ピラミッドフェース〜第四尾根

獨標登高会/山口伸次 寺田正之


<山行日> 1999年7月30日(金)〜8月1日(日)<記録> 寺田正之



 会の先輩・山口さんより電話があり、6月の総会に出席し久々に山に行きたくなった という。7月に佐藤と谷川に行ったが、他にも行きたいとのこと。小川山という案も 出たが山口さんの足慣らしも兼ね、この時期気持ちの良い手頃なアルパインと言うこ とで北岳バットレスを選んだ。山口さん44歳。寺田40歳。中年クライマー二人、どん なクライミングになることか...。

7月30日(金)晴れ

 会社から速攻で帰宅、あわただしく食事とシャワーを済ます。山口さんより駅に着い たと電話が入る。21:00アーケード入口で山口さんをピックアップ、首都入口を目指 す。しかし竹橋まで渋滞とのことで、代官町まで下道で行くことにする。夏休みの影 響か?代官町から先も首都高は結構込んでいて22:30八王子、23:40甲府昭和、25: 00広河原着。ACHPの情報通り駐車場はいっぱいだ。運良くトイレの前に2台分の スペースが有った。ビールで乾杯し25:30就寝。

7月31日(土)快晴

 4:30起床。朝からトイレは長蛇の列だ。身支度をして5:10出発。野呂川にかかる橋 の手前で北岳が遠望できる。山荘前の登山道を行くと、ジジババ軍団50人くらいの団 体がゆっくり歩いていた。道を譲られ急いで登ったのでペースが狂ってしまった。7 :10二股着一本立てる。8:10C沢出会いで大休止。沢の水で水分補給し、8:20出発 。C沢の右岸の踏み後をたどる。樹林帯の中なので直射日光を浴びずに済む。樹林帯 を抜けるとお花畑が広がっていた。背も低く小振りで地味だが、赤、青、ピンク、黄 色と可憐な花々が咲いている。取り付きはもう目の前だ。

 9:10ピラミッドフェース取り付着。先行パーティの抜けるのを待って、9:45寺田の リードで1ピッチ目(III十)登攀開始。山口さんより「難しいピッチは全て寺田に 任せる」と弱気なお言葉。2ピッチ目(II級)は山口さんのリード。3ピッチ目(IV 十)横断バンドに上がるピッチで、右寄りにルートを取りすぎてしまったようだ。終 了点間際で横断バンドの小ハングの下を左にトラバース。これが結構悪い。崩壊した 岩が砂のように積もっていて、歩くそばから崩れてしまう。身体ごと落ちそうで冷や 汗ものだ。大きな石こそ落とさなかったが、ビレイ中の山口さんはにチリ雪崩を浴び せてしまった。その後直射日光が強さを増し、岩からの照り返しもあり両面ロースト 状態の灼熱地獄。岩自体も熱く触るそばから汗がにじむ。チョークバッグは必携だ。 後続パーティも無く、各ピッチの終了点がご丁寧にザックを降ろして拡げられる程の バンドになっている。おかげで1ピッチごとに水分補給のため小休止。これにより殊 の外時間がかかってしまった。ルート自体は快適なフリークライミングの連続。特に 6ピッチ目と9ピッチ目のコーナーのクラック(ともにV級)がスポーツクライミン グ的でおもしろかった。

 14:10第四尾根合流。2人組2パーティが順番待ちをしているが時間はそれ程かから ず14:30登攀開始。大樺沢からはガスが上がってきた。第二のコルの3メーターの垂 壁(V級)もそれ程渋滞せず、快適なリッジクライミングを楽しむ。5:10登攀終了 。ガチャを整理し、食料とわずかに残った水分を補給。頂上を目指し踏み後をたどる 。稜線に出ると雲海が広がっていた。富士山も美しい。夕日で出来た自分の影が雲海 に映っている。荷物をデポし頂上を目指す。17:55頂上。記念写真を撮り18:00出発 。日は未だ高い。18:30八本歯のコル。四尾根を登っていた先行パーティに追いつき 一緒に下る。彼らは大阪からクルマで入山し、1時間しか眠っていないそうだ。19:0 0C沢出会い。谷を埋めていたガスは晴れたが、このあたりで大分暗くなる。ヘッド ランプを点灯するが、ペースは遅く。結局へろへろになって駐車場に戻ったのは満天 の星の瞬く21:45だった。

 この時間ではもう温泉はしまっている。腹も減ったのでとりあえず甲府を目指す。2 0号線のサウナ(ラドン温泉)に行くが入浴のみは23:00まででアウト!サウナでビ バークと考えたが3〜4千円で泊まれる都内のサウナと違い、こちらのサウナはビジネ スホテルのようだ。一泊何と13000円!仕方なくラーメン屋で遅い晩飯。晩飯後急に 睡魔に襲われ、東京に戻っても山口さんの電車も無いので、25:30談合坂パーキング で1ビバ入れる。翌朝8:30自宅着。山口さんに取っては久々にハードな山行だった ようだが、天気も景色も良く非常に充実した山行で有ったのは言うまでもない。こう して中年クライマー2人の山行は無事終了した。


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