甲斐駒ヶ岳/戸台川支流/カミニゴリ沢・小百合沢(初登)氷瀑

ARIアルパインクラブ/有持真人、原岳広、青木徹也


< 記 録 > 有 持 真 人


<山行日>     1997年3月2日(日)カミニゴリ沢/F1〜F2
                  10日(月)カミニゴリ沢/F2〜F4
                       小百合沢  /F1〜F3

<メンバー>    (ARIアルパインクラブ)有持真人、青木徹也(2日)
                        有持真人、原岳広 (10日)

<場所>      南アルプス/甲斐駒ヶ岳/戸台川本谷支流カミニゴリ沢周辺

<ルートグレード> カミニゴリ沢/3級・小百合沢/2級

<ピッチグレード> カミニゴリ沢/V+・小百合沢/V−

★ 記録写真    ★ 概念図ここをクリックして下さい。

★ カミニゴリ沢  ★ 小百合沢
<記録>
 今回は、年末年始に<戸台川支流/舞鶴ルンゼ>を初登した時に別の沢に氷柱を見つけ、調べた所まだ未登であると確認 できたために、この氷柱の初登を目的として入山する予定だったが、ひょんな事から別ルートのの<カミニゴリ沢/小百合 沢>の2本を初登する事になった。

3月2日(土)雨〜雪〜晴れ

 前日の2日は吹雪の中を赤岳主綾を登攀し、夜に小淵沢駅で青木と合流し戸台へと向かう。

 2日はかなり暖かく、2000m付近でも雨であったが夕方から寒気が流入してきたため段々と冷え込んできた。目的の 氷柱は標高が低い所にあるために登攀可能であるか心配になってくる。

3月3日(日)晴れ〜曇り<カミニゴリ沢/F2まで>

 戸台 〜 丹渓山荘 〜 カミニゴリ沢出会 〜 F1 〜 F2終了 〜 戸台
 0520        0650     0730/0800     0900   0130    1500
 戸台には車が3台しか止まっていない。年末年始には駐車スペースがないほどであったが、この季節にはほとんど入山者 はいないようだ。とりあえず丹渓山荘へ向かって出発する。

 丹渓山荘の手前から目的の氷柱を見ることができるのだが、年末年始にはあれだけ発達していた氷柱が遠目に見てもかな り小さくなっているではないか。先週はしばらく暖かい日が続いたし、昨日の雨の影響ではないかと思われる。

 これでは取り付きまで行ってみても無駄足だし、どこか近場の氷柱でも登ってみようと思ったが何か気乗りがしない。既 成ルートを登るのも良いがどうせなら未登の滝を探してみようと言うことになった。

 <この滝は登攀可能だった様で、この翌週にJECC/廣川健太郎氏らが初登した。>

 丹渓山荘に向かう途中にあちこちを観察しながら歩いたのだが、その時に左岸の上部に滝らしきものをチラッと見かけた のを思い出した。

 青木と相談し、<せっかく来たのだからだめもとで行って見よう>と言うことになり今来た道を引き返す事にする。

 この滝は登山道を歩いていても、樹林の陰でほんの少しの間しか見ることができない。場所を良く覚えていなかったので 注意深く探しながら歩いて行く。30分ほどで沢の出会に到着した。

 見上げて良く見てみるとかなり発達している様だ、樹林のために一部しか見えないので登攀可能かどうかは行ってみるし かない。

 積雪は少なく多い所でもクルブシ程度である。30分ほど登ると滝の全景が見えてきた。

 この滝<F1>はカミニゴリ沢を横切っている<南アルプス林道>にかかっており、幅が約30m、高さが約50mはあ りルートは5本は取れる。雰囲気的に氷瀑のゲレンデと言った感じで、大勢で来ても順番待ちなどしなくても良いぐらいの スケールがある。

 グレードは登る場所によってIV+〜V+まであり、全てのルートでトップロープが可能である。そのためこの氷瀑は、初 級者から上級者まで楽しめるゲレンデになるだろう。

 滝の名前はF1を最初に見たときに、思わず綺麗だなと思ったところから<綺麗の滝>と命名した。

 とりあえず、左端にある氷柱を登ることにする。高さは約15mで90度、グレードはV級より少し難しい程度である。 時期が遅いせいかツララの集合体が溶けて表面がナメ状になった様な感じであった。

 スクリュー5本で完登し雪壁を登ると立木があり、ここにトップロープをセットする。トップロープを掛けるためには、 50mザイルが必要だがギリギリの長さである。

 次は一番右端の完全なナメ滝を登攀し、<南アルプス林道>にでる事にした。このルートは45mザイルでは林道まで はとどかないため、中間部でスクリューでピッチを切った方が無難である。

 高さは約50mで70度〜80度、グレードは下部がIII〜IV級で上部がIV+であり、快適に駆け登る事ができる。

 今回は45mザイルだったためにビレーポイントを移動してもらっても林道までとどかず、林道直下の立木でピッチを 切った。

 林道まで登ると、この滝だけで終わりだと思っていたのだが、林道をはさんで更に上部に氷瀑があるではないか。

 F2は高さが約18mで80度のナメ滝で、グレードはIV+である。懸垂下降のためにザイルだけ引っ張ってフリーソ ロで登る。すると更に上部に比較的大きな氷瀑F3があるのが見えた。見た感じでは約30mほどのナメ滝の様である。

 F3を登攀したかったが、登攀すると青木の帰りの電車の時間にまに合わなくなる可能性があったため、来週に再度登 攀する事にしてあきらめて下山した。

 私たちが下山後にJECC/廣川健太郎氏らのパーティがF1を第2登した。

3月10日(月)晴れ〜曇り<カミニゴリ沢/小百合沢>

 戸台 〜 カミニゴリ沢出会 〜 F1 〜 F4終了 〜 南アルプス林道 〜 小百合沢/F1 〜 
 0530           0630           0815        1030     1130/1200     1230/1245          
 F3 〜 F1取り付き 〜  戸台
 1420   1445/1500        1630
 今回は、2月に入会したばかりのアイスクライミングは初めての新人の原と一緒に入山する事になった。

 取り付きでアイスクライミングの基礎を教えて登攀を開始する。最初は少しとまどっていた様だが、パワーがあるので 豪快にバイルを降りながら登ってきた。

 F2の上部はガレ沢を少し行くとF3のナメ滝がある。下部から見るとF4と重なって見えかなり大きな滝に見えたの だが、10mの簡単なIII級程度のナメ滝になっていた。

 F4は2段の滝で一番長い所で60mあり、幅がかなり広く30m以上はあるだろう。そしてIV〜V級の各種ルートが 4本程度取ることができる。

 今回中央部のV級のルートを登った。下段はIV級のナメから垂直の凹状になりここがV級になる。乗越した所がバンド 状にになっており立木でビレーとなる。

 新人の原も初めてだというのにV級を難なくと越えてきた。これからが楽しみな奴だ。次のピッチはIII〜IV級のナメ 滝で快適にガンガンと登れる、ザイルを目一杯のばして倒木でビレーをする。

 ここで、後続のJECCの廣川健太郎氏らのパーティが追いついてきた。廣川氏は8日から入山しており、2本の滝を初登 したと言うことであった。

 F4の上部は稜線が見えており、ここで終了とし同ルートを下降することにした。

 廣川氏らとは南アルプス林道で別れ、我々はカミニゴリ沢の支流にある氷瀑を登ることにし、途中から登り返してF1 の取り付きへと向かう。

 この氷瀑は、カミニゴリ沢を出会から登っていくと左側にある枝沢に掛かっている。見た目には簡単そうに見える。

 この滝は遠目に見たときは10〜15m程度にしか見えなかったのだが、実際には最長部で35mありなかなか登りが いがあった。

 下部はIV+で上部になると急になりV級程度はあった。抜け口はベルグラになっており部分的に氷が無く水が流れてい る。傾斜は少ないのだが、V級の氷より難しく感じた。終了後は立木でビレーをする。

 その後、雪壁を登っていくとF2に行く手を遮られる。F2は南アルプス林道下部に掛かっており、下部が約12mで III〜IV級のナメ滝で上部は約8mでV−のナメになっている。終了後はガレを少し登り南アルプス林道にでて道路標識 でビレーをする。

 この沢は、無名だと思っていたのだが林道に<小百合沢>と看板が掛かっているではないか。誰が付けたのだろう。小 百合沢と言うことはF1が<吉永の滝>でF2が<小百合の滝>にしようかと原と冗談を言い合う。

   原がフォローで登っていたのだが、核心部でとうとう力つきて墜落してしまう。力任せにバイルを振っていたので握力 が無くなってしまったようだ。仕方なくロワーダウンして取り付きまで下ろした。

 上部にはF3があり8mのIV級程度だったのでフリーで登り、クライムダウンをする。右岸の尾根から下降してF2の 取り付きに戻ると、核心部にスクリューを回収できずに残置してあったので再度登り返して回収しクライムダウンして取 り付きに戻った。

 下降は、F1を懸垂下降して取り付きに戻る事ができる。F1の取り付きから右の沢の上部に更に20mほどの氷瀑が 掛かっているのが見えた。林道の直下にあり登り返すのも面倒なので登らずに下山することにした。

 カミニゴリ沢周辺は氷瀑が集中しており、戸台から一番近い所に位置しているゲレンデと言ったところでで、八ヶ岳で 順番待ちをしてアイスクライミングをするなら、少し遠出をしてでもここでアイスクライミングをした方が充実したクラ イミングを楽しむ事ができるだろう。

 初級者から上級者までレベルに合わしたルートの取り方が自由にできるので、1日いればゲップがでるほどアイスクラ イミングができるエリアである。

 アプローチも八ヶ岳より近いし、マウンテンバイクがあれば白岩堰堤まで走る事ができるので更に時間を短縮する事が できる。

 適期は12月中旬から3月中旬だが、北面にあるために3月下旬まで登れるかもしれない。

   各滝のスケール、最高角度及び最高グレード、下降、普通に使用した場合の使用ギアは下記の通り。

<<カミニゴリ沢>>

 F1(滝の左から)
    15m V+ 90度 スクリュー×5本
    15m V− 80度 スクリュー×3〜4本   
    15m IV+ 70度 スクリュー×2本
    40m IV+ 70度 スクリュー×3本
    50m IV+ 70度 スクリュー×3〜5本

 F2 18m IV+ 70度 スクリュー×2本
 F3 10m III  60度 無し
 F4(下部の滝/左から)
    25m IV  70度 スクリュー×2本 
    20m V  85度 スクリュー×3本
    15m IV+ 70度 スクリュー×2本
   (上部の滝)
    40m IV  60度 スクリュー×2本

 <ザイル>9mm×45m×2本、又は50m×1本

 <下降>
  F1のみの場合は立木で25mの懸垂下降。ザイルは2本必要。左岸の尾根からも降りられる。
  F2も立木で22mの懸垂下降。
  F3は簡単なのでクライムダウン。立木で懸垂下降も可能。
  F4は右岸の急な尾根からクライムダウンを交えて下降。懸垂下降も可能。

<<小百合沢>>

 F1 35m V  85度 スクリュー×3本
 F2 20m V− 80度 スクリュー×2本 
 F3  8m IV  70度 フリーソロ

 <ザイル>9mm×45m×2本

 <下降>
  F1のみの場合は立木で40mの懸垂下降。ザイルは2本必要。
  F2も立木で20mの懸垂下降又は、左岸の尾根から下降。
  F3は簡単なのでクライムダウン。立木で懸垂下降も可能。

<<カミニゴリ沢周辺へのアプローチ>>

 戸台から丹渓山荘へ向かって工事中の堰堤、白岩堰堤を越えて石積みの堰堤から約150m上流がカミ
ニゴリ沢出会。出会にはケルンを積んでおいた。

 カミニゴリ沢周辺は、大雪の直後などは雪崩の危険があるので注意が必要である。

 戸台 〜 カミニゴリ沢出会       約1時間
 出会 〜 カミニゴリ沢/F1(綺麗の滝)約40分
 出会 〜 小百合沢/F1        約40分

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