徳島県日和佐町/千羽海崖/愛は定め

はりま山岳会/山岡人志、井上正志、森本英之、高野努


<山行日> 1999年4月24日(土)〜25日(日)<記録> 山岡人志



ルート名:『愛は定め』
ルート :全4ピッチ。前述の『南風』の右側。
グレード:ルートグレードIV級(A1, 5.10a~b, 4 pitch, 130 m)
     使用ロープ50 m
所要時間:4-6時間
開拓日 :1999年4月24日(土)〜25日(日)
メンバー:山岡人志(40歳、リーダー、はりま山岳会、兵庫労山)
     井上正志(37歳、岩と雪の会こぶし、兵庫労山)
     森本英之(39歳、岩と雪の会こぶし、兵庫労山)
     高野 努(27歳、岩と雪の会こぶし、兵庫労山)
概要:

<<1ピッチ目>>20 m, 5.9。30分。

 リードは井上。岸壁帯の右寄りのすっきりしたフェースが取り付き。そこのク ラックを登り、上部の潅木で終了。最初、高野がリードするが、休もうとして テンションをかけたエイリアンがはずれ滑落。そのショックで下のフレンズも はずれすぐ下の最初にとったフレンズでグランドフォール寸前でなんとか止ま る。しかし、この墜落で高野は足首を軽く捻挫してしまい、本日は取り付きで 待機となってっしまった。変わりにリードを井上に交代。山岡、森本とフォ ローする。

<<2ピッチ目>>40 m。A1, III。2時間。

 山岡リード。5 mほどブッシュ帯を左上して、大きな松の潅木の左のハングを 越えるルートを取る。あとは直上。ハングを越えて少しいったところで、ピト ンが抜けて数mフォール。しかし、再び登り返し、アングルを決めてここをク リアー。上部はIII-IV級程度の岩。初日はここで時間切れ。フォローなしで ロープをフィックスし下降。

<<3ピッチ目>>30 m。5.8。30分。

 井上リード。井上、森本、山岡は昨日のフィックスをユマーリングして2ピッ チ目の終了点へ。復活した高野は、1ピッチ目からフォローで登り、2ピッチ 目はクリーニングする。3ピッチ目のルートは右上にクラックのあるフェース を目指して右上。終了点前のフェースが少しいやらしい。終了点は潅木がない のでここで初めてボルトを2本打つ。

<<4ピッチ目>>40 m。A0, 5.9+ (5.10a~b)。1時間20分。

 井上リード。角ばったハンドクラックが続く。最初はかぶり気味。井上はフ リーで行こうとしたがあえなくA0になってしまう。フォローした山岡もこら えきれず、フレンズにテンションをかけて休んでしまう。クラックのうまいひ とならそんなに難しくない(5.10台前半)のでフリーですんなりと越えられる だろう。でも下は約 80 m切れ落ちているので勇気がいるだろう。上部のワイ ドクラックもやさしくない。最後は右に回りこみ数mをフェースを越えて終 了。

取り付きと下降:

 この岩場は全体として岩がもろいが、今回のルートは前述のルートよりはま しであった。取り付きは、岸壁帯の右寄りのすっきりしたフェースにあるク ラックから。

 下降は各ピッチブッシュと潅木を利用。但し、3ぴ地目の終了点にはボルト が2本ある。各ピッチ目終了点にスリングが残置してある。ルート最後の終了 点から4回の懸垂下降で取り付きに降りられる。

必要なギア類:

 ナイフブレード、バガブーのような薄手のピトンが6-7本。ロストアロー5-6 本程度。アングル3-4本。エイリアン1セット以上あると便利。フレンズ4番ま で2セット。4ピッチ目のクラックで大きめのカムが有効。確保と下降用にス リングが多数必要。ビレーシートがあると楽。ロープは50 m2本。ルート途中 での残置ピトン類は全くなし。

岩場までのアプローチ:

 国道55号線を南下し日和佐町に到着すると、市街地を抜けて阿波サンライン に行く手前約100 mのところ(正確ではない)を左に折れる。少し行ったとこ ろから山並の低いところを目指して右に折れて民家のわきを抜けていくと、千 羽海崖へ向かう遊歩道の入り口にでる。この入り口はわかりにくい。ここから 歩きとなる。遊歩道入り口付近に車を駐車してはならない。遊歩道入り口から 5分ほど歩いて戻ったところの川の横、道路脇に広いところがあるのでそこに 駐車すると良い。遊歩道を林の中を登って15分ほどで断崖の上に沿った遊歩道 に合流。ここから西に岩場が見える。10mほど右に進んだところから、急な釣 り師用の道を下降して海岸に出る。帰るときにここの登り口がわかりにくいの で確認しておいたほうが良い。海岸線から西に向かって一部へつりながら10分 ほど行くと岩場に到着する。「通り岩」の手前になる。アプローチでロープを 必要とするところはない。遊歩道入り口から約35分前後で岩場に到着する。 JR日和佐駅から歩くと1時間以上かかるだろう。

注意、その他:

 浮き石がやはり多い。人為的落石にも要注意。この壁では登っているパー ティがいるときは、取り付き付近の海岸にいると落石を受ける可能性が大きい ので絶対に下にいてはならない。かなり離れている必要がある。  どこも近くに水場はないので、水を持参したほうが良い。大浜海岸から北東 へ行ったところにキャンプ場がある。我々は山の上のお城の駐車場にテントを 張った。海ガメの産卵場所近く(大浜海岸など)の海岸線でテントを張るのは 厳禁である。(大浜海岸は美しい砂浜。我々が6月に行ったときは、地元の小学 生がゴミ拾いをしていた。)

 比較的暖かなところでのエイドの練習をするには丁度良い岩場である。岩場 自体はまだ相当もろい部分があるが、再登者を迎える毎に安定していくだろう。 ピッチ数も4ピッチと短いので一日で登り切ることができる。アプローチも遊 歩道の入り口から30分強と近い。神戸から3時間弱。季節は夏は暑すぎるので 不適。春か秋が良いであろう。日和佐町には入浴だけでもできるホテルがある (ホテル千波、夜9時まで入浴可能、大人ひとり500円、徳島県海部郡日和佐町 寺前Tel. 08847-7-1277)。また、大浜海岸には国民宿舎海亀荘(入浴だけは不 可)もある。

 『千羽海崖』で陸伝いに行ける岩場は上記の2本を開拓した岩場くらいであ ろう。他は、海から直接せり立つ岩場や、渡船のような小さな船をつかわない とアプローチできない岩場ばかりであった。尚、これらの2本のルート開拓 後、1999年5月、『千羽海崖』の西の端にあるより大きな壁(田崎真珠の研究 所側)に、山岡と高野がカヌーでアプローチし、6ピッチ、200 m (ルートグ レードIV級、A0, 5.9, 7-10時間)のルートを登った。しかし、そこには古い残置 のボルトとピトンが上部で発見され、昔誰かが登っていたことが判明した。我 々はこれらの残置は使わなかった(ボロボロで使えなかった。我々の残置は1 ピッチ目のナッツと懸垂下降用のスリングだけ)。昔のひとはどうやってアプ ローチしたのだろう。我々は、ここからの帰り、カヌーが悪天の為転覆して岸 に戻され、翌日海上保安庁(小松島)のひとたちに無事救助されるという事故 を起こした。幸い我々に怪我はなかったが、このことで海上保安庁と兵庫労山 の救助隊その他の関係者の方々に迷惑をかけてしまった。ここであらためてお 詫びとお礼を言いたい。船等を使って海からアプローチするときは、あらかじ め海上保安庁に連絡しておいて欲しいと要望された。


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