質問内容/回答

<質問>  こんにちは。福岡在住の蜂谷一彦@無所属です。

 鳥取・伯耆大山の北壁のなかで、比較的入門ルートとされている「弥山尾根」ならびに、「別山バット
レス」に関して、詳しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ルート状況をご教示いただけないで
しょうか。

 また、大山のその他のルートについても、何か情報がありましたら、ご教示いただけると幸いです。

 どうぞ、よろしくお願いします。

<回答>中田宏です。

 今年の2月7日に別山バットレス中央稜を登りました。

(前泊した)駐車場から、元谷小屋までの途中、堰堤のところから見える将棋の駒のように突っ立て
いるのが別山です。

 小屋からは樹林の中の尾根をつめました。トレースがなくてラッセルが結構しんどかった。木がな
くなるあたりから左にルートをとり、ルンゼをトラバース(雪崩注意)して中央稜の末端へ(まんな
かに、もじゃもじゃとした木と岩があるので、視界が利けば明瞭です)。木が切れた地点から弥山稜
までトラバースしてして取り付いているパーティもいました。元谷小屋から取りつきまで2時間程度。

 自分たちは中央稜の末端から取りついたのですが、下部のほうは木登りでアンザイレン不要。他の
パーティは左から回り込んで、下部はパスしていました。

 中央稜を3分の1ほど登ると傾斜がきつくなり、岩混じりの雪壁のぼりとなります(パス組とはこ
こで合流)。技術的に難しいところはありませんが、プロテクションが取れません。細いブッシュし
かなく、岩がもろくてロックハーケンも効きません。

 積雪量があまりないので、ピッケルもアンカーにできませんでした。何ヵ所かはボルトがあるとこ
ろもありました。上部3分の2は、ほとんどのパーティがアンザイレンしています(支点がとれない
のでしないという考えもあるかもしれませんが)。
 
 別山の頂上稜線はナイフリッジで高度感がすごいです。核心部は頂上稜線から裏側への10メート
ルほどの下降で、馬乗りになってバックで下りました。ビレイの支点はほとんど取れませんが、もし
落ちたら「飛び込み」で止まると思います。ロープワークのまずさ、体力のなさ、中央稜の末端から
取りついたこともあり、6時間以上かかりました。

 稜線裏側の下降が終わればザイルは不要。弥山小屋の近くの稜線まで登り返して、夏道を駐車場ま
で下りました。この時は九ミリダブルを使ったのですが、シングルのほうが良かったと思っています。

 大山は吹雪くと、かなり荒れますので天候には注意を払ってください。

<回答>山岡@はりま山岳会(兵庫労山)です。

At  9:31 PM 98.12.20 -0800, 蜂谷一彦(Hatiya_k) wrote:
蜂谷一彦>鳥取・伯耆大山の北壁のなかで、比較的入門ルートとされている「弥山尾根」
蜂谷一彦>ならびに、「別山バットレス」に関して、詳しい情報をお持ちの方がいらっし
蜂谷一彦>ゃいましたら、ルート状況をご教示いただけないでしょうか。
蜂谷一彦>また、大山のその他のルートについても、何か情報がありましたら、ご教示い
蜂谷一彦>ただけると幸いです。

 まだ、大屏風と弥山尾根しか登ったことがないのですが、知っている範囲でお答えします。

 大山北壁は通常、元谷小屋をベースにします。大山駐車場から元谷小屋までは徒歩で約1時間です。

 元谷小屋から沢沿いに登って行くと、左に大きな岩が見えます。これが、大屏風です。沢をまっす
ぐ登ったところよりも右手に弥山尾根はあります。別山バットレスはさらにその右だったと思います。

 どちらも2〜4時間で稜線に出ます。下山は、通常、夏山登山道沿いになります。夏山登山道は途中
から折れて元谷小屋にトレースなしのところを向かいます。僕たちはいつも適当に下りてます。大屏
風を登った時は、僕たちはユートピア小屋経由で下りました。

 弥山尾根は一応確保をブッシュを使って取り付きから上部まで取りました。岩はほとんどありませ
んでした。最後は雪壁になります。別山バットレスは一部確保を必要とするところがあるようですが、
パーティの力量にもよるでしょう。

 シーズンは雪崩のことを考えると、2月中旬から3月が良いようです。白水社の登山体系の確か10巻
目に解説があったと思います。

<回答>広島山岳会・溝手康史

大山北壁は毎年何度か登っています。
               
・鳥取・伯耆大山の北壁のなかで、比較的入門ルートとされている「弥山尾根」ならびに、「別山バット
レス」に関して、詳しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ルート状況をご教示いただけないで
しょうか。
 
「弥山尾根」
 12月下旬から3月中旬ころまで登れると思います。雪が少ないとブッシュがひどく、雪が多いとラッ
セルに時間をとられます。右尾根と左尾根がありますが、グレードは同じ。支点は木もしくはハーケンで
すが、ハーケンは「釘のようなアイスハーケン」が重宝します(大山北壁の必需品)。大山北壁は泥壁が
特徴的であり、これを凍結した砂利混じりの泥壁に打ち込む(凍結していればよく効きます)。長さのな
いロックハーケンは泥壁ではあまりききません。ロックハーケンがうてる固い岩は弥山尾根ではほとんど
なく、バットレスでは場所が限られます。ルートが長いので雪の状態によっては意外と時間がかかること
がある。取付までは、弥山沢の雪崩に注意が必要。
 
「別山」
 バットレス中央稜、右尾根、幻のカンテなどのルートがあります。
中央稜がもっとも登る人が多い。支点はところどころにある岩に打ってある残置ハーケンと木でとります。
基本的には残置ハーケンと木で支点は十分ですが、支点が雪に隠れて発見できない時もあるので、上記の
「釘状アイスハーケン」があれば確実な支点がとれます。中央稜の取付は沢をできるだけ上部まで詰める
と登攀時間を短縮できますが、雪の状態によっては、尾根の下部から取付く時もあります。中央稜の下部
になるほどブッシュが多いので、煩わしい登攀になります。5ピッチ。
 
右尾根は中央稜の取付の少し下からさらに右に約80mトラバースして取付きます。右尾根は弥山尾根程
度のグレードで4ピッチで別山のピークに出ます(ここで中央稜ルートと合流)。 
 
「幻のカンテ」   
中央稜の向かって左方の尾根の上部にあります。尾根の下部から取付くとブッシュに悩まされます。4ピ
ッチで別山のピークですが、崩壊の激しい岩を積み重ねたルートで、冷え込んだ日でないと登攀不可能も
しくは危険です。ここは、毎年ルートが変わると言ってよく、残置支点はほとんどないので、すべての支
点を自分で打つ必要がありますが、あまり効きません。グレードは中央稜よりは数段高い。
     
・また、大山のその他のルートについても、何か情報がありましたら、ご教示いただけると幸いです。
 
「鏡岩ルート」 
大屏風岩のもっとも岩が下方に伸びているあたりに「中央カンテ」ルートがかつてあったようですが、そ
の右手側の雪壁が少しせり上がったあたりが取付。3ピッチ目まではボルト、ハーケンもあり、登りやす
いが、4ピッチ目から以上はかつてのルートが崩壊している。
 
「屏風岩西稜」 
大屏風岩の最も右端の尾根ルート。取付は垂壁になっており通常A1で越える。核心は1P目。後は雪稜
、雪壁となるが、雪が少ないと部分的に泥壁の登攀となる。8ピッチ。
 
「港ルート」 
鏡岩ルートのずっと左の方が取付。地震前は支点もありフリー主体(一部はA1)に岩壁の弱点を縫った
ルート。8ピッチ。ルートの終了点から懸垂で下降できる。地震以後の状況は不知。 
 
「墓場尾根」  
右尾根と左尾根がある。最初から最後まで泥壁をダブルアックスで登る。14ピッチ。残地支点は一切な
し。自分で釘状ハーケンなどで支点をとる。途中からの下降は困難。
 
「天狗沢」 
墓場尾根と屏風岩の間の沢で氷壁、雪壁状となっている。天狗沢の左の沢は元谷沢で雪崩の巣。雪が少な
く凍結した時はアイスクライミングとなるが(スクリューハーケンが使える)、雪が多いとラッセルに終
始する。沢の上部では左方の稜線をめざさないと行き詰まってしまう。降雪後は雪崩の恐れがある。入門
的ルートだが過去何件も死亡事故がある。

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