菱形岩壁JECCルート(敗退)〜菱形ルンゼ右俣

ARIアルパインクラブ/木元康晴、龍鳳登高会/西澤直志


<山行日> 1999年8月11日(水)〜8月13日(金)<記録> 木元康晴



 木元@ARIです。

 龍鳳登高会の西澤さんと、菱形岩壁へ行ってきたので報告します。

 8月11日朝、徳沢の先の業務用の橋を渡って下又白谷へ入る。 ガレた沢をしばらく登ると雪渓が現れ、その奥に迫力のあるF1がそびえ立ってい る。

 この滝は左壁の前壁という岩場を登って越すのが一般的なのだが、前壁も傾斜が強い つるつるの岩壁で、ちょっと見ただけでは登れそうにない。 しかしザックを下ろしてよく観察してみると、一箇所だけルンゼ状で岩がゴツゴツし ているところが見つかった。

 登るとしたらこれ以外考えられないので、木元リードで取り付く。 右上気味に登ってバンドに出るとボルトが1本、さらに大きなテラスに出ると残置ピ トンがあったので、ピトンを2本打ち足してビレイ点とする。 その上のスラブにも残置ピトンが見えるので、やはりこれが正しいルートだったよう だ。

 続く2ピッチ目は西澤さんがリードしたが、出だしのスラブは厳しくX+程度に感じ た。 その先の3ピッチ目は流水溝、4ピッチ目はバンド〜滝を越し、5ピッチ目はバン ド〜スラブを直上、6・7ピッチ目は草付きを登って山巡稜(明神岳東稜の支稜)へ 出た。 全般にビレイ点、中間支点など何もない部分がほとんどで岩も脆く、神経を使う嫌な 登攀だった。

 前壁の終了点から反対側にはバンドが続いているはずだが、それらしいものは見当た らない。 20mと40mの懸垂下降をして草付きの斜面に出て、それからロープ1ピッチ分トラ バースし、さらに40mの懸垂下降をして、やっと正規のF2下にでる下降点に出るこ とができた。

 これはどうやら前壁を登りすぎたのが原因のようで、5ピッチ目はスラブは登らずに そのまま右へトラバースするのが正解だったようだ。 そして最後の20mの懸垂下降の途中でF2の全貌を見ることができるのだが、あまり の迫力に圧倒されてしまった。

 両岸ともつるつるで、しかも傾斜の強いフェースになっているので、どうやって登っ たらいいのか全く見当がつかない。 しかし滝の直下に立ってみると、上からは見えなかったスラブ状の凹角が右壁にのび ているので何とかなりそうだ。

 この日の行動はここまでとし、左岸の台地でビバークとする。 翌日天気が悪かったら敗退できるように、下降ロープは引き抜かずにそのままにして おいた。

 12日、朝起きると天気が良いので、ロープを回収して木元リードでF2に取り付く。 出だしが細かくて難しく、その上も浮石が多くて厳しいが、この滝が登れないと敗退 することもかなり難しいので、気合を入れて登っていく。 25m登ったところにボルトと残置ピトンが並んでいたのでピッチを切る。 西澤さんがその上の傾斜の強いフェース〜凹角を越えてバンドまでロープを伸ばし、 続いて私がバンドを左へ15メートル伸ばしてF2の落ち口、菱形ルンゼ出合へ着い た。 この先はもう奥又白池まで水場がないので、一人3リットルずつ水を持つ。

 菱形岩壁取り付きまでは、さらに菱形ルンゼを200メートル登らなければならない。 この間に涸滝が4〜5個現れるのだが、すべてロープを使わずに越えて行く。 一番難しいものはW+程度あり(ワンポイント)、荷物が重いこともあって緊張し た。

 長いアプローチを経てやっと菱形岩壁基部に辿り着いたが、ルートの取り付きが判然 としない。 話し合った結果、岩壁真下の浅い凹角を西澤さんのリードで登り始める。 左上気味に登って草付き混じりのスラブを直上し、傾斜が緩くなったところで露岩に ボルトが2本打たれたビレイ点へ。

 途中に残置ピトンもあったので、やはりこれが正しいルートだったようだ。 2ピッチ目は木元リードで凹角〜スラブ〜草付きを登ってボルト3本のビレイ点へ。 3ピッチ目からいよいよJECCルートとなるのだが、右へ行くバンドが崩壊したの か見当たらない。

 西澤さんリードで右上の高い位置にあるボルトまで登り、それにテンションをかけて 右下の凹角の取り付きまで下降。 そこにボルト1本、残置ピトンが2本あったので、ロープの流れを考えてピッチを切 る。

 続く頭上の凹角を木元リードで登り出すが、岩が脆くてなかなか厳しい。 ピンを2本打ち足してボルトを取り、人工で登っていくが残置ピトンはグラグラする ものばかりだ。 やがて凹角の最上部のボルトから右のバンドに移る所で行き詰まってしまった。 もう1ポイントアブミに乗らなければバンドまで届かないのだが、縦フレークに2本 並んでいる残置ピトンのききが甘く、分散荷重をしても体重を支えることは不可能 だ。

 試しにそのフレークをつかんでみると完全に浮いている状態で、ここに新たにピトン を打ち足すことはできない。 他にリスがないかアブミ上で行きつ戻りつしながら周囲を探っていると、下で西澤さ んが叫び声をあげている。

 どうやら私の動きで落石が起こり、それが西澤さんの顔面に当たったようだ。 額を少し切っただけで大丈夫だというが、ピトンを打ち込むリスも見当たらないし、 この岩の脆さでは上に行くと大変なことになりそうなので、残念だが登攀を打ち切る ことにする。

 私が乗っているのはボルトだが、西澤さんの指示でもう一本ボルトを打とうとジャン ピングを取り出した瞬間、バーンと弾かれたように身体が落下し始めた。 8m程墜落し、ビレイ点の上5mのところで止まった。

 なんと根元まで打ち込まれていたボルトが抜け、その下のピトンも2本抜けてけっこ うな墜落になってしまった。 大した怪我はないが途中ぶつけた左手指がとても痛く、申し訳ないがクイックドロー 5本を残置したままビレイ点まで降ろしてもらう。 支点の補強にボルトを1本ずつ打ち足して、2回の懸垂下降で取り付きへ戻る。

 ほっとしたのもつかの間で、雨が降り出してきたため、すぐに菱形ルンゼを登り始め る。 上部は技術的に易しい右俣を登り、最後の草付き2ピッチのみロープを出して茶臼尾 根に抜けた。

 そこからはハイ松のヤブこぎ1時間弱で茶臼ノ頭に出て、踏跡を辿って明るいうちに 奥又白池に着いた。


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