですが・・。 どうぞよろしくお願いします。 

<解答> 


川上@MSCCです。
私なりの解釈なので参考までに。

ダブルロープ:
ドッペルザイル(Doppelseil)古くは二重ロープなんて言い方もしまし
た。
シングルに対してダブルという表現です。
支点の多いルートや複雑なルート(Zピッチ)または、ワイド・チムニーなどで左右
の壁にランニングを取るときに振り分けて使います。
メリットは、主に次の2点。
1.ロープ・ドラッグが少なくなって、ロープの流れが良くなる。
ルートの支点にあわせ、ロープを振り分けて、ランニングを取るので、墜落の時に
は、どちらか一方のロープが一方的に或いは他方のロープより速く流れます。つまり
2本のロープの流れかたが違うので、ひとつのビナに2本のロープかけておくと摩擦
で溶断してしまう恐れがあります。
”ダブルロープ2本を1個のカラビナに通すのは禁じて” というのはそのためです。

2.ロープが2本になるので、安全性が高まる 
確率論として、シングルだとロープの切断は 0(なし) 1(切れる) で切れる
確率は1/2
ダブルであれば、 1,1  1,0  0,1  0,0 で 切れる確率は1/
4 になります。
一般的に Φ9mm か Φ8.5mm が使われます。
ちなみにシングルだと Φ10.5〜Φ12 というのが一般的だと思います。
アルパインでは、Φ9mm シングルなんかも使われるケースがままあります。
僕もたびたびやります。


ツイン・ロープ
こちらも2本のロープを使いますが、あたかも1本のロープ(シングル)のようにし
て使う方法をいいます。
常に2本対にして使うのでツインという言葉を使っているんだと思います。
基本的に2本のロープは同じ速度で同じ方向に引かれますから、1個のカラビナに通
して登ることが出来ます。
神経質な人はツインでもビナ2枚使う人もいるようですが、軽量化もメリットのひと
つなので、そのメリットがスポイルされることになりますね。
Φ8.5mm以下の細いロープを使用する時に使います。理由は単純で引っ張り強度
が太いロープより小さい。伸びが大きいということです。
ダブルロープ(Φ9mm)のクライミングでもルートが直線的な場合はツインとして
使います。但し、ツインにした場合、そのピッチはツインで通しきらないと上記の理
由からロープ溶断の恐れがあるので危険です。(ビナ1枚に2本かけてる場合)

どちらにも言える共通のメリットは、懸垂時シングルの折り返しよりも長い距離を降
りられるということ。
その根源は、やはり軽量化です。
ケース・バイ・ケースで補助的にロープを使う場合は、Φ8.5mm以下でもシング
ルで使うことがあります。

ロープメーカーでは、ダブルとツインを明確に指示しているところもあるので、強度
などの関係はそちらを参照してください。


同流山岳会の磯川さん、川上@MSCCさん、こんばんは、新保@“昴”です。 川上さんがお答えされた事について補足です。 ●シングルロープ 径9.4〜11.0mm UIAA規定1本で12KNの衝撃荷重。 フリークライミングではこの種が主に使われる。 ●ダブルロープ  径8.1〜9.0mm  2本のうち1本だけ使用も可。 UIAA規定1本で8KNの衝撃荷重。 アルパインクライミングではその殆どがこの種のロープが使われる。ジグザグなルー トも容易に流し易いというダブルロープシステムの利点がある。 ●ツインロープ  径7.7〜8.5mm 2本を一緒に使う。 UIAA規定2本で12KNの衝撃荷重。 アルパインクライミングで主に使われる。ロープ2本のためフリークライミングでは 不向きである。
川上さんこんにちは。 鹿野@グループ山想です。 あくまで僕個人の考えでなんですが、、 > > ダブルロープ: > > メリットは、主に次の2点。 > > 1.ロープ・ドラッグが少なくなって、ロープの流れが良くなる。 > > 2.ロープが2本になるので、安全性が高まる  ・・・上記に加えて距離が稼げると言う事もあります。 勿論ルートにもよりますが、ロープの流れが複雑なほど稼げます。 そのようなルートであれば同じ50mロープ目一杯でもシングルに比べ10%程度は すぐ稼げているようです。
東京岳人倶楽部の平澤です。 自分の体験でお話しますと、ダブルで、20m近く落ちて、一本切断、もう一本で命 拾いという体験をしています。 一本のロープが岩角にひっかかって、おそらくそれで切れたのだと思います。 ダブルはそれなりの危険を分散させる効果があるという実体験です。 アイスの時はツインで登っていますが、よくよく考えると、支点にかかる衝撃は、ダ ブル(つまり支点では9mm一本)よりはかかるかもしれませんね。皆さんこのあたり はどう判断されますか?
平澤さんこんばんわ、 鹿野@グループ山想です > 自分の体験でお話しますと、ダブルで、20m近く落ちて、一本切断、もう一本で 命 > 拾いという体験をしています。 > 一本のロープが岩角にひっかかって、おそらくそれで切れたのだと思います。 > ダブルはそれなりの危険を分散させる効果があるという実体験です。 ・・・それは貴重な体験でしたね。 上記の件当然のことながら私も平澤さんのご意見にまったく同感です。 川上さんも述べておられるようにダブルは衝撃を分散させる効果が確実に存在する事 は誰もが認めるところだと理解しています。 ・・・余談ですが、シングルを使う場合はルートにもよりますし、それを使うクライ マー自身の問題もありますから、画一的な判断ではなくあくまで使う人のレベルにも とすく判断、そして自己責任の世界であると言う事を申し上げました。

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